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関友美の連載コラム「ジャンルレス。色々知ってこそ際立つ、日本酒の個性と良さ」(リカーズ9月号)
そうだ。日本酒を飲もう。十八杯目
ジャンルレス。色々知ってこそ際立つ、日本酒の個性と良さ
お酒はジャンルレスになる。以前から確信していたことだけど、ココに来て一気に加速しています。かく言うわたしもクラフトビール、焼酎、ジン、ラム、シードルなど日本酒の他にも一歩踏み込んで気になるお酒が増えて、買い集め、様々楽しんでいます。
近ごろではオシャレな日本酒ボトルも増え、味わいも多様化することで、居酒屋や和食店以外の場所でオンメニューすることが増えました。日本酒の酒蔵でジン、焼酎、シードルといった別のお酒を造るケースも増えました。また新規で清酒製造免許が取れないため、「その他の醸造酒(濁酒)」を取得するケースも。「WAKAZE」が業界に風穴を開け、浅草の「木花之醸造所」、秋田県の「稲とアガベ」、福岡県の「LIBROM」などが続きました。
田舎臭いイメージがあった「どぶろく」が、酒税法上の自由さを活かしクラフトサケとして、いちご、ホップ、ピスタチオなどが入ってオシャレで、とっつきやすく、ゴクゴク飲めてしまう気軽なお酒に大変身!まさに新ジャンル。
ある時、コロナをきっかけに何か新しいことをやろうと、高校の同級生の小栗絵里加さんに連絡。彼女は、赤坂の「BAR アルジャーノン シンフォニア」のオーナーであり、2016年カクテルコンペティション「なでしこカップ」優勝した腕利きのバーテンダーです。日本酒「播州一献」を送ったところ、「コレ美味しいよ。キウイが特に合う」と、生のフルーツを漬け込みサングリアにしてくれました。斬新なアイデアと美味しさにびっくり。日本酒の楽しみ方も自由になり、蔵元さんも頭ごなしに「そんなことしないで」とはならない時代になりました。
焼酎シーンでは、現代人に合わせライチのような香りがする芋焼酎が登場。活発にバーテンダーやミクソロジストとタッグを組むメーカーの若手たちも。先日訪れた蔵前の「NOMURA SHOTEN」は、バーテンダーの野村空人さんがプロデュースしたボトルドカクテルや焼酎、国産ジンなどを気軽に楽しめる立ち飲み屋。居心地がいいオシャレな角打ち空間は、時代を反映しているように思えました。同時期に訪れた渋谷の「ゑすじ郎」では、日本酒「陸奥八仙」のチャイカクテルを飲み、うっとり。日本酒の良さはありつつも、チャイ寄り。タコスと一緒にいただきました。飲食店と造り手、両側から垣根を超える動きが起こっているのです。
お酒って、のめり込むとつい頭でっかちになり知識で飲んでしまいがちですが、あくまでも心と舌で感じ、純粋に楽しみたい嗜好品です。TPOに合わせ色々なお酒を飲んで、ぐるっと一周回ってきて、「やっぱり日本酒が好き」と想える瞬間は、ゲンキンな奴といわれようが、たまらなく愛おしいのです。
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今月のピックアップ酒蔵
剣菱酒造(兵庫県)
永正2年(1505)創業の剣菱酒造は、今年で517年になる日本有数の歴史ある酒蔵。赤穂浪士たちが吉良邸討ち入り前に飲んだと言われている。会社理念のひとつに「止まった時計でいろ」とある通り、酒のレシピも変えていないことから、歴史ファンなら「あの剣士も飲んだ酒か」と胸がときめく逸品。腕利きのブレンダーが数多の熟成酒タンクの中から慎重に調合して出荷される。個性的なチーズにもよく合う、深い旨味が特徴。特定名称区分を明かさないのも実に乙。
以上
庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」9月号より