青森県のイタコを追った写真展//フォトレツ『Grandma Comes Back』に行って。
フォトレツ 作品展『Grandma Comes Back』
2023年12月8日(金)~12月25日(月) 11:00~19:00
青森県八戸のフォトレツさんこと中村烈さんから、「銀座ソニーイメージングギャラリーで個展をやるから、よかったら来てください」とご連絡をいただき、「それはすごい!銀座のど真ん中で個展?!絶対いく行く!」と決め、煮詰まって何日か書斎の椅子で寝落ちしたくらい辛かった大作の原稿を頑張って終わらせました。
フォトレツさんとは今夏おこなわれた陸奥八仙の夏祭りで出会ったばかりですが、祭りで見た彼の作品がとても好きだったんです。
なんとか会期ギリギリに滑り込みました。ギリギリなんてもんじゃない。閉まる30分前。
青森県につたわる「イタコ」のタケさんを追った作品。
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SideA 「Grandma Comes Back」
SideB 「目の前の人」
写真展は2部制になっていました。
フォトレツさんの亡くなった祖母に、わが子(ひ孫)の誕生を知らせるためタケさんに「口寄せ」をお願いしたSideA。
イタコのタケさん自身にフォーカスしたSideB。
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口寄せとは……
イタコは、マスコミの影響で”オカルト”的に捉えられることが多いものです。今回の写真展に行き、「わたしもマスコミの切り取り方に思考を左右されていたかもしれない。特異なものじゃなくてシンプルにろうあ者に役割や意味を与えるものであり、集落の相談役・心の拠り所になったのではないか」と思うようになりました。
2020年夏、恐山や仏ヶ浦など下北半島を訪れていたことも大きかったかもしれません。
恐山は死者の魂が集まる霊場とされ、あの世に最も近い場所とされています。地元では「死ねば恐山に行く」と言い伝えられており、山岳信仰の対象として長年存在しています。日本各地から参拝客が絶えません。そのため、普段は県内の別の場所にいるイタコも、恐山大祭と恐山秋詣りの時は恐山で口寄せや占い、神事、お祓いをおこなうのです。
恐山は車を降りる前から、人間の本能として「なんかやばい」という異様な雰囲気を感じます。硬貨から機械からすべてあっという間に酸化して真っ黒に錆びていく世界。立ち込める硫黄の香り。湧き出る温泉。流れる川はみるみる酸化して、黄色に変色しています。目の前には、酸性が強すぎて(基本的には)魚が生きることができない宇曽利湖。
昔の人たちが、この地に地獄やあの世を感じてても違和感ありません。「そうだろうなぁ」とすんなり思えるのです。
口寄せとは……
言葉で説明するのが難しい事象が、この世にたくさんあります。
(私がイタコについて深く知るキッカケになった恐山について話しましたが、タケさんは20年前から恐山大祭には参加していないとのこと)
話を写真展に戻します。
フォトレツさんの写真を見終わると、「ふぅ」と深く一息ついてしまったほど(無意識に息を飲んでいたのかもしれない)。
タケさんのところに来る人たち、現在91歳(16歳からイタコをしている)のタケさんの人生、タケさんを追った2年の日々、フォトレツさん家族など、人々の生活が重なり合い、ずっしりとした重みを感じました。”写真にしかできない表現”を体感した気持ち。
イタコの解説、SideAとSideBのテーマなど、フォトレツさんの文章も好きでした。
個展のメインビジュアルになっているのは、フォトレツさんの祖母。口寄せをした人たちが、口寄せ後は「しばらく近くにいる気がする」と言っているのを聞いて、自宅のガレージに祖母の顔写真を投影したのだといいます。
わたしはこの作品展に行く直前まで、趣旨を見る間がなく、このメインビジュアルを見た時、外国人のおばあちゃんと勘違いした。
「いえいえ、うちのばあちゃんです」と言われ、「そうかぁ、年を重ねると性別を凌駕するというが、国籍も凌駕するものかもしれませんね」とわたしが言うと、フォトレツさんは「プーチンみたいですよね。タケさんと違って、うちのばあちゃんは全然可愛くなかった」と答えました。
しかしこの写真展のテーマは「イタコの口寄せで、祖母にわが子の誕生と、お父さんになった自分のことを知らせよう」なのだ。
他人であり、撮影対象のタケさんと違って、フォトレツさんが生まれたときから側にいたおばあちゃん。いい思い出も嫌な思い出も、楽しいことも複雑な気持ちになったことも、怒っている顔もすべて含めておばあちゃんなのだ。この顔がおばあちゃんなのだ。深い愛を感じました。
わたしはライターという職業柄「一見文章表現の方がみなまで言っているようだけど、写真の方がよっぽど多弁。だけど受け手の自由度が高いという特殊な表現だと思う。ずるい」と思わず嫉妬してしまいました。笑
写真展にいけて良かった!フォトレツさん、ありがとう!
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