関友美の連載コラム「『日本酒言葉』があっても良くないですか?」(リカーズ11月号)
リカーズ連載日本酒コラム
「そうだ。日本酒を飲もう。」11月号
「日本酒言葉」があっても良くないですか?
よろしければ、ご高覧ください。
11月に入り、少しずつ日本酒の新酒が出てくる時期になりました。霜が降りはじめる月という意味で、霜月といったりもします。わたしは「霜月」と聞くと、11月に限定出荷される兵庫県の「奥播磨 純米吟醸 霜月 生酒」というお酒を思い出します。コクがあって力強い、通好みの味わい。ポップな物も好きですが、こういう日本ならではのネーミングはやはりイイなぁ、と思うのです。余談ですが、この「奥播磨」をつくる下村酒造店の社長・下村元基さんはまだ33歳。自ら現場で酒づくりもしています。わたしがライターの傍ら働く山陽盃酒造から車で15分と近く、共通の友人(酒屋さん)がいることもあって、たまに飲みに行くなど親しくしてもらっています。まるで運動部員そのまま大人になったよう礼儀正しく、古き良き実直な性質の彼は、酔うと熱く語る日本男児というイメージ。当たり前かもしれないけれど、日本酒の味わいやパッケージなどの印象は、どこか造り手の姿と重なります。そんなことも実は、日本酒の楽しみ方のひとつかもしれません。
さて近年手掛けるシードルの撮影で、小物として花を扱うことが増えました。花屋の友達に教わりながら。当のわたしは花に疎いのですが、小さい頃から言葉や物語が好きだったのでよく「花言葉」を調べたものです。薔薇は特に有名で、本数によっても意味が変わります。1本なら 「一目ぼれ」、108本なら「結婚して下さい」、999本だと「何度生まれ変わってもあなたを愛する」だそうです。
お酒の世界だと「カクテル言葉」があります。スクリュードライバーは「あなたに心を奪われた」で、6月5日の誕生酒とのこと。わたしも好きなテキーラサンライズは「熱烈な恋」、ブルーラグーンなら「誠実な愛、ときめく心」など。なんてロマンチック!相手による部分は大きいものの、一度は贈られてみたいと思うのが乙女心というもの。
そこである時「日本酒言葉があってもいいのでは?」と思ったわけです。導く材料としては、酵母、酒米、銘柄、蔵の印象、地域、ラベルあたりかな。きょうかい1801号酵母は「可愛い君」、山田錦は「永遠の愛」、五百万国は「冷静」とか。1月の誕生石ガーネットを彷彿させる赤色ラベル「赤武」「安東水軍」は「真実・友愛・忠実」。ラピスラズリ色の「黒龍」は「成功」。・・・すぐにムリが出てきて銘柄そのままの意味で良いのではないか・・・と、心折れたのでまたの機会に考えることにしました。あなたがお気に入りの酒に、日本酒言葉を授けるとしたらどんな言葉ですか?
以上
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