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関友美の連載コラム「年末と日本酒と中島みゆき」(リカーズ12月号)

そうだ。日本酒を飲もう。二十一杯目
年末と日本酒と中島みゆき

 親の影響なのか、歌詞に魅了されたのか、昔から歌謡曲やJ-POPが大好きなわたし。小さい頃から、カセットテープに同梱された、小さく折り畳まれた歌詞カードをかじりつくよう読み、一語一句覚え、好きな歌なら間奏のギターソロも全て歌えるほどのめり込んでいました。それが成長と時代とともにやがてラジオから流れる音源になり、CDに変わり、配信に代わっても、わたしの人生にとって音楽はかけがえのないものです。ひとりでお酒を飲むときも、大概音楽を聴いているか、ドキュメンタリー番組を観ています。

中でもとりわけ同郷の中島みゆきさんには、「同じ時代に生きていてよかった」と思えるほど思い入れがあります。どの曲もいいのだけど、こんな年末に聴きたいのは『ヘッドライト・テールライト』です。2005年までやっていたNHK「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」のエンディングテーマとして起用され、今秋は何度目かの採用で缶コーヒー「BOSS」のCMでも使われていました。名もなき挑戦者たちへのエールです。

人生にはさまざまな出来事があり、時として自分ではどうしようもないことも。グッと拳を握りしめて、涙を呑みながら、また日々奮闘して。それでも誰に称えられることもない。今これを読んで下さっているみなさんにも、今年そのようなシーンが幾つかあったかもしれません。


「日本酒は湿っぽくてダサい」「猫背で飲んでいる印象」と言われることがあります。たしかに日本の生活に密着してきたためか、どこか演歌的というか、日本人の気質が反映されているイメージはあります。でもいつでもポジティブに背筋を伸ばして、ワイングラスを傾けるばかりでも疲れると思うんです。たまにはチビチビ飲んで、ひとりそっと涙を拭くような酒があってもいいじゃないですか。いつか成長した自分が祝杯をあげる姿を想像しながら、歯を食いしばって。そういう日本の美徳がわたしは好きです。祝いで飲み、祭りで飲み、弔事で飲み…そういう懐の深い酒というのが、我が国が世界に誇る國酒「日本酒」です。

今年も残りわずかとなってきました。BOSSのCMで出てきた宇宙人ジョーンズは、かつて言いました。「この星の住人はそれぞれバラバラな想いを抱えて生きている。ただ、この惑星の年末には中島みゆきがグッとくる」。
あと少し悔いのないよう過ごし、年末になったら中島みゆきを聞いて、年忘れに日本酒を飲んで、また来年も頑張りましょう。ファイト!みなさま、よいお年を!

今月のピックアップ酒蔵

菊水酒造(新潟県)

1881年創業。新潟県新発田市に本社がある日本酒を製造する企業。1972年、日本で初めて缶入り生原酒「ふなぐち菊水一番しぼり」の商品化に成功。黄色い缶に入った生酒は、50年経過した現在も多くの人から愛されている。その理由は、フランスのKuraMasterや全国新酒鑑評会など国内外での数々の受賞が証明する通り、時代に合わせ常に進化し続ける安定した味わい。今の寒い時期には、「全国燗酒コンテスト2022」で金賞受賞した「菊水の辛口」もオススメ。

以上

庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」12月号より

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