別姓選択できても同姓かつ旧姓使用が難しい国々

 選択的夫婦別姓になっても誰も困らないという意見がありますが、それは違います。

 今回は、現行法のような旧姓使用が使いにくくなるということをお話しします。

 下の記事のように、ドイツには日本のような旧姓使用という仕組みがありません。

なお、日本のような「旧姓使用」はない。

 結婚前の氏を使いたい人は、別姓婚にしていることが多いようです。日本人が海外へ行き、旧姓表記のパスポートを見せたら現地の入国審査官がよく分かってなくて、ということが起きていますが、そのような背景があります。

 実は、日本の選択的夫婦別姓推進派の中にも、海外のような認識を持つ人がいます。代表的な人物は、稲田氏です。稲田氏は、選択的夫婦別姓に反対と言っていますが、婚氏続称制度を推進しています。内容は、以下のようになります。

 結婚したら夫婦はまず、どちらかの姓を選んで同じ姓になります。たとえば、小沢さんという女性が、山本さんという男性と結婚したとします。姓は「山本」を選択しても3カ月以内に、旧姓の小沢を使い続けます、と役場に届け出ると、戸籍や住民票は山本ですが、小沢を使う、ということが明記されることになります。
パスポートや銀行の通帳など公的な書類は小沢だけが通用することになりますが、子どもの結婚式や山本家の葬儀、学校のPTAなど私的な場面では山本を使うことができます。

つまり、住民票や戸籍の名前には改姓後の氏を書くけれども、公的に使用することができるのは旧姓だけ、ということになりそうです。実質的に、戸籍と住民票の氏が異なること以外は、公的には選択的夫婦別姓にかなり近い仕組みだと思います。

その理由について、稲田氏は下の記事でこのように語っています。(下のリンクより引用)

結婚、離婚を繰り返した人は、通称を二つも三つも持ってしまうことがあります。戸籍でもたどれず、住民票にも現れない通称がはびこる世界というのは、法的に不安定で、決して好ましいことではないと思うんです。

 しかし、これでは、現行法のように自由に旧姓と戸籍制を使い分けるという選択肢を減らすことになりませんかね?稲田氏をはじめ、選択的夫婦別姓にどちらかというと賛成している人は、「選択肢を増やす」ことを目的としている人が多いと思うのですが、別氏選択可能にする代わりに現行法のような同氏だが旧姓と戸籍氏とを自由に使い分けるという選択肢を無くすのであれば、思い切り「選択肢を増やす」ことと矛盾していませんか?

 ただ、中には分かっていてそのように主張している人がいるかもしれません。以前こちらの記事にも書いたように、旧姓使用を拡大したら選択的夫婦別姓を必要とは思わない人が7割くらいいるからです。

 「選択肢を増やす」と言いつつも、旧姓使用という「選択肢が増え」れば、選択的夫婦別姓の必要性がなくなるため、推進派にとっては不都合でしょう。