【エッセイ】 どさん子
ねぇ、みななん、「どさん子」っていうラーメンチェーンをご存じですか?
ペリカンのマークのラーメン屋さんなんだけど。
私が子どものころに急成長した札幌ラーメンのお店なんです。国道沿いにつぎつぎとできて、このお店に行ってみたいって私は親に話したんだけど、「札幌ラーメンは太麺だから…」と連れて行ってもらえなかった。親は細麺が好きだったから。
あんなにあったその「どさん子」は、いつの間にかすっかり姿を消した。昔より国道沿いは賑やかになって、ラーメン屋さんもあまたなのに、「どさん子」の姿はない。調べてみたら、潰れたわけではなく、フランチャイズの運営会社が、同じラーメン店でも業態と名前を変えながら消費者を引き付けようという戦略での「見かけの店舗減」のようだ。
現存するオリジナルの「どさん子」はごくごく少ない。
その「どさん子」が古川(宮城県大崎市)にあるの!
ずっと気になってた。
自動車でお店の前を通るといつも閉まっていて、それでよけい気になっていたの。「あぁ…ここも閉店しちゃった過去のお店なのかなぁ?」って。
それが、先日、通り過ぎようとしたら、暖簾が下げてあって中の明かりも点いていた。午後4時くらい。そうなの、私、この時間にここを通ることがないから、すっかり開いてないお店だとあきらめていたの。
自動車の勢いがあったから通り過ぎてしまったけど、「これは!」と思って、引き返してお店に入った。午後4時は夕食には早すぎるけど…まあいいか? 閉店したお店と思ったなんてごめんなさい。中はピカピカではないけど、並みのきれいなラーメン屋さん。“札幌ラーメン”だから、カウンターの飾り柱は白樺で、熊の置物も置いてある。北海道を旅行するとよく見かける手彫りみたいなあの木製の置物。この設えはポイント高い。
メニューもたくさんあって、「ピリ辛ネギ味噌ラーメン」が気になったけど、やはり最初は基本の「味噌ラーメン」だろうと、これを頼んだ。この時間が食事の時間帯でないので、私が入ったとき他にお客さんはいなかったけど、少ししてふたり連れが入ってきた。潰れた心配をしていただけに、ちゃんとお客さんが入っていてホッとした。歴史あるブランドなんだから、がんばってね。
調理が始まった。カウンターだけの席。たまたま座った場所が角で、レンジが見渡せた。中華料理だけに火力もしっかり強そうだ。野菜を炒める中華鍋から、勢いよく炎が舞っている。お店のおじさんが一生懸命作ってくれてる。かっこいい!
「味噌ラーメン」ができてきた。奇をてらっていない真っ当な味噌ラーメン。
ねぇねぇ、おいしいじゃない! トッピングする「バター ¥50–」があるのを注文してから見つけて、一緒に注文しなかったことが気がかりだったけど、バターなしでも十分おいしい。これは合格。
おいしかっただけでなく、子どものころの想いがかなってよかった。
また来よう。こちらの都合を開店している時間に合わせてでも、また来よう。そのときは「ピリ辛ネギ味噌ラーメン」を食べたいな。
(2024年 3月 5日)