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旅の印象的な瞬間だけ

1 : 法事


夫の家の法事に参加してきた。ほとんどやったことのない焼香はぎこちなくて、私がこれまで自分の親戚の行事に参加したことがないのを物語っていた。焼香のせいで曇った室内で、私は私の周りまで煙が回ってくるのを静かに待っていた。確かに「初めまして、よろしくお願いします」と言われているような気がしていた。私はなんだか法事が終わってしまうのが名残惜しくて、ホテルに戻ってからも焼香の香りがする自分の髪の匂いを嗅いでいた。

2 : 奈良行きの列車

雪が、山に積もっている。知らない街を走っている。電線が雪でたわんで電車に接触しそうなほど近づいている。隣の席では夫とそのお兄さんがダーウィンの進化論の話を続けている。語るたびオーバーリアクションの夫の手の甲で指輪が光る。トンネルに差し掛かってもその論は続いて、列車が速度を落としても会話の速度は落ちなかった。

3 : 大阪×ロック飯

22時、入ったハンバーガー屋さんで突如「APT.」(ブルーノ・マーズらによる)が流れてみんな踊り始めたので「私、夜のお店のノリ嫌い。こんなの踊らない!」と言って、夫を欺いて華麗に踊った。夫は目を丸くしていた。

4 : 神戸のハーブ園

香りの展示室があって香り性格診断をやったら2人とも同じ匂いを好み、同じ匂いを嫌っていた。普段の行動タイプは全く違う2人だけど、本能的な部分が似ているのだなと思った。

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寂寥の雨
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