綿帽子 第三十三話
「何の変哲もない日常に幸せなどない」
何の希望もない、希望を持つことができない日々。
そこには恐怖しか存在しない。
希望を持とうとしても、疲弊した身体がそれを許してはくれないのだ。
季節だけは過ぎ行き、あっという間に霜が降りたなと思っていたら、あっという間に年も明けた。
家には買い手が見つかる気配はなく、それが益々不安を増長させていた。
売りに出してから約三ヶ月が経過しているが何の反応もない。
良い報告を期待しているが、不動産屋の言うことを鵜呑みにする気にはならない。
売りに出された物件を誰かが閲覧した形跡があれば、こちらには分かるシステムにはなっている。
ブックマークされたりすれば何人保存しているかまでは分かる。
ということは、少なくとも誰かが検討しているはずなのだ。
不動産屋からは直接の問い合わせはないとの報告しか来ない。
「果たして本当にそうなのだろうか?」
希望額と不動産屋の言い値に開きがある場合、不動産屋自体が本気で売りにかかっているとは考えにくい。
それにホームページに載せただけで、それ以外は何も手を打とうとしない。
そこが腑に落ちない。
おそらくこのままの状態が続けば、売値を下げろと提案してくるのだろう。
多分それが不動産屋の狙いで、自らが提案した値段までこちらが妥協するまで放置するのではないか?そんな懸念が脳裏に浮かぶ。
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