『シモーヌ・ヴェイユとの対話』
ジョゼフ=マリー・ペラン 著
関野哲也 訳
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第1部
第1章 「本の冒頭」
シモーヌ・ヴェイユはいくつかの大変美しい詩を残している。彼女にとって、それは自身のひとつの表現方法であった。以下の詩は特に重要である。私がここに引用する詩に彼女がつけた題[プロローグ]がわれわれにその重要性を知らせている。
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ニューヨークを離れる際、シモーヌはこの詩を母親に手渡している。この詩は、その一年前、1941年夏、彼女からギュスターブ・チボンに託されていたものである。彼女はチボンに頼んでいた。いつか彼女の著作を出版することになれば、この詩をその本の冒頭に置いてほしい、と。
ひとつの約束として、彼女のこの頼みは真剣なものであったと私には思われる。彼女の書いたすべてのテクスト群の背後には、もっと多くの彼女の勉強、もっと多くの絶えず広がり続ける彼女の学識、もっと多くの常に深められつつある思索があったことをこそ彼女は知らせたくはなかったのだろうか。神秘的な現前(Présence mystérieuse)がすべてを照らし出し、すべてを彼女に着想させた。
われわれが決して忘れることのできない、また忘れてはならない背景をこの詩が知らせてくれる。正確な日付、書き記したもの、そして日付のわかっている記憶のおかげでわれわれは彼女の内的充溢(じゅういつ)を垣間見ることができる。その内的充溢は最も重要な現実(la Réalité)、すなわち彼女が用いた表現を借りれば、「人と人との」、神との対話を映し出している。
第1部 第1章・了