時代劇レヴュー・番外編⑦:雍正王朝(1999年)
久々の「番外編」と言うことで、今回は1999年に中国で放送された歴史ドラマ「雍正王朝」(全四十四話)。
中国で放送され、好評を博した作品で、これに続いて2001年に放送された「康煕王朝」がさらに大ヒットしたこともあって、ともに日本でVHS、DVDがリリースされ、BSなどでも放送されている(もっとも、現在ほど中国ドラマのDVDが日本市場に入ってくる以前の作品のためか、あまりレンタル店などでは見かけない。中古でならDVDボックスは比較的廉価で入手可能である)。
清王朝五代皇帝で、独裁君主として名高い雍正帝の生涯を描いた作品で、主演は、「三国演義」の諸葛亮役で日本でも知られる唐国強である。
歴史ドラマと言うよりも、雍正帝の改革を描くことを通じて、暗に現代政治の闇を描いているのでは、と言う印象もあり、そのせいか、史実は意外と適当である(雍正帝のライヴァルである弟の廉親王の死の直後に雍正帝が死んだりするなど)。
後、時間の経過がわかりにくく、ドラマだけを見ていると、雍正帝が即位してから死ぬまでの全部の出来事が、ほんの数年のうちに起こったような印象がある(ただし、これは中国のドラマで多かれ少なかれ見られる傾向で、作中で「雍正十二年」と書いてある紙が出てきたりするので、実際には時間は経っている設定である)。
また、キャフタ条約を始め色々すっ飛ばされている重要な出来事が多かったり、李衛と田文鏡が出てくるのにオルタイが出てこなかったり、トゥリシェンが全くの別のキャラクタになっていたり(笑)、結構「自由」であった。
ドラマ自体は、基本的には重厚な政治劇中心で、特に康煕帝の後継者をめぐる皇子達、主として廉親王一派と雍正帝の政争が最初からずっと物語の主軸になっていて、クライマックスは雍正帝が親王一派を打ち負かして廉親王が幽閉になる展開なのだが、このあたりは、時系列をこのオチに合わせている感じで、史実の大枠こそはずしていないものの、昔の日本の時代劇っぽい作りである。
変な所はあちこちであるが、ドラマとしては面白く、最後まで飽きさせない展開で、地味な題材ながら作品としては良質のものに仕上がっている。
近年の中国時代劇が、イケメンと美女をふんだんに使うからそう感じるのかも知れないが、役者の画的にも地味である(笑)。
手堅い配役なのだと思うが、唐国強は威厳はありますが特別イケメンと言うわけではないし(そもそも年齢的にも「イケメン」枠でもないだろうし)、女優もそんなに美人が出ているわけではない(失礼)。
個人的に、登場人物では十三皇子の胤祥が好きで、後半は特に豊臣秀長的ないい補佐役になっていた(兄より早く死んでしまう所もそんな感じ)。
変な所では、弘暦(後の乾隆帝)が字幕でずっと「弘歴」になっていて、「暦」を避諱した置き換えが「歴」なので、ちょっと笑ってしまった(意図したわけではなく、単なる字幕を作った側の間違いであろうが)。
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