完璧を恐れるな!
「おーい! ……あれ? 何やってんの?」
「おう。明日のプレゼンの資料作ってるんだよ」
「へぇ。もう日付変わりそうなのに、よくやるなぁ」
「明日のプレゼンは絶対に失敗できないからな。資料、完璧に仕上げないと」
「どれどれ……ちょっと見せてみ……」
「どうかな?」
「え? いい感じじゃん! パッと見、わかりやすいし。もう完成してんの?」
「いや、まだまだ。このグラフとか、もうちょっと手加えたいし。一応大枠はできてるんだけどさ」
「もう充分だと思うけどなぁ……」
「いや、まだ完璧にはほど遠いよ」
「……一応聞くけど。これから一緒にスマブラやらない?」
「……話聞いてた? おまえ?」
「しょうがねぇなあ、マリオカートで我慢してやるよ」
「ゲームの種類の話じゃねぇよ!」
「じゃあ、にらめっこでいいからさぁ! やろうよぉ!」
「にらめっこって、子供か。暇だからって仕事の邪魔するなよ」
「うわ。仕事を家庭に持ち込むタイプだ。うわぁ」
「はいはい! 明日なんでも付き合ってやるから」
「ったく、しょうがねぇなぁ。……まぁ、あんまり遅くまで頑張りすぎんなよ」
「わかったわかった。……ふぅ。さて、完璧に仕上げないと……」
〜次の日〜
「よお。プレゼンどうだった?」
「ああ、あれな。全然ダメだったわ」
「え? 何で? あんなに頑張ってたのに」
「もう、なにもかも上手くいかなかった。全然、頭働かなくて」
「え……もしかして、お前……」
「うん。ほとんど寝ないで仕事いったんだよね」
「あの後、ずっと資料作ってたの? バカだなぁ」
「いやさ、一箇所気になって修正してたら、どんどん他のところも気になってきちゃって。完璧に仕上げなきゃって結局朝まで」
「完璧を恐れるな。完璧になんてなれっこないんだから」
「え? 何?」
「知らない? ダリっていうスペインの画家の名言」
「へぇ……完璧を恐れるな、ねぇ……」
「あとは、私は完璧を嫌悪する、とか」
「あ、それ知ってる。BLEACHの涅マユリの名言だろ」
「そうそう。要は、完璧にしようと思っても、それは無理なんだよ。だって完璧なんてこの世に存在しないんだから」
「なるほどねぇ」
「精一杯やったら、それに自信を持てばいいんだよ。『これで大丈夫かな?』『まだ直せるところがあるんじゃないかな?』ってビクビクするんじゃなくてさ」
「確かに、その通りかもなぁ」
「そうそう。さ! 切り替えて、スマブラ、やるぞ!」
「え? 俺、徹夜明けで眠いんだけど……」
「昨日、何でも付き合うって言ったろ。俺の完璧なプレイを見せてやるから!」
「完璧なんてないんじゃなかったのかよ……。あぁ、頭痛い」