記事一覧
【短編小説】壊れた傘で雨宿りをして
ぼくは水溜りを避けながら家路を急いでいた。
ちらちらと視界に入るビニール傘の骨がわずらわしい。しとしと降る雨を遮っているそのビニール傘の骨は一本折れていて、不恰好に一部がへしゃげている。
ついてないな。
ぼくはどんよりと広がる雨空をちらりと見上げて足を早めた。
しばらくして、押しボタン式の信号機が設置された横断歩道にさしかかった。この横断歩道は近所でも有数のイライラスポットだ。とにかく
自分の意見を自分で否定して。自分の心を自分で否定して。
ぼくは文章を書くのが好きだ。
ある日、思いついたことがあり、その気分のまま勢いにのって、ひとつの文章を書き上げた。
そうして、できあがった文章は誤字脱字もあり、表現も拙い部分ある荒削りの文章であった。
しかし、ぼくは満足感を感じた。自分の意見をまっすぐにその文章に載せて書いたことを誇らしく思った。
少し時間を置いてその文章を自分で読み返してみる。
ここはこう書いた方がいいな、ここはこの表現の方が