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どうやら2年目ブースター

 10月になった。
 Bリーグ2024-25シーズンが始まった。
 
 この夏があまりに暑すぎたこともあって、約5カ月のオフシーズンは長かった。その間、昨シーズンの出費を振り返ってみたりとか、日々の生活に追われるなかで趣味に軸足を置くと周りに負担かけるし自分もしんどいこととか、応援しているチームの移籍が激しくて思いのほかダメージを食ったこととか、それから悠長に趣味を楽しめる世の中があとどれくらい続くのかわかんない社会情勢とか諸々考えるとしんどくなるねっていう…そういうのがあって、ブースター2年目の今シーズンは自分のペースで、頻度を抑えつつ観戦に行ったときは思い切り楽しむ方針に切り替えようと思っている。入れ込み過ぎずほどほどに。移籍していった選手を追いかける余裕と気概はないけど、メンバーの半分が入れ替わった地元ハンナリーズは今のところファンで居続ける予定だし、ホームの試合を時々見に行くくらいにしよう。気持ちいいことも楽しいことも、足りないくらいが次への意欲を保ててちょうどいい。

 はずだった。ファンアートも今年は別にいいかな~なんてのんびり構えていたところ、先日虎の襖絵をバックにした古川選手のポスタービジュアルがお披露目された。途端、久々に熱に浮かされたようになって(これ、やってる時めっちゃ気持ちいいので危険なんですよね…)ガッと描いてしまった。
 その後も、ブースター決起集会なる社長以下フロントスタッフさんとおしゃべりできるというコアイベントにお邪魔したり、上賀茂神社のイベントで先行販売されたはんニャリンまんじゅうを買いに行って「今年の商品開発のやる気はなんだかひと味違うぞ」と感じたりするうちに俄然熱量が高まってしまった。

今期からアリーナで販売されるおまんじゅうとあんぱん。
かわいいし結構おいしかった。

 イカンイカン、これでは昨シーズンと同じではないか。出せる金も時間も限られてるんだし、欲望にかられて生活をおざなりにする大人になってはいけないよ…と自分に言い聞かせながら、あれよあれよという間に10月第2週の第2節GAME2、今期初観戦を迎えることになった。

 所用の片手間にバスライのテキスト速報で一応リアタイした開幕戦は、昨シーズンマシューのブザビスリーで『うっかり勝った(失礼)』1勝のみの佐賀相手に1勝1敗。そして第2節のGAME1は群馬相手に競り勝って、まるで結構強いチームみたいだ。え、本当に…?ハンナリーズが強いの…?けど、シーズン前の天皇杯で名古屋に歯が立たなかった印象もあって、大きくメンバーの変わったハンナリーズが昨シーズンとどう『違う』のか確信が持てない。どうやら新加入のカロイアロはかなり凄いらしいし、ベテラン勢はそれぞれ肩書を持った凄い選手みたいだ。でもまだ判断するには早いんじゃないか。
 しかも今回は昨シーズン100点ゲームでホーム連敗を喫した群馬、昨季以上のタレント揃いで広島に連勝してるぞ。そんなチームに2連勝の勝機はあるのか…??しかもGAME1は去年のハンナリーズとは似つかない堅い守りと我慢強い展開で勝っちゃったし、やすやすと連敗するような群馬でもミリングHCでもないだろう。だがしかし私はまだあの100点ドーナツの恨みを忘れてないぞじーつーよ…。

 そんなことを考えながら久しぶりにかたおかアリーナに向かう車中では、友達と一緒にバスケを見に行くことになって早くもテンションMAXのこどもが大騒ぎしている。ええ、今シーズン初観戦は3人の子連れとなりました。上のふたりは大人しく観戦できるしそれなりに試合を楽しめるものの、一番下の6歳児はいっときもじっとしていられないやんちゃぼーず。今回彼が学校から持ち帰った『京都こども無料招待』のビラを見て、昨シーズン1度だけ試合を見に行ったと言っていた彼の親友親子をお誘いしてみたのだ。毎週末の時間の過ごし方に頭を悩ませる活発児童の親にとって、本人無料+保護者同伴ひとり1500円というのはまずまずの訴求力があるのではと思う。実際、会場ではほかにも同級生の親子が来ているのを見かけた。

 開場よりだいぶ前に到着してお友達と合流し、お散歩中の犬に負けじとひとしきり西京極運動公園の中を走り回ってから、開店したばかりのキッチンカーでお昼を調達して入場。物販の配置がアリーナの外になっていたり、キッチンカーの数が増えてコラボメニューがたくさん用意されていたり、目に見える変化がいくつもあって楽しい。入場口のスロープに並んだ選手たちのノボリを仰いでちょっと胸が熱くなる…けど、お友達の親御さんにオタバレするわけにもいかないので平静を装ってこどもの手を引く。少なくともこの時の私はまだちょっとバスケ観戦の好きなだけの保護者である。間違っても早口で各選手の説明や群馬戦のみどころをまくし立てたりしてはいけない。

 こども無料招待の対象エリアは2階スタンドの上方ブロック、かつ一般発売のタイミングだったので当然良い席は売れた後で、お友達家族と横並びで取れたのは一番上の立見席付近。ただ位置はほぼセンターで、真ん中のスクリーンがちょうど目線の高さ、コート全体が見渡せて意外と悪くない。遠いといっても選手の動きはよく見えるし、席の傾斜がかなりきついので、視界を遮るものがなくてアリーナよりむしろ見やすいかもしれない。ただ、真ん中の子が傾斜のきつさを少し怖がっていた。確かに45度くらい?は言い過ぎとしても、狭くて手すりもないし、かなり急なつくりではある。新しいアリーナだともっと余裕のある安全で機能的な構造になっていたりするんだろうか。

2階スタンド席後方からの眺め。意外と近いしモニターが正面なので戦況の把握には良い

 まだ試合始まらないの~と早くもごね始める子どもたちをポップコーンでなだめつつ試合開始を待つ。まばらだったスタンドがどんどん埋まっていって、うしろの立見席にも人が立ち始めている。息子のお友達の親御さんは真面目な表情でプログラムを熟読中、真後ろからは初観戦の友達にルール説明する若い子の声が漏れ聞こえてきて、なんかいい。
 コートを見渡すと、CJの髪がバッサリ短くなってる。岡田侑大が分厚くなった。そういえばラナHCはまだテクニカルを取られてない(笑)。新加入選手の他にも、当然昨シーズンから変わったところがちらほらある。アリーナでは担当DJさんが変わったのもあってか(やっぱ千葉に引き抜かれたんですかね?KAnaMEさんは)、選曲が昨季を踏襲しながらも一部変わっている。選手入場の曲”Lifestyle”のアレンジが歌声の入った壮大な感じに変わって、アンセム的に試合終盤にもかかってたり、試合開始前のジャイキリが別の曲に差し替えになってたり。もはや京都はジャイアントキリングじゃないよってことなのか?いやいやそんなことは…とまた疑心暗鬼に。(でもあの曲良かったから、いつかここぞという格上相手の試合でまたかけてくれたりしたら上がるだろうな。)

 心なしか気合の入った河合さんの掛け声とともに、応援練習だけは熱心に声出してたのにもう飽きたっぽい子どもの集中が長持ちすることを願いながらティップオフ。私の2024-25シーズンが開幕した。
 
 耳に馴染んだSEに続いてGo!Kyoto!Hannaryz!のコールが開場に響いた瞬間、5カ月のブランクが嘘のように身体に熱が戻ってくる。客席の位置的に周りで声を出している観客が多くない中、みんなもやろうぜと思いながら手を叩きコールに続く。この位置からは左手のホーム側ゴール裏で立ち上がったコールリーダーさんたちの姿がよく俯瞰できる。かれらが一声かけると、それを合図にして会場全体に観客の応援が湧き上がってくるのは圧巻だった。自分は昔から全体行動がとにかく苦手なんだけど、皆がコートに向かって一斉に声を上げるこの感じはなんか、やっぱりすごくいい。競り合っている場面でひときわ大きなディフェンスコールがバッチリそろって始まった時には思わず目頭が熱くなってしまうくらい。後半の群馬追い上げモードの中でのフリースローの時、コールリーダーさんの「(ブーイングで相手のFTを)落とそうぜ!」の呼びかけで、でっかいブーイングが起きたのも熱かった。実際1本落ちたんだったっけ。演出や誘導はあれど、誰に強制されるわけでもない自発的なたくさんの気持ちが(中身はさまざま違っているのだとしても)同じ方向を向いて響くさまがとてもいいと思う。
 前半一進一退で何度もリードチェンジする中、選手たちは心なしか自信を持ってプレーしているように見え、楽しそうですらある。スリーも当りが来ず、比較的ロースコアな展開でも不思議とまったく息苦しさを感じない。それ入れるんかい!みたいなすごいやろカロイアロだし、こないだよりヒースやCJがペイントに切り込めてるぞ…それにスイッチが信じられないくらいスムーズで、なんだかディフェンスがうまく行ってる気がする。前みたいなイチバチの一発大逆転もクセになるけど、なんだろう、楽しいな?去年にはなかった種類の楽しさがあるぞ。もしかして、もしかして本当に強いんじゃないかハンナリーズ…!

 結果、おおかたの予想を裏切って(ごめんな)74対68でハンナリーズ勝利。5カ月ぶりの試合の楽しかったことといったら!勝ったのはもちろん嬉しかったけど、仮に最後まで競り合って負けてしまっていたとしても、ものすごくおもしろい試合だったと思う。チームが着実に前進しているのを自分の目で見て確信できたのも良かった。プレーもだけど、ベンチの様子とか空気感とか、現地でないと分からないこともあると思うので。去年の今頃初めて生でバスケを見て(ビーコルとの開幕戦だった)ピック&ロールも分からないズブの素人だった自分が、ディフェンスでねばり勝つ試合を楽しめるようになったのも多少成長したということかもしれない(笑)。

 末っ子はと言うと、こちらは昨シーズンと同じく最後まで集中力が持つはずもなく、ハーフタイムで外を駆け回り、試合終盤は仕方なくスマホで動画を見せる時間もあった。これは私の中では最後の手段で、本当に不本意なことなんですけどね…。それでも、去年何度か子連れで観戦したときよりは余裕があった気がする。去年は試合中何度もトイレにジュースにポップコーンのおかわりに…とシートを温める暇もなく、4席分のチケット代を思ってしょっぺー気持ちになったものだけど、ほぼ全部のプレーを座って観戦できたのはいくらか成長してくれたということかもしれない。帰宅後にお友達の親御さんから送られてきた写真には、子どもなど眼中になくコートを見つめる自分が写りこんでいてなんとも言えねー気持ちになった。多分、いや確実に、お友達の親御さんにオタバレしている。そりゃあんだけ必死に応援して、選手コールまで完璧に合わせてたらな…。いやそれよりも、自分の姿は完全に趣味に子どもを付き合わせる親そのものだ。退屈な思いさせて悪かったね、でも私だって100%の我慢はしたくないんだよ…50%、いや30%くらいは楽しみたいんだよ。お互い100%楽しめるわけではないけど、本人たちが行きたがるならあと1回くらい子連れ参加もありかもしれない。どっこいしょー!って気合いれないと無理だけどね。

後日末っ子が描いた絵。
長時間は無理でも、彼なりに観戦を楽しんでいたのかも。

 最後に。

 試合の前々日、ハンナリーズ運営からあるアンケートメールが来ていた。ファンクラブに入って感じる日常生活への効果や、試合に勝つことをファンとしてどう感じるかという、ファンクラブや試合観戦についての質問がいくつか並んでいた。マーケティングに使うのか、それとも学生インターンのレポートの題材なのか、いつものアンケートより個人的な心理状態に踏み込むような内容が少し気になったのでメモしておきたい。とりわけ「チームが勝ったとき、私が勝ったような気になる」「チームへの試合運びが上手くいったとき、個人的な達成感を感じる」あたりの設問が、なんだか私のセンサーにひっかかった。
 いや、確かにそれはそうよ。勝つと自分のことみたいに嬉しいし、そんだけ感情移入してるってことなんだけどさ。でもそれって結構よろしくない心理状態じゃないか、と私は思う。勝ったのは自分じゃないし、この成功は選手の能力とチームのたゆまぬ努力とコーチ陣の分析と策略によるもので、私には関係ない。はずなんだけど、その勝因の最後の最後ほんのひと押しが自分の声援や祈りだったのではないかという幻想を持たずにいられない、幻想だと分かりながら。これを幻想だと思わなくなったとき、きっと負けた試合を楽しめなくなる気がするし、相手選手を恨んだり、ミスを罵倒したくなったりもするかもしれない。だから私はこの設問自体に「ちょっと待って、暗黙のルールを破らないで」と言いたい。お互い幻覚だと分かりながら、日常から離れたほんの一時だけ酔うのが ”ちょうどいい” ってもんじゃないか。こういうスタンス、ブースターとしては褒められた態度ではないのかな。そうかもしれない。でもそこまでチームと一体化するのが、私は怖い。

 このように今シーズンは試合観戦ごとになにかしらの文章を上げていきたいと思っている。その試合で自分がどんなことを感じたり考えたか、記録しておかないとすぐに忘れてしまうので…。選手はじめたくさんの人が、何度も咀嚼しないともったいないだけの熱量で作ってくれてる時間だとも思うし、単なる金儲け/消費の場にしないための努力をしたいという意地みたいな気持ちもある。ハンナリーズの運営やファンダムからはそういう気持ちに似たものを勝手に嗅ぎ取っていて、そこがいいと思っている。観戦した1試合1試合を、大事に骨まで味わい尽くしてやるぞという意気込みで参ります。参りたいですよろしく。

 いくつ観戦できるか、どれくらいの熱量を傾けられるかわからないけど、シーズンが終わるとき、願わくば「まだまだもっとこのチームの試合を見ていたい」と思えたら、どれだけ勝とうが負けようがきっと最高。


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