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あなたの気分が現実を歪んで見せる

皆さんは新型コロナウイルス(以降、新型コロナと略します)について様々な媒体から情報を得ていると思いますが、どのような媒体を活用しているでしょうか? テレビではニュースやワイドショー、インターネットではマスコミが発信する情報のほかSNSより情報を得ている人も多いと思います。今回の記事ではネガティブな情報に触れ過ぎることにより現実が歪んで見えてしまうことがある、そしてその結果人間関係を悪くする恐れがあるという話を、心理学の研究をもとにお伝えしたいと思います。

ノースイースタン大学のリサ・フェルドマン・バレット特別教授の著書『情動はこうしてつくられる ~脳の隠れた働きと構成主義的情動理論~』の中で、感情的現実主義(affective realism)という言葉が紹介されています。言葉を聞いただけでは何のことだかさっぱり分からないと思いますので本に書かれている具体例を2つご紹介します。

仮釈放を求める囚人に対して判事が仮釈放を認める可能性は、昼食前に低くなり昼食後は平均に戻る。

この例は、判事が感じている不快な気分は空腹が原因であるにもかかわらず、囚人の印象の悪さが原因であると判断してしまうことを示しています。

就職面接や大学の入学面接は、晴天の日に受けた方が有利になる。

この例は、晴天により面接官が感じる幸福感により応募者を肯定的に評価し、雨天により感じる不快感より応募者を否定的に評価することがあることを示しています。
このように私たちの経験している現実の一部は感情によって作られています

さて最初の話に戻ります。皆さんは新型コロナの情報を様々な媒体から得ていると思いますが、例えばワイドショーであればそこに出演しているMCやコメンテータの「怒り」や「うんざり」「不安」といったネガティブな感情に触れることもあると思います。またSNSを主な媒体としている人はネガティブなメッセージに多く触れているかもしれません。そのような媒体から受け取るネガティブな感情に触れることで皆さん自身がネガティブな気分になることもあると思います。特にこのような状況下では正義感や責任感の強い人ほどネガティブな気分になるかもしれません。このようにワイドショーやSNSなどに触発されてネガティブな気分になることが増えた場合、先ほど紹介した感情的現実主義の話にあてはめてみるとどうでしょう?

現在、政府や自治体からの外出自粛要請のため家族で家にいることも多くあると思います。もしパートナーや子供の何気ない言葉や、しぐさ、行動にイラっとすることが増えたと感じたら、それはあなた自身のネガティブな気分が現実をそのように見せているのかもしれません。最近はコロナ離婚が話題になっていますが、自身のネガティブな気分によって相手の言動がネガティブに感じられて夫婦喧嘩を増やしている可能性があると思います。

また職場での人間関係を悪くすることも考えられます。特に今はテレワークをしている人が多くいますが、対面と比べるとどうしても意思疎通に難しさがあります。ネガティブな気分を持った状態でテレワークでのコミュニケーションが上手くいかないと、単なるコミュニケーションの問題にも関わらず相手の人間性が悪く見えてしまう可能性があるでしょう

今のような危機的状況を乗り越えるためには、ストレスを増幅させる関係ではなく、家族と一緒にいることで安心できる、職場の仲間と一緒に仕事をすることで充実感を感じられるなど、新型コロナによるストレスが和らぐような関わりがお互い必要だと思います。

第4回の記事で「人は危機回避のスペシャリストである」とお伝えした通り、人はネガティブな情報に目が行きやすい習性があります。したがって媒体からネガティブな情報がひっきりなしに発信される今の状況では、ネガティブな情報に触れ過ぎないように意識的に回避することも大事だと思います。もちろん正しい情報を得ることは大切ですので例えばNHKのニュースなど淡々と事実を伝えてくれるメディアや、政府や自治体から発信される情報など、不必要に他の人のネガティブな感情に触れないで済むような媒体を選ぶことが良いと私自身は考えています。また危機的状況ではありますが、昨日放送されたNHKスペシャルなど見ていると専門家の方から厳しい現実と共に希望が持てる話も聞きますし、政府から現金給付など支援策の話も出つつあります。そういった未来への希望となる情報にもしっかり目を向けることが今は大事だと思います。もちろん自分なりのリフレッシュ法を見つけておくことも大事ですね。

前回の記事で「現実的楽観」についてご紹介しました。ネガティブな気分を強く持っていると、それが現実を歪んで見せるため「現実的楽観」になることは難しいでしょう。媒体が発信する他人のネガティブな感情を意識的に避ける、必要以上にネガティブな情報に触れることを避ける、周りの人たちと良好な関係を維持するために試してみてはいかがでしょうか。

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