「喧嘩するほど仲がいい」って本当??
私たち夫婦は結婚してから丸18年、結婚前の付き合いも含めると丸19年になります。そしてこの19年間、実は一度も喧嘩をしたことがありません。昔から「喧嘩するほど仲がいい」と言われますが、それが正しいとすると私と妻は最高レベルに仲が悪いことになります。ただし自分でいうのもなんですが、私たち夫婦は恐らく相当仲がいいです。そんな私だからこそ、あえてこのテーマについて心理学の研究も引用しつつ考察してみたいと思います。
そもそも「喧嘩するほど仲がいい」の根拠は何でしょうか?それは「自分の意見をハッキリと言える関係」というのがもっとも重要な根拠であると思います。確かに夫婦にも関わらず言いたいことも言えないのは、良い関係とは言えないですよね。一緒にいるだけでストレスが溜まり、そのうち大爆発を起こすこともあれば、逆にうつ病など心が不安定になる可能性も考えられます。
意見をハッキリ言えることは夫婦だけではなく職場でも大切です。心理的安全を研究されているハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授は著書『チームが機能するとはどういうことか ~「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ~』の中で「職場で心理的安全を重視すべきなのは、それによって率直に話すことが促されるのが最大の理由である」と書いています。お互いが率直に意見を言えるからこそ、職場でも夫婦でも相手のことがより理解できますし、自分を理解してもらえるからこそ余計なストレスを抱えずに済むと思います。また職場であれば様々な意見を評価することでよりチームとしてのパフォーマンスが高まりますし、夫婦もよりよい生活が築けると思います。職場の心理的安全についてはまた改めて詳しく書きたいと思います。
さて、「自分の意見をハッキリと言える関係」が大切なことは多くの方が賛同されると思います。私も賛同します。ただ私としては「だからといって別に喧嘩する必要は無いですよね」と思うのです。そもそも喧嘩とはどういった状況か?思い浮かべて頂きたいのですが、「相手の話を聴くことをおざなりにして自分の意見を主張している状況」と言えると思います。エドモンドソン教授は「率直に話すことが大事」と言っていますが、その大前提はお互いに相手の話を聴く意識を持っていることです。私が研修で心理的安全をテーマとする時は、たいてい概要を説明した次に「傾聴」をお伝えしています。傾聴の意識、つまり相手の話を聴く意識があるからこそ、相手も率直に話ができるようになります。「率直に話すことが大事」と言われても、話を聴いてくれない人に対して率直に話すことなんてしたくないですよね?
私が「喧嘩するほど仲がいい」に疑問を持つ理由はここになります。率直に話ができる関係を創るためには傾聴が大切で喧嘩はむしろ邪魔になると思うからです。皆さんも夫婦やパートナーと、また友人や職場の同僚と「率直に話ができる関係」が築けているか、自分だけ率直に話をしてて実は相手が話できていない関係になっていないか、ぜひ振り返って頂くと良いと思います。
ここからは、私たち夫婦が19年間一度も喧嘩せず仲よく過ごしている要因について考察したいと思います。私たち夫婦の話ではありますが皆さんの参考になったら幸いです。
特に重要なポイントは次の3つにあると考えています。
① お互いをリスペクトしている
② お互いよく気遣う
③ 美味しいものをよく一緒に食べる
① お互いをリスペクトしている
まず思い浮かぶのがこれです。相手をリスペクトしているからこそ、自然と相手の話を聴こうという意識になります。「パートナーをリスペクトしろと言われてもどうすればいいの?」と思われる人もいるかもしれませんが、その方は恐らく相手の良い面を見ようとせず、悪い面ばかり見ているのではないでしょうか?相手の良い面は探せばたくさんあります。例えば私たち夫婦で言えば、私は比較的細かい人間で、妻は比較的大胆な人間と、当然違いがあります。一緒に暮らし始めたころ、私はパパパっと家事をこなす妻を見て「あ、それでいいのか!」と学びつつリスペクトしていました。ただ人によってはそれを見て「大雑把だ」と見下す人もいるかもしれません。人と人の違いは自分の解釈次第で見下すことにつながることも、逆にリスペクトにつながることもあります。自分の基準で勝手に相手を評価するのではなく、自分との違いを受け容れて、自分の学びにつながるところへ目を向けることで、自然とリスペクトの気持ちが湧いてくると思います。
② お互いよく気遣う
気遣いもとても大切です。気遣いと聞くとよそよそしさを感じるかもしれませんが、近しい関係だからこそ気遣いがより大切です。以前こちらの記事でもその話をしました。まだ読まれていない方はぜひ読んで頂けると嬉しいです。
こちらの記事で「感情の黄金比」について書きましたが改めて簡潔に説明すると、「ポジティビティはネガティビティの3倍を超えたとき初めて、人が繁栄するのに十分な量となる」とされ、個人だけではなく人間関係にも当てはまると研究から導き出されています。さらに「繁栄する結婚」となると3倍ではなく5倍も必要になるとお伝えしました。つまり身近な人だからと「相手は分かってくれている」などと自分勝手に思うのではなく、身近な人だからこそ相手への気遣いが大切であることを数値が物語っています。
私たち夫婦は共働きで、現在私は講師とITエンジニアのパラレルキャリアですが5年前まではITエンジニア専業で、妻も同じITエンジニアです。働き方改革もあり最近は減りましたが、忙しいときは帰りが24時を過ぎることもよくあります。そのような生活をしている私たち夫婦ですが、例えば片方が大変忙しくて帰宅が24時を過ぎるときは、もう一方が少し忙しくて帰宅が22時を過ぎるような場合でも、洗濯や料理などの家事を早く帰宅した方が特に話し合いなどもなく自然と多くこなしています。私たち夫婦は、通常は家事の負担がおおよそ五分五分ですが、相手が大変な時はそれを自分ごとと感じてこのように自然と家事を多くこなしています。このような関係ができていると相手への感謝の気持ちも自然と湧いてきますし、「繁栄する結婚」が築かれていくと思います。
③ 美味しいものをよく一緒に食べる
楽しい時間、ポジティブな時間を一緒に過ごすことは、やっぱり人間関係、特に夫婦という身近な関係ではとても大切だと思います。②は気遣いや感謝という形でのポジティビティですが、こちらはより積極的にポジティブな時間を創るとイメージして頂ければと思います。「美味しいものをよく一緒に食べる」は私たち夫婦の場合で、皆さんには皆さんなりのポジティブな時間の過ごし方があると思いますが、美味しいものを食べながら料理の話をしたり、趣味など楽しい話をしたり、また仕事の愚痴とか夫婦の将来について語り合うなど、食事の時間は人を豊かにする要素がたくさんあります。食事の時間に限らずですが、積極的に夫婦のポジティブな時間を創ることをおすすめします。