【第3章】ぼくらの勝ちパターン 〜独自のカルチャー〜
第1章では、メンバーに対するポジティブフィードバックによって関係の質を高め、主体性を引き出すことで確率論的に結果を生み出す方法を考えました。
第2章では、個人の達成意欲を組織の達成に繋げるためのキーマンとしてのマネージャーの役割を見てきました。目標逆引き思考によってメンバーの活動量を担保し、個性を生かすマネジメントによって、組織の目標を達成していきます。
第3章では、これらのマネージャーの関わり方を組織の文化へと昇華し、浸透させていく方法について考えていきます。
高い視座とMVV
マネージャーは、メンバーのWill Can Mustと向き合いながら、チームの目標達成を自らのWillとすることによって、チームの重要な存在となります。マネージャーは、メンバーの思いを自分ごと化することで、個性を生かした最強のチームを生み出していきます。そして、メンバーが自分自身の存在と、今まさに関わっている人々に意識を向ける一方で、マネージャーはチームの未来に関するあらゆる可能性を考え、社会における存在価値に目を向けます。暗闇をハイビームで照らすように、航海において水平線を臨むように、高い視座から遠くを見通して組織を率いていくのです。
レンガ積み職人の童話があります。ある人は今日のレンガ積みのノルマに愚痴を言い、ある人はレンガを積んで壁を作る仕事で家族を養っていると言い、またある人は歴史に残る教会をつくることを誇らしげに語るというものです。三人とも同じようにレンガを積んでいるわけですが、その先に見ているものが違うのです。
私たちの日々の業務は、当月の目標達成に苦慮するものなのか?ビジョンに繋がる実感が持てるものなのか?マネージャーとしてメンバーに発信すべきメッセージとはどういうものでしょう。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)がそれに当たります。ミッションは、組織の存在意義、何のために組織があるのか?ビジョンは実現したいこと、目指す姿や目標。そしてそれらを実現するための組織の行動規範がバリューになります。
世界平和の実現=ミッション、そのために歴史に残る教会をつくる=ビジョン、それらを実現するために求められるレンガ積み職人としての技術力と行動規範=バリューという感じです。
MVVは高い視座から定義されます。それは社会的に大義があり、仲間への共感度が高く、社会課題を解決し得るものです。社会が発展し、事業環境が変化しても存続し続ける企業は、そうした普遍的なMVVを持っています。
経営資源としてのカルチャー
そうしたMVVを実現するための、組織のあり方こそがカルチャーです。ミクロ的には、マネージャーがメンバーと向き合い、1つ1つの行動や結果に対してフィードバックを行い、それらが積み上がって組織となっていきます。マクロ的に見れば、この組織において賞賛されるあり方・やり方は何なのか?が明確になっている状態がカルチャーが浸透している状態です。
すぐに結果がでなくてもやり続ける、結果が出るまでやり抜くのが自分たちのカルチャー。大きな成果に繋がったとしても、他人の不幸を孕むようなやり方を取らないのが自分たちのカルチャー。例えばそういうイメージです。
ハーズバーグの二要因理論というものがあります。組織において、「不満が無い」状態と「満足がある」状態は異なるというものです。職場の人間関係は良好だが成長できないとか、仕事は大変だがやりがいがあるとか。私たちは職場の不満を減らしたいと考えますが、それと同時に満足を生み出すことも考えるべきです。何をがんばれば賞賛され、満足を得ることができるのか?これを明確にし、浸透させていくことが強いカルチャーの醸成に繋がっていきます。
カルチャーは社内的にはメンバーに満足を提供し、組織のモデルケースを浮かび上がらせます。そして同種の仲間を惹きつけることで、採用力の強化へと発展していきます。また、メンバーの行動規範を形成し、組織としての善行を社会に約束します。そして、企業のコアコンピタンスを社内外に対して明確にすることで、事業に直結する戦略的価値を持ちます。
こうした社内的・社会的・戦略的価値を持つカルチャーは、まさに経営資源と言えます。強いカルチャーは組織のDNAとして受け継がれ、競合が真似できない競争力となっていくのです。
メンバー個人に、それぞれの個性があるように、組織には独自のカルチャーが存在します。そして強いカルチャーは、会社のビジョンを実現するための重要な経営資源として機能し、メンバーやマネージャーの日々の向き合いを超えて、組織独自の勝ちパターンへと昇華し、受け継がれていくのです。
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