
2024/05/20(月)8万円を詐欺られた夢のエティハドスタジアム現地観戦記。
幼い頃からの憧れ、マンチェスターシティ。
エティハドスタジアムで夢の空間を味わってみたいな。そんな動機でいつの日かイギリス留学を志すようになった。
そして念願叶って掴み取ったイギリス留学、23/24プレミアリーグ最終節のチケット。
勝てばシティが優勝という、これ以上ない絶好の機会にマンチェスターを訪れることが確定した。
バーミンガムからバスに揺られること3時間。気が付けば夢のエティハドスタジアムにたどり着いた。
まずはシティストアに入店する。こんなユニフォーム見たことねえ!という時代の激渋キットや、数々のシティグッズが陳列されており、シティファンにとってまるで天国のような空間だった。
選手バス到着にシチズン一同ボルテージが最高潮に達したところで、僕はチケットの引き換えを行うためインフォメーションセンターに訪れた。(普通は電子チケットなのにどうしてだろう。)
どういう訳だか険しい表情を見せたスタッフがパソコンのキーボードをタイプしている。なんだか物凄く嫌な予感がした。
こういうときの直感は驚くほど的中するもので、軽く深呼吸を済ましたスタッフは口を開き、
「残念やけど、これはフェイクチケットや。スタジアムの中に入ることは出来へん。近くにパブがあるから、そこで観戦することをお勧めする。申し訳ない。」
と告げられた。
怒りというより失望の念に駆られる。思わず涙がこぼれそうになった。
泣く泣くインフォメーションブースを出た僕は、入場ゲート前で笑顔でボディチェックに応えるシティファンを見て心底腹が立った。
俺の夢ってなんやったんや。俺って何しにここまで来たんや。一生に一度の機会やで。そんなゲームでフェイクチケット売ったらあかんやろ。
そんな心の叫び声が誰に届く訳もなく、陽気なエティハドスタジアム周辺の雰囲気に一蹴された。
いやいや、そんな簡単に諦めてたまるか。意地でもスタジアムに入ってみせよう。目の前にある憧れのスタジアムの入場ゲートが再度僕の心に青色の炎を灯した。
代替手段を探すべく、まずは横に座っていたシティファンのおっちゃんに意見を求めてみた。スムーズな会話をするのに十分な英語力を持ち合わせている訳ではない僕だが、「感情」と「持っている語彙の全て」を駆使してなんとか会話を成立させた。
「チケットまだ売ってるかもよ」
既にソールドアウトと知りながら、おっちゃんのアドバイス通りチケットセンターに突撃してみるも結果は言うまでもなく撃沈。
サポーターを誘導するスタッフや駐車場の前に立っていた2人組の係員、その後もありとあらゆる英国人に声をかけ続けるも「諦めろ」との一言で慰められた。
心が折れかけたその時、シティグッズを違法に売りさばく詐欺師たちとのコンタクトに成功する。
「あと1枚チケット余ってるからそこでちょっと待っとけ」
そう言い放った詐欺師が誰かに電話をかけた数分後、仲間とみられる大男が僕の目の前にやってきた。
男「300ポンド(約6万円)ね。」
僕「いやいや、ちょっと待ってくれ。さすがに高すぎるわ。」
男「アホか。最終節やで。そんくらいするに決まってるやん」
もちろん彼らは詐欺師だ。転売で利益を得ようとしていることは分かっている。交渉して値切ってみることにした。
僕「200ポンド(約4万円)で頼むわ。既にフェイクチケットで150ポンド(約3万円)失ってるねん。」
男「それはお前が悪い。ほんなら250ポンド(約5万円)で売ったるわ」
キックオフまで残り30分を切った。1万円の値引きに成功したとはいえ、追加で5万円(フェイクチケットに支払っていた分も合わせて8万円)を払ってスタジアムの中に入るか否かの決断に迫られた。
僕「(おお、それでも高いな。しゃーない。ここ逃したらないわ。)分かった。買うわ。お前のこと信じるで。これ、またフェイクチケットってことはないやんな?」
男「当たり前やん。あそこにいるのは妻と娘や。これで家族養ってるねん」
無茶苦茶やなと思いつつ、妻とその娘に連れられ銀行で現金を引き出した。
「ありがとうな。助かったわ。」
僕はそう伝えて詐欺師と握手を交わした。
キックオフまで残り5分に迫った夢のエティハドスタジアムの入場ゲートを目指し、マンチェスターの街を全速力で駆け抜けた。