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入試前の子どものメンタルが不安定に。親ができることって?『中学受験 親のお悩み相談室』(#27)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問 入試を直前に控えて、子どもが急に怖くなってきたようで、落ち着きがなく、勉強が手につかないときも。そんな子どもの様子を見ていると、親の私も不安になってしまいます。こんなとき、どうしたらいいでしょうか。

回答 頑張ってきた姿を見ていたぶん、緊張しますよね。でも、親の不安は子どもに伝染します。できるだけ前向きな言葉を口にするよう意識して。

まずは親が腹をくくって、笑顔でいよう

入試が日に日に近づいてきて、お子さんはプレッシャーを感じているのでしょうね。受験は必ず合否という結果が出るチャレンジです。イライラしたり、ドキドキしたり、メンタルが不安定にならない受験生は一人もいません。

これが、こと中学受験となると、親のほうがまるで自分の受験のように一喜一憂し、心配のあまり、余計なひと言を言ってしまうことがあります。

でも、親が発するひと言で、お子さんの気持ちはポジティブにも、ネガティブにも揺れ動きます。

親の不安は無意識のうちに、でも確実に子どもに伝わり、子どもも不安になってしまいます。不安からよい結果は生まれないですよね。ですから、ここは親も腹をくくりましょう。

中学受験を「やってよかった」と思える経験にするためには、親子の信頼関係がとても大切です。信頼関係とは、「自分のことを受け入れてくれている」「理解してくれている」と感じられる間柄ですが、不安にとらわれると、親子の信頼関係も揺れてしまいます。

自分に置き換えたらわかると思いますが、自分は信頼されていない、責められたと感じたら、落ち込むか、反発するか、いずれにしても、やる気は出ませんよね。

すると、勉強しない→自信が持てない→結果が出ないという悪循環に陥ってしまいかねません。

そうならないためには、本当は、親がゆったり構えて動じないことが必要なのですが、それはなかなか上級編です。ですから、不安な気持ちに揺れている自分に気づいたら、そんな自分に「ストップ!」と声をかけて、ふりでもいいので動じない親を演じましょう。

そのときにしてほしいことは、笑顔をつくること。これ大事です。

笑顔を作ると脳は騙されて、気持ちも前向きになっていきます。そして、悲観的になっているお子さんには、例えば「これまでやってきたことは力になっているよ。それを信じよう」「今まで頑張ってきたんだから、最後までやり切ろう」というような勇気づける言葉をかけてあげてください。

親からの愛のこもった一言は、必ずお子さんの心に響きます。

リラックスタイムを設けて。ボディケアも効果大

この時期は、お子さんも緊張がピークに達しているので、身体が硬くなっています。そんなときには、ボディケアも有効です。

例えば就寝前にマッサージをしたり、一緒に横になって話をしたり、リラックスできる時間を持つことをおすすめします。これを「クオリティタイム」といいます。自ずと会話が弾むような他者と過ごす良質な時間のこと。

私も自分の娘が中学受験をしたときには、よく娘の足をマッサージしていました。

冬は冷えるし、体を動かす機会も減っているからだと思いますが、緊張もしていたのでしょう。娘のふくらはぎや足裏は、こちこちになっていました。

勉強をして頭も使っているので、頭皮マッサージもいいですね。お子さんがリラックスできる時間を持つことで、親子関係がより安心できるものになる効果もあります。

「まさかの事態」が起きたときに、大事なこと

受験が始まると、まさかのことが起こることがあります。

実際、安全校のはずの学校に不合格になってしまったAさんは、「本命校のときでなくて、よかったね」と励まし、お子さんに「あとで後悔しないようにやれることは全部しよう!」と伝えて、本命校の試験に臨み、無事合格したそうです。

実はAさん、後日談としてこんな話をしてくれました。

「本心では、このままどこも受からなかったからどうしようと不安で仕方なかったけれど、ここまで親子で頑張ってきたことを思い出して、最後まで受け続けようと腹をくくりました。

そう思った途端、胸のつかえがおりて、子どもに明るく接することができました。子どももそんな私の気持ちが伝わったのでしょう」

いかがですか? 入試直前期、誰でも緊張します。どんなときこそ、お子さんが安心して入試に向かえるように、親からの応援の気持ちを素直に伝えてあげましょう。あなたのお子さんの頑張りが届くこと、心から祈っています!


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。