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ひとり親家庭です。中学受験のサポートのコツを教えてください。『中学受験 親のお悩み相談室』(#26)
少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。
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質問 ひとり親家庭です。中学受験のサポートのコツ、受験にあたっての注意点などあれば教えてください。
回答 パートナーがいてもいなくても、全てを一人で背負い込まないで。できることを見極めた上で、塾やツールをうまく使いましょう。親子関係を良好に保つことも大事ですよ。
できること・できないことを仕訳し、どんな受験にしていくかを決めよう
最近、同じようなお悩みを伺いました。ひとり親家庭も増えていますから、決して特別なことではありませんし、ましてやひとり親だから不利ということはありません。
パートナーがいても、一人に負担がかかりすぎたり、受験に対する意見が合わなくてストレスになったりと、不満を持つ方もいます。
しかし、実際に中学受験の準備をする中では、大変なことはあるでしょう。
塾の送り迎えや、お弁当の用意、家庭学習のサポートなど、仕事をしながら全てを一人で担うのは物理的にも大変なことがあるかもしれませんね。
サポートのコツということですが、まずは現状を把握して、できることとできないことを仕訳してはどうでしょうか。その上でどんな受験にしていくのか、我が家の受験軸を決めましょう。
受験軸とは「なんのために受験をするか」「どう受験するか」という家庭での軸です。これを決めないままに受験を始めると、今後の長い受験生活の中で、周りと比較して振り回されることにもなりかねません。
この受験軸はお子さんと話し合いながら決めていきましょう。たとえ一部でも自分で決めたと思うと、その後の向き合い方が変わります。そして、今後お子さんが自主的に受験勉強に取り組むカギになります。
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塾の中で相談できる人を見つけて
塾はすでに決めているでしょうか。本当は、先ほどの受験軸に沿って塾選びもされたほうがいいでしょう。
なぜなら中学受験は塾選びから始まるといっていいほど、その後の生活に大きな影響を与えるからです。
塾には、面倒見がよく「おまかせ度が高い塾」と、「家庭でのサポートが必須な塾」があります。お子さんのタイプにも寄りますが、サポートが手厚い塾のほうが、家庭の負担は少なくなりますね。
すでに塾が決まっているのであれば、塾の中で相談できる先生を見つけておきましょう。授業を担当している先生はもちろん、塾長などマネジメントをしているベテラン先生とも顔見知りになっておき、こまめにコミュニケーションをとって、相談ができる関係を築いておくことも大切です。
親子のコミュニケーションを大切に
最近はフルタイムの共働き家庭も増えていますから、そういうご家庭も同じですが、ひとり親家庭は特に、塾に出かける時間に送り出せない場合も多いでしょう。
そんなときにないがしろにしてほしくないのが、親子のコミュニケーションです。「いってらっしゃい」の一言でもいいので、SNSアプリなどを使って、お子さんともこまめにコミュニケーションをとれるといいですね。
スケジュールや学習の管理などは、ホワイトボードの伝言板もおすすめ。
アナログな方法ではありますが、ボードにやることを書き出してチェックし合うと、それだけでコミュニケーションのきっかけになりますよ。
また、寝る前の15分でもいいので、お子さんと一緒に今日を振り返りおしゃべりをしたり、マッサージをしながらスキンシップをとるのもおすすめです。
子どもは困ったことがあっても「親に心配をかけたくない」と本音を言わないこともあります。日頃からちょっとしたことでいいので、まめにコミュニケーションをとっていたら、一緒にいる時間が少なくても、絆をつくることはできます。
ぜひ良い親子関係をつくって受験に臨んでください。
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中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。