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塾の先生と合わないと言い、子どもが塾に行きたがりません。転塾させるべきでしょうか?『中学受験 親のお悩み相談室』(#28)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問 「塾の先生と合わない」と言い、子どもが塾に行きたがりません。転塾させるべきでしょうか?
回答 転塾は慎重に。「塾に行きたくない」という言葉の裏にある気持ちを聞きましょう。もし転塾をすると決めたら、まず課題を整理。転塾先の先生とよく相談してくださいね。

まずは共感しながら話を聞く

お子さんは「塾の先生と合わないから、塾に行きたくない」と言っているのですね。

合わない先生の教室に通い続けるのは、子どももしんどいと思うので、絶対に塾を変えてはいけないということはありません。しかし、子どもがやめたいと言ってきたからといって、すぐに塾をやめさせるというのは、おすすめしません。

塾を変えるうんぬんの前にまずすべきことは、お子さんの「塾に行きたくない」「先生と合わない」と言う言葉の裏にある、本当の気持ちを知ることです。転塾すべきかどうかは、それがわかってから考えましょう。

一般的に、塾を辞めたい、変わりたい理由としてよくあるのが

  1. 「成績が上がらない」

  2. 「授業のレベルに合わない」

  3. 「宿題量が多すぎてこなせない」

  4. 「友達関係」

  5. 「講師の先生と合わない」

などが多いですが、この場合は5が直接の理由ですね。まずは、お子さんの言葉を手掛かりに、塾に行きたくない理由をもう少し詳しく聞いてみましょう。

とはいっても、「何があったの」と追求しても、本音は言わないかもしれません。また、何か理由を話したとしても、親にとって「ちょっと困ったな」ということを子どもが言い出すと、親はついつい「説得モード」に入りがちです。

ですから、ネガティブな話ほど、その気持ちに共感することが大切です。
共感は、同意とは違います。「あなたはそう思っているんだね」と、ただ相手の気持ちを受け止めるということです。

具体的には、「先生と合わないんだね」と子どもの言葉をそのまま繰り返し、いったん受け止めてから、その理由を聞いてみましょう。

理由がわかったら、そのうえで塾に相談する

たとえば、塾の先生と合わない理由が、
「宿題の量が多すぎでこなせていない。そのことで先生から怒られているから嫌だ」
「授業が理解できず、つまらない」

という場合、担当の先生に状況を説明して、宿題を見直してもらうとか、わからないところを見てもらうとか、クラスを変更してもらうのも一つの解決方法です。

担当の先生との相性が問題なら、教室長など塾の管理者に相談してみるといいですね。

そのときも、クレームではなく、相談という形でお話ししましょう。誠意のある塾であれば、困りごとに対して対応策を考えて下さるはずです。もしそこで誠意を感じられなかったら、塾を変えてもいいかもしれません。

また、じつは塾の友達関係が原因の場合もあります。こちらは解決するのはちょっとややこしいですが、まずは共感しながら子どもの気持ちを聞きくことで、気持ちを切り替えたり、子どもが自分で解決方法を考えられ可能性もあります。

いずれにしても、共感しながら話を聞くことで、「行きたくない」という言葉の裏にある、本当の理由にたどり着くことができたら、適切な対応をすることができるでしょう。

このように丁寧に聞き取りをして、塾にも相談してみて、それでもやはり環境を変えたほうがいいと思われたのなら、その時は転塾もありです。

転塾するなら、転塾先とよく相談を

転塾先を決める時に注意しておきたいことは、学習面での抜け漏れが起きないか。塾を変えたい理由をクリアできるのかを見極めること。

塾によって扱っている教材や進度も違います。転塾によって学習範囲に穴ができてしまう可能性もあります。また、新しい環境に馴染むまでに時間がかかるかもしれません。転塾先で、その辺りのフォローをしてもらえるのかどうかもよく確認しましょう。

また、実際教えてもらう先生との相性も大切です。塾によっては、担当講師の授業を体験することもできると思うので、決める前に体験をしましょう。
いずれにしても何かトラブルが起きた時こそ、いったん立ち止まるチャンスです。

これを機会に、どんな受験にしていくのか、お子さんも一緒にご家族、我が家の受験軸を考え直してみてください。


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。