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「ゆる受験」という言葉をはじめて聞きました。これって?『中学受験 親のお悩み相談室』(#21)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:「ゆる受験」という言葉をはじめて聞きました。これって?

回答:習い事や趣味なども続けながら中学受験をする方が増えています。高偏差値校を狙ってがっつり受験するのではなく、「偏差値に関係なく、わが子にあった学校を選ぶ」「習い事などと並行しながら中学受験をする」「志望校に行けなかったら公立でいいと割り切ってライトな受験をする」こういったスタイルの受験を、ゆる受験と私は捉えています。

受験との向き合い方が、大きく変わってきた

ゆる受験という言葉があるようですね。これまで中学受験というと、小学4年生(実際は小学校3年生の2月)から進学塾に通塾し、難関校を目指して頑張るというのが一般的でした。

最たるものが、漫画『二月の勝者 ー絶対合格の教室ー』(高瀬志帆/著・小学館)に描かれたような受験です。

ただ最近は、習い事や趣味なども続けながら中学受験もしようという受験者が増えてきたことで、「ゆる受験」という言葉が生まれたのかなと思います。

入試も4科目・2科目入試だけでなく、得意科目入試や、公立中高一貫校と併願できる適性検査型入試、自分の得意なことをアピールする自己アピール型入試、思考力入試、英語入試など多様化しています。

そんなこともあって、受験への向き合い方も次のように3極化しているといわれています。

① 従来通り小4(小3の2月頃)からしっかり進学塾に通って難関校を目指す層
② 塾には通っているが、偏差値重視ではなくわが子にあった学校を選びたいという層
③ 公立中高一貫校との併願や新タイプ入試を活用して、習い事などと並行しながら中学受験をする。志望校に行けなかったら公立でいいと割り切ってライトな受験をする層

この中でも、②がボリュームゾーンで、③も増えているようです。

中学受験者数は過去最高を更新しており、加熱しているという見方もありますが、4科目入試がほとんどだった2007年のピーク時と違い、入試自体が多様化し、保護者の中学受験に向かう考えかたも着実に変わってきているのです。

それが「ゆる受験」という言葉を生んでいる背景です。

「ゆる受験」は頑張らない受験ではない

私の周りでも、大手塾での競争に疲れて途中で小規模塾や個別指導の塾に移り、できるだけわが子にあった受験をしたいと学校研究をして志望校を変えて合格したという家庭がありました。

また、習い事や自分のやりたいことをしていくために中高一貫校を選びたいと新タイプ入試を活用して合格したケース、子どもが小学6年から急に受験をしたいと言い出して、急遽2科目で駆け込み受験をしたといったケースを見聞きすることも増えていました。

「ゆる」という言葉から、最初から頑張らないというイメージを持たれるかもしれませんが、それは違います。

受験はあくまでも合否という結果が出るチャレンジです。ゴールをどこにするかを見定めて、その後ゴールに向かって悔いのないように努力することは大切です。

ただ、そのゴール設定がただやみくもに、少しでも偏差値の高い学校に入ることになってしまうと、無限地獄のようなことにもなりかねません。

ゆる受験をするにしても、ガチ受験をするにしても、何を大事にして、どんな受験にしていきたいのかをよく考えてトライして欲しいと思います。


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。