【特別編】『中学受験 親のお悩み相談室』が本になりました!(#22)
子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答える本連載『中学受験 親のお悩み相談室』が本になりました。今回は特別編として、8月22日発売の書籍『<中学受験>親子で勝ちとる最高の合格』の中から、内容の一部を公開いたします。
「とりあえず」で受験を始めると、泥沼にハマります
私は、これまで20年以上中学受験の世界を見てきました。
最初は受験生の親として、その後は教育ジャーナリストという立場で学校や塾を訪れ、校長先生や塾の有名講師への取材を行おこなっています。
また、講演会などを通して、受験生の親御さん2万人以上にもお会いし、お話を伺ってきました。その中で感じるのは、「この道」は一度ハマったら、親子共々なかなか抜け出せない沼のようだということ。
とりあえず子どもを塾に通わせてみたら、案外成績がよかった。そこから欲が出てどんどん受験にのめり込んでしまった……という人もいれば、子どもの成績が芳しくなく、なんとか上のクラスに上げようと親のほうが受験に必死になってしまったという人もいます。
なぜ、よかれと思って始めた受験なのに、子どもだけでなく親も「受験沼」にハマってしまうのか。
それは中学受験が「レールを敷くのは親、走るのは子ども」という二重構造になっているからです。
実際、ある調査によると、最初に中学受験をしようと考えた人は、私立•国立では「母」が48·7%で最も多く、「子ども本人」は27·3%、「父」は20·7%だそうです。
公立中高一貫校でも受験を最初に考えた人は「母」が45·2%で最多。次に多いのが「子ども本人」で40·4%という結果が出ています。
このように多くの場合、親のこうあってほしいという願いや教育観で、中学受験が始まりますが、実際に勉強するのは子ども。
子どもの成績に一喜一憂したり、塾に行きたくないという子どもへの対応に苦慮したり、詰め込み教育への疑問を感じつつ、やめたら最後と考え、塾通いを強要する自分に葛藤を抱えたり……それでも全て子どものためと言い聞かせながら、親も一緒に受験というレースを走ることになります。
このようなお話をすると、
「いえいえ、親が勝手に中学受験を始めさせたわけではありません。子どもに聞いたらやりたいと言ったから始めたんです」とおっしゃる親御さんも多いですが、子どもは単純に
「塾の授業がおもしろかったから」
「お友達も行くから」
「パパやママが勧めたから」
という理由で「やりたい!」と言うのです。
受験には軸が欠かせない
進学塾の国立·私立向けのカリキュラムは、小学校3年生の2月からスタートするので、入塾テストを受ける段階で、子どもが明確な意思を持って中学受験を選ぶことは多くありません。ほぼ、親の意思で始まるのが中学受験です。
だからこそ、中学受験を始めるときに、家族で決めておきたいことがあります。
それが「受験軸」です。受験軸とは「何のために受験をするか」「どう受験をするか」その家庭内での基準のこと。
軸を決めずに、中学受験の世界に入ると「受験沼」にハマってしまいますし、受験がつらく苦しいものになりがちです。
中学受験は、とりあえずで始めるような簡単なものではありません。時間もお金もかかります。子どもが塾に行く生活が始まれば、送迎やお弁当作りなど家族の負担も増えるでしょう。
難しい課題に取り組む子どもの家庭学習のサポートも必要です。きょうだいがいれば、その子の生活にも影響が出ます。
いわば、中学受験は長期間にわたって取り組む「家族ぐるみのプロジェクト」なのです。
長期プロジェクトだからこそ、「これだけお金と時間、労力をかけたのにこの結果……」という思考にもなりやすいのが、中学受験の怖さでもあります。
受験沼にハマらず、終わったあとで後悔もしない。「やってよかった!」と心から思えるようになるには、「家族で一貫した受験軸を持つこと」が欠かせません。
上記の内容も入った『<中学受験>親子で勝ちとる最高の合格』が発売中です。