#23 「雨」を気持ちよく過ごす智慧
○前叶 まもなく梅雨の時期ということで。朝から雨だと「電車の湿気すごそうだな」とか「濡れるのやだな」なんていうふうにとにかく憂うつ…。
●前誠 じつは昔から日本人は雨の憂うつさを乗り越えるために、いろんな工夫をしてきたみたいなんだよね。たとえば「雨を表現する言葉」。春雨とか夕立とかさみだれとか…。
○前叶 あ~なるほどね。
●前誠 雨の呼び方って何個くらいあると思う?
○前叶 え~結構あるよね。それってゲリラ豪雨とかも入るの?
●前誠 それは…ちょっと違うんじゃない。
○前叶 パッと思いつくところでも10か20くらい?
●前誠 いい間違え方するね! なんと、、、400以上あるらしいです。
○前叶 そんなに!?
●前誠 ちなみに晴れを表す言葉は、35~50くらいみたい。だから、みんな雨に対して思うところがあるんだろうね(笑)
○前叶 たしかに好きか嫌いかでいうとね。じめじめしているし、濡れるし…。
●前誠 そうなんだけど、嫌いなわりに雨の呼び方っておしゃれなの。
○前叶 たとえばどんなの? 前誠チョイスでお願い。
●前誠 そうね…酒の涙の雨って書いて、「酒涙雨(さいるいう)」。これは七夕に降る雨のことで、雨で会えなくなった彦星と織姫が流す涙とも逢瀬の名残惜しさで流す涙とも言われているらしい。
○前叶 なにそれ!めちゃめちゃおしゃれじゃん。しかも七夕当日にしか使えないという。
●前誠 そう。ちなみに洗う車の雨、「洗車雨(せんしゃう)」っていうのもある。
○前叶 えっ!?「せっかく洗車したのに雨降った!?」みたいなこと?
●前誠 じゃなくて、七夕の前日に降る雨のこと。これは彦星と織姫が会う時に使う牛車を洗う水になぞらえています。「洗車したのに雨降った。あ~残念」じゃなくて、雨によって牛車が洗われるっていうこと。どっちかっていうといいことかな。七夕関連の2日だけで2個もあるわけ。みんな雨ってじめじめして嫌いなのに、晴れの日よりも言い方が多いのは、気持ちよく過ごそうとする日本人なりの智慧というか、情緒を感じるね。
○前叶 日本には四季があるけど、どの季節にも振り分けにくい6月の梅雨。避けては通れないから、いかにポジティブに乗り越えるかっていうところからきてるんだね。
まぁ、400も超える雨の言葉があるのに、ゲリラ豪雨が入っていないってことはもっと驚きだけど(笑)
ところ変われば「雨」も…
●前誠 でもさ、捉え方によって、「雨」も変わってくるのかなって。雨の少ない日照りが続く地域では雨が降ると「いい天気だね」ということになるらしい。恵みの雨っていう認識を私たちが考える以上にしている国もあるみたい。環境によって天気の感じ方も変わってくるよね。
○前叶 そうだね。仏教関係でいえば、お盆の成り立ちなんかも、インドの雨季にお堂にこもっていたお坊さんたちに由来するよね。
●前誠 雨=龍神さまが来臨されたっていうお坊さんもいるし。
○前叶 それでいうと「地鎮祭」では、流派によって地鎮祭が終わった後や式中に「雨が降る=龍神さまが起こしくださった」これをもって成功だという、なかなかギャンブル性の高い地鎮祭をする流派もあるからね。まぁ、天の気持ちと書くからね、天気は。なかなか読めないよね。
●前誠 日蓮聖人の雨ごいとかもね。干ばつで食べ物が採れない、生き死にに直結する、疫病が流行る・・・そんな時に雨を降らせた。みんなが待ち望んでいた雨をね。そう考えると恵みの雨なんて言われるシーンは日本でもあるわけだしね。
○前叶 たしかに立ち位置によって見方って変わるな~。
●前誠 梅雨の時期もそう考えると見方が変わるかもしれないよね。
○前叶 どんよりした季節ですが、明るく乗り越えていけたらいいなと思います。
●前誠 ちなみに夕立は、「ゲリラ豪雨とも呼ばれます」と書かれていました。明日は明るい日と書きます。
○前叶 合掌。