塾の宿題が終わらず寝るのが深夜になってしまうことも。どうしたらいいでしょう?『中学受験 親のお悩み相談室』(#19)
少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。
みんなやっているから…感覚が麻痺しやすいのが、中学受験
私は、中学受験で一番の問題は、このように寝る時間が遅くなることだと思っています。
でも、中学受験の塾は、5・6年生になると、終了時間が夜の9時過ぎになるところも多いですよね。そうなると、すぐに帰ったとしても9時半過ぎ。それから夕食を食べて、お風呂に入って、そこから宿題に取り掛かったら……なんだかんだ寝るのが深夜にだってなりますよね。
そこまでいかなくても、「授業は8時に終わるけれど、帰ってからも塾の宿題だけでなく、学校の宿題もやらなくてはならないし、息抜きの時間も必要なので、早く寝かせたいと思っていても、つい遅くなります」という親御さんもいました。
考えてみたら、学校で15時まで過ごして、その後塾で勉強して、さらに帰宅後勉強する。受験生の子どもたちは、本当に頑張っていますよね。
こんな生活が毎日続いたら、大人だって参ってしまいそうです。しかも深夜までとなったら、もう過労死レベルです。
それでも、周りの子の頑張りや模試の成績などいろいろ気になり、ついつい「みんな頑張っているのだから」とか、「もうちょっと頑張れば手が届くから」と、寝る時間が気になりながら、睡眠時間を削って勉強をしている子も多いのではないでしょうか。
感覚が麻痺しちゃうんですよね。
しかし、近年、睡眠時間を削ることが脳に与えるダメージが計り知れないことがわかっています。
睡眠負債という言葉を知っていますか。睡眠不足が続くと、集中力が落ちたり、イライラしたり、体調にも影響がでますよね。それだけでなく積もり積もって体にダメージを与えてしまうこともわかっています。
特に、子どもの睡眠不足は、脳の正常な発達という面からもダメージが大きいと、専門家は警告を発しています。
脳が発達途中にある子どもたちにとって、規則正しい生活リズムと適切な睡眠時間の確保は欠かせないのです。
思い切って、朝型生活に変えるとうまくいく
朝型に変えて朝日を浴びることで、体内時計がリセットされ、セロトニンという脳内ホルモンが分泌されます。それによって夜にはメラトニンもしっかり作られるので、睡眠の質も高まると言われています。
セロトニンは別名ハッピーホルモンとも言われるくらい、情緒の安定にもつながりますが、反対に、不足するとイライラや不安などのストレスを感じやすくなります。 また、意欲や集中力の低下、気分の落ち込み、自律神経の調節機能のほか、めまいや頭痛など体の不調にもつながるのです。
遅寝の子どもは眠りが浅くなるため疲れが取れません。その結果、朝から機嫌が悪く、集中力も低下、やる気が出ない、成績が上がらないという負のスパイラルを引き起こしてしまうのです。
結論としては、どんなに遅くても夜の10時には寝るようにしましょう。その代わり、朝30分でも早く起きて、朝時間を活用して宿題をするのです。その方が深夜に1時間やるより、ずっと集中できて効率的です。
また、食事の取り方も、睡眠に影響を与えます。寝る前にご飯を食べると腸に負担がかかって熟睡できないので、塾に行く前にお菓子ではなくおかず系やおにぎりなどの軽食を食べてから出かけ、帰宅後お腹が空いていたら、消化の良いスープやうどんなど軽めの食事で済ませた方がいいですね。
また、お風呂も寝る直前に入ると寝にくくなるので、朝風呂に変えるなど、睡眠の質を上げる工夫はいろいろあります。
実際、受験勉強のため子どもが遅くまで起きていることを気になりながら、仕方ないと思っていたというある親御さんは、睡眠の大切さを知り、思い切って朝型に切り替えました。
それまで自習室に残って勉強していたので、不安もありましたが、居残りをやめ、塾から帰ってきたらできるだけ早く寝て、代わりにそれまでより1時間早く起きて、朝時間を活用して宿題をするようにしたのです。
残った時間は好きなことをして良いとしたら成績も上がり、見事志望校に合格しました。
受験を乗り切るには、体力と気力が必要です。受験でよい結果を出すためにも、ぜひ朝型に変えて、毎日を一定のリズムで過ごすように心がけてください。