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自治体行政計画におけるKPIの功罪

来月、とある自治体行政計画におけるKPI(Key Performance Indicator)のあり方についてお話をします。論理の形式と実態で、内容の整理をしてみます。はしょって書いております。随時、修正/追記していきます。

1 そもそものKPI概念とは

 一般に言われるものは、バランスコアドカードにおけるそれぞれの領域での進捗を管理するためのツールとしての登場です。つまり、民間企業 の持続可能性を保つために、チェック項目といってもいいかと思います。

2.自治体におけるKPI概念の登場と必要性

 自治体計画におけるKPIは、2015年の地方創生施策で登場しました。この登場がミソなのです。それまでも2000年前後から地方自治体の総合計画等において数値目標が登場してきました。その意味では、施策単位での成果の管理は従前もあったといえるかと思います。

3.数値目標とKPIとの違い

 数値目標はあくまでの目標に対する進捗率で管理になります。施策・事業それぞれの進捗を把握するための手法として開発されてきたことに起因します。しかし、KPIは、論理体系上の上位概念(施策目標)を達成するための手段としての開発されてきた概念です。

 民間企業では持続可能性を担保するためのアイテムとしてことが代表的な事例です。では、行政計画における最上位価値とはなんであるか、このことを中心に整理していきます。

4. 行政計画におけるKPIの課題 その1 施策目標設定

 一つ目の課題は、施策目標設定の根拠が曖昧なことが多いことです。そのため、事務事業一つ一つの体系上の実施理由が不明なります。

 論理のスタイルでいうと演繹的手法をとりながら、前提が曖昧なために、施策目標が前例踏襲かつ補外的なものになります。

 自治体における最上位な政策目標を、住民の福祉向上及び向上させることの出来る持続可能な組織と暫定的とします。その上で、この目標を前提として、KPIを設定する上で前提になるのは、施策目標及び数値の妥当性になります。まず、ある施策目標を取り上げるということは、政策体系全体になにかしらの影響があると想定できます。また、施策目標の数値の根拠も、これまでの数値の上下の比例式によって、第一義的には想定できます。

 しかし、机上はそうなのですが、多くの自治体における総合計画等での目標設定の根拠はそれほど強くないと思います。なぜならば、持続可能性に関する議論は、総合計画における財政見通し以外、ほとんど存在しないからです。結果、前例踏襲、つまり、演繹的かつ補外的なスタイルで選定されることがほとんどになります。コントロールするアイテムとしてのKPIの前提はたえずチェックしていく必要性があると言えます。

5. 行政計画におけるKPIの課題 その2 KPIの失敗分析

 二つめの課題は、KPIの失敗から事業〜施策全体を改善できないことが多いことです。論理のスタイルで言えば帰納法的手法をとりながら、帰納法的分析から潜在的な課題を発見出来ないことです。

 まず、KPIの失敗には二つの意味があります。一つめはKPIそのもの進捗率、二つめは施策目標への貢献率です。一つ目は従前の数値目標の延長線といってもいいでしょう。効率性の議論になり、最終的には成果の単価当たりのコストの比較というところに落ち着きます。

 そして、問題は二つめの施策目標への貢献度です。KPIが目標を達成せず、かつ、施策目標が達成した場合はどのように判断すべきなのか、もっと深刻なのは、KPIは達成したが、施策目標が達成しなかった場合です。どのように判断すべきなのか。二つの課題が想定できます。(1)施策目標をとりまく社会構造を分析しなかったので、施策として打開すべき状況が不明、(2)構築する際のKPI設定に妥当性が薄かった。結果として、隠されている、見えていないであろう原因を発見出来ない、推論出来ていないと言うことになります。

6. 暫定としての結論;自治体経営の持続可能性を担保するためのアイテムとしてのKPI

  つまり、KPIを設定するということは、住民の福祉の向上へ向けた自治体経営の持続可能性が高まるということが前提になります。しかし、多くの自治体では持続可能性を高めるためにはどんなKPI、どのように設定すべきかという分析及び議論が少ないのが実情です。

 その結果、そもそもの前提が薄いもの、政策体系としての論理が薄いものになってしまいます。このことは、政策・施策・事業それぞれの隠された、未だ発見出来ていない課題を発見出来ず、政策・施策・事業の改善が難しいことを意味します。 論理的には、仮設的推論が必要になり、潜在化した論理のセットを発見出来るスタイルを検討すべきです。

 7. 社会工学のツールとしてのKPIの再生

 そうなるのかどうすべきなのか、問いへの暫定な答えは以下です。

(1)住民の福祉向上へ向けた自治体の持続可能性を損ねている原因を分析し直すことが必要
(2)論理のスタイルを演繹−帰納のスタイルを乗り越え、仮説的推論のスタイルを構築すべき
(3)つまり、行政学的な意味でのKPIから、社会工学的な意味でのKPIに転換していくことが必要

(了)

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政策プランナー細川甚孝の活動ノート
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