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【備忘録】成果を生み出す人材を定義する: 実践!チームマネジメント研修② 人を育て、人を活かす 実践シリーズ


(1)優秀な人材とは?

成果を生み出す組織の条件

講師は、成果を生み出すための組織の条件について語る。

「人材のレベルが同じであれば、やらないよりはやったほうがより高い成果が出せる。つまり、一人一人の人材レベルが上がれば、より高い成果が生み出せる。」

この前提に基づき、講師は最後に重要なテーマとして「成果を生み出す人材の育成」について言及する。

『成果を生み出す人材』とは?

「成果を生み出す人材を育てるには、まずその定義をしっかりと言語化する必要があります。さらに、その人材のレベルをきちんと尺度化することも重要です。レベルの高い人材や優秀な人材という表現は、人によって捉え方が異なるため、共通の理解が必要です。」

講師は、具体的なやりとりを挙げて参加者に問いかける。

「では、成果を生み出す人材とはどのような人物でしょうか?皆さんが新入社員の採用に携わると仮定します。どのような面接を行い、どのような人物を採用しますか?」

人材育成の具体例

参加者同士の議論を通じて、多くの場合「自分で考え、行動できる人材」が成果を生み出す人材のイメージとして浮かび上がる。

「こうやって議論を進めることで、より具体的なイメージが共有できるようになります。」

このように、講師は具体例を交えながら、成果を生み出す人材育成における要点を提示している。

自分で考え、動ける人材とは?

「自分で考えて、動ける人材、それを整理するとこうなる、という絵柄です。」と講師は語る。

以前は、「優秀な人材」とは、知識や経験が豊富で、頭が回り、会議で多く発言する人物とされていた。

しかし、その中には、評論家タイプのように発言はするが自分では何も行動しない者も多かった。

高度成長期と行動しない人材

高度成長期には、業績が良く、何をしても成果が上がる時代だった。

このため、たくさん発言する人が「優秀だ!」と評価されることが多かった。

しかし、バブル崩壊後、業績が右下がりの時代になると、発言するだけで行動しない人たちの「メッキがはがれて」いった。

「言ってるだけじゃなく、オマエがやってみろ!」と求められる時代へと変わっていった。

次のステップ『行動化』

次の時代では、能力があるだけでは評価されず、それを行動に結びつける力、つまり『行動化』が求められるようになった。

「行動化」には、自分で動くだけでなく、他者を動かして目的を実現する力も含まれる。

気合や根性だけでは不十分

「がむしゃらに動く人が増えましたが、気合と根性で動いたところで、成果につながらなければ意味がありません。」と講師は述べる。

気合や根性だけでなく、思考や知識、経験をもって、成果に結びつくまでPDCAを回すことが重要である。

求められる人材要件

「現在求められている人材は、能力を持ち、それを行動に移し、成果に結びつける人材です。」

能力があっても、行動に移せない人、行動しても成果につながらない人は評価されない。

すべての要素を満たし、結果として成果を生み出せる人材が、今の時代に求められる。

企業の評価制度の変化

以前は、論理的思考力やコミュニケーション力、英語力といった個々の能力要素を評価するのが一般的だった。

しかし、行動に移し、成果を出すことが求められる時代になると、評価制度も変化していった。

(2)優秀な人材の見極め方 ~人の見方の変化~

能力は組み合わせて発揮される

講師は、「能力を行動化する際には、それは個別に発揮されるものではなく、組み合わせて発揮される」と強調する。

たとえば、コミュニケーション力についても、単に話が上手いだけでは成果にはつながらない。

人を説得して同意を得るためには、情報収集力や論理的思考力、資料作成能力、話の構成能力、そして話し方の技術など、複数の能力が組み合わさる必要がある。

組み合わせる能力と成果の関係

講師は、「能力は期待される成果によって組み合わせが異なる」と語る。

ある場面では少ない能力の組み合わせで成果が出せる場合もあれば、複雑な課題解決には多くの能力を組み合わせる必要があることもある。

重要なのは「どんな成果を出すことが期待されているか」であり、プロセス自体ではない。

例:クレーム対応における成果の違い

クレーム対応の場面を例に、成果の出し方は人によって異なる。

論理的に説明して相手の理解を得る人もいれば、共感を示し、謝罪して心情的な働きかけで解決する人もいる。

どちらの方法が良い悪いではなく、求められる成果が同じなら、どちらのアプローチでも構わない。

評価項目の変化

講師は、「評価項目が能力側ではなく、成果側で設定されるべきだ」と述べる。

「論理的思考力」や「わかりやすく説明する力」といったプロセスではなく、「相手の納得を得る力」というように、成果を基準にした評価が求められる。

使う能力や方法論は個々人で異なっても、成果さえ同じなら評価されるべきだ、という考えである。

講師は、「成果を生み出す人材」とは単に高い能力を持っている人ではなく、持っている能力をうまく組み合わせて行動に移し、期待される成果を生み出せる人だ、と強調する。


『成果の再現性』とは?

「成果の再現性」とは、成果を繰り返し生み出すことができるかどうか、または同じ成果を再現する可能性が高いか低いかを示す考え方である。

講師は、結果や成果が出たこと自体と、その成果がその人の実力によるものかどうかは別問題であると指摘する。

たとえば、その人が自分の能力をうまく組み合わせて行動し、成果を出した場合、その成果の再現性は高い。

一方、たまたま運が良かったり、上司や先輩の支援が大きかった場合、その人が同じ成果を再現する可能性は低い。

成果の再現性と評価のアプローチ

講師は「能力→行動→成果」という図表の「能力→行動→」にポインターを往復させながら、「この部分が大切になるわけです。」と強調する。

成果自体を確認することは重要だが、それだけに焦点を当てると、その成果が再現性のあるものかどうかわからない。

そのため、「どのように能力を組み合わせて発揮し、どんな工夫をしたか」を振り返り、成果とそのプロセスを一緒に評価することが必要である。

つまり、評価のアプローチは「単に結果や成果を評価するだけではなく、その成果を生み出すプロセスを重視し、今後も同じ成果を出す力があるかどうかを評価する」というものである。

(3)客観的な人材の見極め方

人材の『成果を生み出す力』の評価方法

講師は、「成果の再現性」という考え方を紹介した上で、人材の「成果を生み出す力」を論理的・客観的に評価するアプローチについて話を進める。

まず、人材育成の第一歩として、現在の自分や部下の「現在地」を確認することが重要である。

スタートラインを確認しないと、どこをどのように伸ばすべきかがわからなくなるからである。

『場面特異性』とは?

講師は、評価の際に「場面特異性」という要素を確認する必要があると強調する。

「私たちの能力や性格、動機づけなどは、常に一定して発揮されるわけではありません。」と述べ、場面ごとに能力の発揮のされ方が変わることを説明する。

たとえば、リーダーシップを発揮する人が、仕事の場面では同じように行動するとは限らない。

これを「場面特異性」と呼び、評価する際にはその点を考慮する必要がある。

典型的な例:新入社員研修

講師は、新入社員研修の現場でよく見られる「元気がない」という典型的な問題に触れた。

採用担当者が、新人が研修中に元気がないことを心配するが、面接時には積極的で元気があったと感じていることを指摘する。

しかし、これは「場面特異性」によるものであると講師は説明する。

「採用面接という場面では、新人は積極的に見せようと行動するが、研修の場面では、協調性や学ぶ姿勢を重視して行動するため、元気さが見えにくくなる」との解説がなされる。

場面ごとの認識と評価

このように、場面ごとに人がどのように能力を発揮するかは、場面の認識や意図によって変わる。

そのため、「場面特異性」を無視して評価すると、その場その場の印象で評価がぶれてしまう可能性がある。

講師はこの点を強調し、「場面特異性」を考慮して人を評価することの重要性を説いている。

「この場面特異性を踏まえると、客観的に評価をする上での二つ目のポイントが出てきます。」

『過去の事実→成果の再現性 ※やればできる、に要注意!』

人材評価や育成における限界

講師は、場面特異性を考慮すると、人材の評価や育成には限界があることを説明する。

「その人が職場において、どの程度の能力を発揮し、行動して成果を出せるかは、実際にそういう場面に直面しないとわからない。」と述べる。

そのため、過去の似たような場面でどのように能力を発揮し、行動し、成果を出したかを根拠に、今後の成果を予測するしかない。

新卒採用における悩み

参加者からの質問により、新卒採用における悩みが浮き彫りになる。

「大学生の採用面接では、ビジネスの経験が少なく、学業やサークル、部活動などの実績しかわからない。これでは、会社に入ってからの成果を予測するのが難しいのではないか?」という問いに、講師は次のように回答する。

学生時代の実績とビジネスでの成果

講師は率直に、「学生時代の学業やサークル活動、体育会の実績が、会社に入ってから同じように成果につながるかは未知数である。」と答える。

しかし、それでも採用面接が無意味ではない。

「結局、社会人でも同じ場面で仕事をすることは少ない。だから、場面の類似性に着目する必要がある。」

場面の類似性に基づく予測

講師は、たとえばコンサルティング会社で中途採用の面接をする場合、同じ業界から来た経験者であれば、会社での適応を予測しやすいが、全く異なる業界からの応募者では予測が難しくなると説明する。

「新卒採用の場合は、そもそもビジネスという場面ですらないため、予測がさらに難しくなる。」と続ける。

新卒採用におけるアプローチ

講師は、活動していた場面が異なる相手に対しては二つのアプローチを取ることを示唆する。

詳しい内容は後に解説するが、参加者の悩みに対してはこの場である程度解決策を示すことを約束する。

『1.消去法(逆説)で捉える』
『2.分解して捉える』

『消去法(逆説)で捉える』
消去法(逆説)で捉える採用アプローチ

講師は「消去法でとらえる」とはどういうことかを説明する。確かに、学生時代の活動と社会人のビジネス場面は異なるため、学生時代に成果を出していたとしても、必ずしも会社でも同じように成果を出せるとは限らない。

しかし、逆に考えると、学生時代の活動すら自分で考えたり、工夫したりして成果を出した実績がない人が、社会に出てから急に自発的に考え、工夫して成果を出すことができるかというと、期待できないだろうという論理に至る。

「サークルやアルバイトなど、比較的簡単な取り組みですら、自発的な動きや工夫がない人が、社会人としての複雑な仕事において、突然自ら考え、成果を出すことは難しいでしょう。」と述べる。

逆説的な予測の考え方

この消去法のアプローチは、「自力で成果を出す力を持った人を探す」のではなく、「自力で成果を出した実績がない人を振り落としていく」という発想に基づく。

つまり、学生時代の活動の場面とビジネスの場面が違うにもかかわらず、少なくとも自分で考え、工夫して成果を出した実績がある人は、場面が変わっても同じようなアプローチで成果を出す可能性が高いとされる。

そのため、学生レベルですらそういった実績がない人は、社会に出てから大きく変わることが期待できないとして、選考から外していく。

例外的な人材についての質疑応答

参加者から「学生時代に自ら考えた経験がなくても、社会に出てから大きく変わる人もいますよね?」という質問が投げかけられる。

講師はその質問に対し、「確かに、そうやって大きく成長する人もいます。」と認める。しかし、「それは予測することが非常に難しい」とも述べる。

「人が変わったように成長することはよくありますが、それを事前に見分けることはできません。本人自身も気づかないことが多いからです。」と説明し、面接や試験で見分けようとすると、根拠のない推測になってしまうため、リスクが高い採用プロセスには適さないと述べる。

人材育成にも関連するアプローチ

この質疑応答は、後に説明する「人材の育て方」にもつながる。

たとえば、今の仕事で努力しても成果が出ない部下がいたとしても、その人が他の場面では大きく成長する可能性を考慮する必要がある。

講師自身も、商社の営業では大きな実績を出せなかったが、コンサルタントに転職したことで成功したという実体験を挙げ、「一つの場面で成果が出ないからといって、その人の全体的な可能性を否定してはいけない。」と結論づける。

『2.分解して捉える』

学生の活動とビジネスの類似性

講師は、「取り組みレベルで見ると、確かに学生の活動とビジネスの場面は大きく異なる。」と認めつつ、その取り組みを分解すると、意外とビジネスとの類似性が見えてくると説明する。

たとえば、『学園祭において、サークルで屋台を出した』という事例がある。

一見すると、学園祭での屋台出店は社会人のビジネスとは無関係のように思えるが、これをプロセスで分解すると、ビジネスとの共通点が浮かび上がってくる。

学園祭の屋台出店をビジネスに置き換える

講師は、この事例をさらに分解し、具体的なプロセスを順に説明することで、学生の活動とビジネスの場面の類似性を示す。

「たとえば、学園祭で屋台を出すには、まず企画を立てなければなりません。どんな商品を提供するか、どうやってお客さんを集めるか、どれだけの売上を目指すか。これはまさにビジネスでの企画立案と同じです。」

さらに、実行段階では、必要な材料を手配し、メンバーと役割分担をし、当日の運営を進めるなど、ビジネスでのプロジェクトマネジメントに通じる要素が多く含まれることを強調する。

学生の活動とビジネスの具体例

講師は、ある学生のインタビューを紹介し、学生の活動がビジネスに応用できるかどうかを考察する。

例として『学園祭でサークルの屋台を出した』という取り組みを挙げ、これだけ見るとビジネスと大きく異なるように思えるが、プロセスを分解してみると、ビジネスに通じる要素が多く含まれていることを説明する。

屋台出店のプロセス分解

この学生は、まず禁止されていた屋台出店を実現するために、消防法を調べ、市役所や保健所に行って必要な体制を確認した。また、学校周辺の飲食店にもヒアリングを行い、消防車や衛生管理のための設備を整える必要があることを把握。

その上で、消防車の常駐や冷蔵庫の設置などにかかる費用を計算し、7軒以上の屋台が集まらなければ赤字になることを理解した。そして、打ち上げの費用も考慮し、12軒の屋台を集めるために、サークルの信頼できる団体をリストアップし、ルールブックを作成して出店を呼びかけた。

最終的に9店舗を集め、残り3店舗は学食と大学生協の協力を得て確保し、12店舗での運営を実現した。

成果の再現性の予測

このプロセスをビジネスに置き換えると、学生が自ら調査し、計画を立て、関係者を説得し、実際に成果を出した一連の取り組みが、ビジネスでの企画立案やプロジェクト管理に通じることがわかる。

「確かに実際のビジネスとは違う部分も多いが、こうして分解してみると、この学生が自分で考え、判断し、行動して成果を出したことがわかります。このような実績がある人であれば、ビジネスの場面でも同様に成果を出す可能性があると予測できるのではないでしょうか?」と講師はまとめ、学生の活動からビジネスへの応用可能性を示した。

「いろいろと話を膨らませてきましたので、『成果を生み出す力』の定義と、その見極め方について、いったんここでまとめてみましょう。」

成果を生み出す力の本質

講師は、ビジネスの世界での「成果を生み出す力」とは、知識や技術、経験の多さといった「どれだけ持っているか」ではなく、仕事の場面でそれを「どれだけ発揮し、行動に移せるか」にかかっていると強調する。

ここで重要となる二つのキーワードが紹介される。

キーワード1: 場面特異性

「場面特異性」とは、どんなに素晴らしい能力を持っていても、それが特定の場面で発揮できるかどうかが変わるということを意味する。

この特性を考慮することで、その場の印象に左右されず、客観的な評価や人材の見極めが可能になる。

キーワード2: 成果の再現性

「成果の再現性」とは、過去の行動実績を基にして、今後も同様に成果を出せるかどうかを予測する考え方である。

「どんな場面で、どのように考え、行動し、どのような成果を生み出したか」という過去の実績情報を根拠として、同じような成果が再び得られる可能性を評価する。

次のステップ: 人材評価と育成

講師は、この「成果を生み出す力」の定義に基づいて、具体的な評価・分析の方法、そしてその力をどう育てていくかについて、これから詳しく説明することを予告している。


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