『藤の花』休薬期間中。72日目
普段の私のツーリングは、例えば日光方面を通り抜けるなら。朝5時くらいには出発する。でも、今回はちがう。うん、今回だけではないかも知れない。もう、変わらなければならない。今日は、のんびりした時間の出発だ。朝の、通勤時間が終わった頃の9時だっていい。17時に中里に辿り着ければ良いのだ。
こういった基点を作ったツーリングは、東北や北海道ではよくやっていた。でも、こんな隣県に基点のホテルを作って利用してのツーリングは、初だ。新潟は隣県とはいっても、一山越えなければならない。栃木や埼玉のように気軽にはいけない。気軽に通年往来できれば上州群馬県は、間違いなく上杉謙信の領地だった。だから、新潟。福島。この辺りのツーリングは楽しいのだ。植生も違うのだろう。景色がいい。
私はバイクで走っている最中に観る、新緑の山から垂れ下がる藤の花が好きなのだ。あれ程綺麗なものはない。こともない、な。今の時期に咲いているだろうか。5月の始めには咲いているはずだ。私は野趣あふれる山から垂れ下がる藤の花を愛でたい。道の脇にバイクをよせて、おにぎりも食べたい。熊鈴をチリンチリン鳴らしながら。
キャンプツーリングでもないので、熊鈴を持っていくつもりもなかったのだけれど。持って行こう。新世代熊には会いたくない。ツキノワグマなら倒す自信はある。嘘だ。逃げ切れる自信はある。ただ、急襲されたら危ない。「やーやーやーっ、とーとーとーっ」、頭の中のシミュレーションは終えている。万全だ。
さて、私はいままで、バイクは少しだけ無理をする乗り物だと思っていた。『無理』という語には幅がある。そこは、想像してもらいたい。少し『無理』をしてこそ面白く、また成長があるのではないか。そんなふうに考えていた。少しの『無理』があればこそ、大人が子どものようになり、子どもが大人になるのだろう。その、考えはとうに捨てた。人様に迷惑をかけたくない。『無理』はしない。ただ、野糞はするかもしれない。そんなとき、ツキノワグマに急襲されたら、どうやって逃げるのだ。だから食事も『無理』をしない。小食でいこう。
私は、今のところ元気で、自分の事を自分で処理できている。今のところは、だ。バイクには、最後の最後まで乗り続けたい。だから『無理』はしないと決めた。
私の二十年来のモットーは『さわやかにかけぬけるようにあきらめる』だ。その、モットーを具現化できる年齢になった。ところで、モットーって何語ですか。ちょっと調べます。ふむ、ラテン語から派生したイタリア語だそうだ。
『座右の銘』だと、文章が重くなるので、イタリアありがとう。宝くじが当たったら、『ドゥカティ』を買おう。まず、宝くじを買おう。