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心が温まった認知症の知識

先日記事に書いた「公民館大掃除 ちりとり事件の日」には、いろいろなことを学ばせてもらいましたが、さらに新しい学びがありました。

大掃除の最後、地域の人権教育としてDVD鑑賞をしたのです。
もともとは「SNSにひそむリスク」というタイトルのものが用意されていたそうですが、

チラッとみたら、アニメだったから

という館長の計らいで(?)「認知症の人との関わり方」のDVDに変更されました。

その場にいる人の中では比較的若い世代の私(45)にとっては、タイムリーな有益情報でした。

両親は75歳と79歳。
今のところ元気です。コロナで一年以上会っていないけど、会いに行くのに最短で3時間半。近距離でも遠距離でもなく、中距離程度かな。微妙な距離です。

両親のどちらか、または両方がもし認知症になったら???介護が必要になったら?なんの人生設計も出来ていません。自分と自分の家族のことで精一杯。

よく見聞きする、ものすごく身近な不安ではあるけれど、私にとっては「まだまだ」と思ってしまう遠い存在だった「認知症」という言葉。

認知症の人に出会った時、あなたならどんな行動をとりますか?

と、DVDがはじまりました。神奈川の逗子に住んでいた約10年前、出会ったことがあります。3歳の娘と保育園から帰り、駐車場に車をとめてさあ玄関へ・・・とその時、手ぶらで身軽なおばあさんが、家の前にポツンと立っていました。

山の上の住宅街。歩いているのはご近所に住む人ばかり。と言っても冬の夕方だったのでほとんど誰もいない。寒いのに、おばあさんは上着を着ていなかったと記憶しています。

目があったので、「どうしましたか?」と声をかけてみました。おばあさんは不安そうな顔をして

ここはどこですか?家に帰りたいのですけど・・・

と、そのDVDで見た光景、セリフ、ほぼ一緒でした。私のとった行動は正解だったのか??DVDでは、プログラムの編成上、答えは最後。じゃ、私も記事の最後にしておこう。

いつもおっちょこちょいの母と重なり(まだ認知症ではないけど)、映像の中の場面ひとつひとつが心に響きました。知っているようで知らなかった。じっくり知ろうともしなかった。偶然にもこうやって認知症に関する内容を見ることができて、本当に幸運でした。

自分ごととして考える、って本当に難しい。いざ、その時、自分はどんな行動をとることができるか。

一番よくイメージされやすいのが、記憶障害。この高齢化社会。もう常識なのかもしれないけれど、私のようにまだまだ身近に感じられない人は多いかもしれないので、書いておこうと思います。

・つい最近の出来事など、新しい記憶から消えていく
・昔に戻り、その時代を生きている
・その時代に生きている本人にとっては、それが現実
・そこに合わせてあげる演技も必要

「その時代」がいつかは分からないけど、もしそれが本人にとって一番幸せな時代なのだとしたら……と考えると、何だかポッと心が温まった気がします。

もし母が認知症になってしまったら、いつの時代に戻るだろう?せめて、私たち3兄妹が全員反抗期の暗く冷たい時代には戻らないで欲しい。

子育てに置き換えてみると、子どもは「今」しか生きていません。将来も過去も考えない、「今」が子どもにとっての現実。演技という言葉はなんとなくネガティブに聞こえるけれど、そこに視点を合わせた言葉かけをすることは、認知症の方々と話す時にも似たような感覚なのかなと想像しました。

・体験した事自体を忘れる
・体験したことをすぐに忘れる

そして何より知れてよかったと思ったのは、

やりとりや言葉は覚えていなくても、受けた感情は覚えている。怒り、圧力、怖い、など。その人を恐れるようになる。

とのこと。はい、こちらも子育てによーく当てはまりますね。

その他にも、「大人としてのプライドは持っているから、子供扱いはしないこと。」など大切な情報盛りだくさん。

「介護の世界では当たり前に言われていることですが」と前置きしてから、

強い感情で対応すれば強い感情で返ってくる。優しい対応をすれば穏やかな対応で返ってくる。

これは人間関係、どんな場面でも言えることですね。

イライラして息子に強く当たると、ギャーっ!と強い感情が返ってきます。たとえ言葉にされなくても、恐らく心の中に「恐れ」とか「怒り」などの強い負の感情が芽生えてしまうと思います。

10年前、住宅地で出会ったおばあさん。

ここはどこですか?家に帰りたいのですけど・・・

というセリフをもし今聞いたら、すぐに「認知症」という言葉が頭に思い浮かんだかもしれない。けれど、あの時はすぐには出てきませんでした。

しばらく「住所はわかりますか?調べてみましょうか?」とか聞いてみたり、娘とおしゃべりをしてくれて、「保育園から帰ってきたところなんですよ」とか、「今日は寒いですね」とか「お嬢ちゃん、かわいいねえ」など会話をしていました。

おそらく1分くらいしか経っていないだろうけど、やっと「もしかしたら家への帰り方が本当にわからないのかも」と思い始め、「一緒におまわりさんに聞きに行きましょうか。」と話し、車に乗せて、そこから車で数分の交番まで送り届けました。

その後はどうなったのか分かりません。でもこの行動は、DVDの最後と同じ。

・警察を呼ぶ
・交番に連れて行く

正解でした。状況によっても異なると思いますが、基本的にはこれで良いそうです。

家族がきっと待っていただろうな。車で警察に連れてきちゃったけど、もしかして家のすぐ近くで探していたらどうしよう?ものすごく心配していただろうな。すぐに連絡が取れたかな?

あの時心配したけれど、「警察は、地域のあらゆるSOSとネットワークでつながっています」とDVDの映像。ホッとしました。

そして、「あのおばあさんはあの時、ご自身のどんな時代を生きていたのかな」と想像しました。

この日、認知症について学んだことは、ほんの一部だろうし、その一部を見ただけで経験のない私はこんなふうに楽観視してしまいます。実際は忘れられてしまう悲しさとか、そういう本人とのやりとりなど、想像も出来ないほどのいろいろな葛藤や苦労があるのだろうな。

私は何か心にとめておきたい、覚えていたいと思ったら、すぐにメモするようにしています。たいていiPadのEvernoteですが、ない時はスマホで。

公民館の部屋で熱心にDVDを見ていた私の隣には、80代くらいのシャンとしたおばあさん。

私がスマホをいじりながらDVDを鑑賞しているのがどうやら気に入らないらしく、ブツブツと「今どきの子は」と聞こえてきました。

もしかしておばあさん、平成の時代あるいは昭和の時代を生きてる??

と勝手に思いました。温まった心はそう簡単に冷えることもなく、そんな言葉も全く気にならないのでした。

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