【春橋哲史】フクイチ事故は継続中②
汚染水「タンク用地確保」の具体策
連載第1回に続いて、東京電力・福島第一原子力発電所(以後「フクイチ」と略)で増え続けている汚染水の問題を取り上げます。
私は、ALPS(多核種除去設備。※1)の除去性能や、二次処理・希釈処理の有無に関わらず、フクイチで発生している汚染水は「核災害の現場で発生している放射性液体廃棄物」であり、「タンク保管を継続すべき」という考えです。
とは言え、約350万平方㍍のフクイチの敷地にこだわる限り、何れは物理的な限界に達します。何らかの工夫で敷地内に用地を確保できたとしても、「終わりを1年程度延ばす」だけだと思います。
では、新たなタンク用地をどこに確保すべきでしょうか?
添付の図面が、用地確保に関する私案です(フクイチの敷地を南側=大熊町側=に拡張。この案はALPS小委の公聴会にも書面で提出しました)。
この案を現状で最適と考える理由を列挙します。
①既存のタンク群・水処理設備と接続可能。
②工期が最短。
③新たなタンク用地を整地する過程で発生する土壌や伐採木は、フクイチで保管・処理できる。
④該当の土地は「中間貯蔵用地」として確保・又は確保予定(※2)。土地の利用目的を転用することで対応可能。
⑤タンク用地をまとめることで、タンクの集中管理が可能となり、管理のリソースを効率化できる。
実行に関する課題と対処方法は、以下を基本とすべきと考えます。
1、地元自治体や地権者との折衝には東電の社長・会長や、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)が自ら対応する。
2、貯留期間は、トリチウムの放射能量の自然減衰(※3)を待つことを基本とし、並行して分離技術・圧縮技術の研究開発も続ける。
3、土地を長期賃借・又は購入するかどうかは交渉次第だが、国費投入は厭うべきではない。但し、国費を投入する場合でも、教育・社会保障の予算は削減しない。
4、関係法令の改正等が必要な場合は、内閣が責任を持って国会に案を提出する。
5、確保すべき面積や設置する溶接タンクの容量は、汚染水の発生量予測、台風等のリスク対応分、工期の合理化、将来的なタンクリプレースの工程管理の観点等から、公開の場で議論して結論を得る。但し、将来の敷地拡張の余地は残しておく。
6、保守要員の被曝線量の低減、漏洩時のリスク低減の観点から、貯留水に含まれるトリチウム以外の核種の濃度は可能な限り低減させる。
1に関してですが、東電の社長・会長や内閣総理大臣は、地権者や地元自治体等の関係者の所に何度でも足を運び、頭を下げ、土下座してでも頼むべきです。フクイチを管理・運営し、利益を得ていたのは東京電力ですし、規制していたのは国(行政)です。そのトップであるなら、核災害で発生した放射性廃棄物について、保管の方法を最大限に追究する義務が有ります。言葉は悪いのですが、環境中への放出で決着を図ることは「義務逃れ」「逃げ得」「核災害起こし得」になります。
尚、私は自分の案にこだわるものではありませんが、フクイチ北側の敷地や、福島第二原発等の遠隔地での用地確保、洋上・地中貯留は合理的でないと思っています(別表のまとめを参照)。
フクイチの収束作業は残念ながら、終わりが見えず、今後の放射性廃棄物の発生総量も確たる予測がつきません。だからと言って、「物理的な限界」を、廃棄物を環境中に放出する理由にすべきではないのです(繰り返しですが、そのような決着は「逃げ得」になります)。
フクイチの収束作業や廃棄物管理は「逃げ得を許さない」ことを大前提として、携わる人数や被曝線量を極力減らし、廃棄物の増加量を抑制し、工期も短縮し、将来的な負荷も考慮した「合理的」な方法が採られるべきです。
※1
「Advanced Liquid Processing System」の略。
※2
中間貯蔵用地の全体面積は約1600万平方㍍。20年3月末時点の契約済み面積は1164万平方㍍(環境省のWebサイトより http://josen.env.go.jp/chukanchozou/about/)
※3
トリチウムの半減期は約12・3年。約25年間で放射能量は約4分の1になる。
春橋哲史
1976年7月、東京都出身。2005年と10年にSF小説を出版(文芸社)。12年から金曜官邸前行動に参加。13年以降は原子力規制委員会や経産省の会議、原発関連の訴訟等を傍聴。福島第一原発を含む「核施設のリスク」を一市民として追い続けている。