【エッセイ】 白い雲のように
大学生の頃、ギターを少しかじった。
最初の練習曲は、コードが簡単だからと人から勧められた、猿岩石の『白い雲のように』だった。
「コードが簡単」だったはずだが、すぐに挫折した。
理由は明白だ。
基礎がないのに独学でやろうとしていた。
その後も相変わらず音楽を聞いたり歌ったりするのは好きだった。
英語教師になり、ギターを弾ける他の先生に頼んで伴奏してもらい、授業で英語の歌を生徒と歌うこともあった。
いつか自分で弾いてみたいという思いはふつふつとあった。
その思いを、3年前やっと行動に移せた。
「ちゃんと」習おうと決心し、ギター教室のレッスンを申し込んだ。
「何が背中を押した?」と聞かれたら、豪雨による災害で、家族が亡くなったことが大きい。
何か打ち込めるもの、気が紛れるものを探さなければ、心が押しつぶされそうだった。
ちゃんと習えば、それなりに弾けるようになってきた。
一つコードを覚えたら、また別のコードを覚えたくなった。
人前で弾く機会も出てきた。
人前で弾く最初の曲は『白い雲のように』と決めていた。
点と点がつながるような気がした。
指の動きはまだぎこちないけど、弾ける曲はまだ少ないけど、少しずつライブにもお邪魔してみたい。
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