1972年ってどんな年!? 音楽で50年前を振り返る、NHK-FM「ウィークエンドサンシャイン サマースペシャル2022」
いつもお話を伺っている『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター』の著者 藤田正さんが、NHK-FM「ウィークエンドサンシャイン」に2022年8月6日(土曜・午前7時20分~:DJピーター・バラカンさん)にゲスト出演します。
同番組恒例のサマースペシャル2022は、いまから50年前の「1972年」を振り返ります。このnoteでは番組のスピンオフとして、1972年、音楽界隈をもアツく興奮させた2本のブラック・ムービーについてご紹介していきたいと思います。
NHK-FM 「ウィークエンドサンシャイン」2022年8月6日午前7時20分~11時50分放送。番組終了後、1週間は「NHKラジオ ラジル☆ラジル」で、放送を聴くことができます(8月13日午前11時50分に配信終了/「聴き逃しはこちら」をクリック)。https://www4.nhk.or.jp/sunshine/
ーージャーン! 今年もやってきました! NHK-FM「ウィークエンドサンシャイン」のサマースペシャル。昨年に続いての、ゲスト出演ですね。そして、4時間半ぶっ通しで語り尽くすという。
藤田 そう、ぼくは、4時間半の放送の後半に出演する予定です。ピーターさんとの話は、つい、語り出すと止まらなくなっちゃう。さて、本番はどーなることやら。
ーーで、1972年です。日本では、あさま山荘事件があり、沖縄が日本に返還されたり、札幌でオリンピックが開かれ、中国と国交を回復して、パンダが上野動物園にやってきました。ざっと振り返っても、いろんなことがあった年でした。
藤田 アメリカではなんといっても、ウォーターゲート事件、ニクソンが退陣した。あと、ミュンヘンオリンピックでの人質事件もあった。
ーー音楽的にもスゴイ年だとは思うんですが、それは番組を待つこととして。ブラック・ミュージック好きの藤田さんとしては、映画方面でも忘れちゃならない、重要作品が公開された年でしたよね。
藤田 そう! ひとつは、ジャマイカ映画の『ハーダー・ゼイ・カム(The Harder They Come)』!
The Harder They Come(1972年)
監督・脚本・製作:ペリー・ヘンゼル 主演:ジミー・クリフ
「You Can Get It If You Really Want 」が流れる中、夢を実現しようとバスに乗って新天地を目指す主人公、アイヴァン。果たしてその結末は……。
――主演は、主題歌もうたっているジミー・クリフが務めています。
藤田 レゲエがどういう社会に生まれたのかを、映像ではっきりと教えてくれたジャマイカン・フィルムです。かつて実在したギャングスターの実話をベースにして、主題歌はもちろん、レゲエの名曲がたくさん使われてる。ただし日本では1978年に封切られた作品だから、時間的にズレがあるけどね。
――ジミー・クリフは日本でも人気があったと聞きますけど。
藤田 世界進出を狙ってボブ・マーリー(ザ・ウェイラーズ)の一歩先を行っていたのがクリフだった。彼はサウンドトラックにも収録されている「Many Rivers to Cross」とか、清廉で素晴らしい歌声の人です。ぼくは日本のホテルの一室で彼の手料理(いわゆる自然食の、アイタル・フード)を御馳走になったことがあるけど、この人が「あのキングストンのスラムを駆け抜けた主人公かぁ」なんて感激したことを覚えてる。
The Harder They Come(Original Motion Picture Soundtrack)
ーーえええ? ジミー・クリフの〈手料理〉をご馳走になったですって??? そういえば、以前、その話を聞いたことがあったような……。そして、もうひとつは……
藤田 『スーパーフライ(Superfly)』!!!
ーーどちらも犯罪もの。「良い子は見てはいけない」映画ですねぇ。『スーパーフライ』はストリートな、ブラック・イングリッシュにあふれてます。私も本作で、だいぶ「学び」ました。(笑)
藤田 この映画は、のちに「ブラックスプロイテーション (Blaxploitation)」という括り方をされるようになった一作で、このジャンルの中では全米で特別にヒットした作品です。語源となった「exploitation」だけど、これって「搾取」って意味でしょ。ぼくは嫌いです。別名「ブラック・パワー・ムービー」とも言われるけど、こっちのほうがずっといい。だいたい、映画にも出演しているカーティス・メイフィールドの素晴らしい歌声・サウンドに失礼だよ。
Superfly(1972年)
監督:ゴードン・パークス Jr. 主演:ロン・オニール
ロン演じる主人公、プリースト(Priest=牧師)が身を包む、むちゃくちゃイカしたファッションも見もの! 監督のゴードン・パークス Jr. は若くしてアフリカで飛行機事故で亡くなった。
――前年の1971年、ゴードン・パークス監督(黒人)による『黒いジャガー(Shaft)』が大ヒットしてるんですよね。
藤田 そう! 音楽はアイザック・ヘイズ。こっちも超・かっこええ! 『シャフト』は、名写真家としても知られるゴードン・パークス(息子が『スーパーフライ』のジュニア氏)がメガホンを取った映画なんです。
――このあたりのことは、クエストラブ(Ahmir "Questlove" Thompson/The Roots)の書き下ろした書籍『ミュージック・イズ・ヒストリー』(原題 Music is History)に、詳しく書かれていますね。
藤田 そう(ver.2)! 映画監督として、奇跡のドキュメント『サマー・オブ・ソウル』(2021年:原題 Summer of Soul (...Or, When the Revolution Could Not Be Televised.))でアカデミー賞&グラミー賞を獲得したばかりのクエストラブが、自分史と重ねた本を書いたんだけど、その翻訳本がこの秋にシンコーミュージック・エンタテイメントから発売になります。ぼくも森さんも制作に携わっているんだけど、相当にユニークで楽しい本です。
――The Rootsも来日するし! 『ミュージック・イズ・ヒストリー』は、別のnoteで紹介したいですね!
Superfly (Original Motion Picture Soundtrack)