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世界情勢コラム アルツハイマー病に対しての新薬

2021年6月8日のニューヨークタイムズを読むと、アルツハイマーの新薬を米食品医薬品局が承認したことが記事になっていた。しかし、新薬の効果や危険性については、十分に議論され尽くしていないと指摘している。

https://www.bbc.com/japanese/57394924

今日はそれについて取り上げたい。

「アストラゼネカの評判があまり良くない。次がモデルナ、ファイザーが一番信用できると」
「へえ」

こそこそ声でサラリーマンが話すのが聞こえた。その日のランチは喫茶店でハムエッグを食べてアイスティーを飲んでいた。外は晴れていた。梅雨前でムシムシしていたし、夏はもうすぐそこだった。

「もう私の母は病院でうけたみたい。熱が出るらしいのよ。他の人は高熱が出たって。でも、私の母は熱が出なかったから、それはそれで大丈夫なのか心配だって」

妻がそんなことを言っていたのを思い出した。コロナのワクチンは治療薬ではない。コロナウイルスを治療してくれるわけではないというのも気になる。コロナの治療薬はいつ出てくるのだろうか。

ニューヨークタイムズの、この記事はコロナウイルスではなく、アルツハイマーの治療薬についてだ。つまり、認知症のことだ。この認知症に効果がある薬が出てきたと言うわけだ。バイオジェン社の株価が急騰している。薬の名前はアデュカヌマブというらしい。

「ボケるのは怖い」

友人が昔言っていたセリフを思い出した。人間は健康で長生きしたいという欲望を持っている。病気を克服することは人類の夢だ。誰もが待ち望んでいる。アルツハイマーもそうだし、癌もそうだろう。不治の病が治るようになれば、それだけ大切な人を失う悲しみや、自分自身が死んでしまう恐怖からも逃れることが出来る。不老不死は究極の夢でもある。誰だって死にたくない。

アルツハイマーの患者はアメリカで600万人、世界で3000万人いるらしい。この病が治るとすれば画期的なことだ。だが、この薬の効果については、果たして充分な試験が行われているのか。十分なデータが揃った上での判断なのか。この点では、大いに疑問の声が上がっている。

バイオジェン社の株価は38%上昇して160億ドルの価値をつけたらしい。これで利益を得た者もいるだろう。売買が殺到することだろう。

午後、上司との話になる。コロナウイルスへの対応へ追われる。

「職域摂取はどんな風に進んでいくんだ?」
「大学や大企業ですよ。医務室とか産業医を抱えていて、施設を持っている企業が協力できますよ」
「早速対応していかなければいけないな」
「貸し出せる施設はどんなところがあるんですか?」
「いくつかあるだろう。総務と連携しないとならんよ」
「そりゃ大変ですね」
「引き続き情報出しをしてくれ。厚労省の動きはすぐに報告してくれ」
「了解」

会社に戻ればコロナワクチンの接種についてだ。このワクチンだって、一体どんな試験やデータによって効果が裏付けられているのかなんて、我々にはわからない。何事もなければ良いが、専門家でも何でもない我々は、ただ言われるがままに注射を打たれる。

新薬の承認に関する、監査や調査を担当するのは、当然、第三者ではない。米食品医薬品局が雇っているコンサルタントだ。また国際的な承認がおりているわけではないことも指摘されている。

どんなに、臨床試験をしていても、世の中に絶対などというものはない。データの信憑性など、本当に理解できる人間なんて、ほんのひと握りだ。そんなほんのひと握りの人間の判断で、何千万人という人間の命が左右されるのだ。なんだか不思議である。もしも、それが自分だったら。そんなことを考えると、妙な気分だ。幸いにして、私はそんな立場ではない。有難いことだ。

記事はこの米食品医薬品局の過去についても指摘している。2011年に乳癌に効果があるとして承認していた薬を廃止したことがあるのだ。承認した薬が高血圧や出血といった副作用を持っていたらしい。さて、今回のアデュカヌマブはどうなのだろうか。効き目がないというだけなら良い。むしろ、副作用が出るなら薬ではなく毒である。

コロナウイルスの職域摂取に関しての話は盛り上がる。

「しかし、企業への負担もありますよね」
「そもそも、誰がリーダーシップを取るんだ」
「既にアンケートがきてる企業もあるみたいですよ」
「連携してやるってことか?」
「しかし、注射を打つ人、管理する人、二回は打たないといけないみたいだから、取り違えが恐ろしいですよ。誰が責任もつんですか?」

医療と責任は隣り合わせだ。人の命を預かる仕事は責任重大だ。学生の頃に治験のアルバイトがあったのを思い出した。いわゆる人体実験の材料になる仕事だ。インターネットで求人を見ると、謝礼金で20万円が支払われるらしい。こういう試験を繰り返して、ようやく新薬というのは承認されていくのだろう。刺青タトゥーOKと書いてある。わざわざそんなことを大々的に求人に書くぐらいだから、この界隈に出入りする人間の素性が推し測られる。

何にせよ、我々は専門家という集団に人生を左右されていく運命を持っているのだ。慶弔関係には宗教関係者、教育関係では教師、病気の時は医者、トラブルが起きれば弁護士・・あげればきりがない。専門家とうまく付き合うことが人生を快適に過ごす秘訣であること。どうやら、これが人生における間違いの可能性を低くすることであることは確かだろう。

(了)

https://seikaminoru.com/withdrawal-of-army/

『世界情勢コラム アルツハイマー病に対しての新薬』

参考記事:
By Pam Belluck and Rebecca Robbins,”F.D.A. Approves Alzheimer’s Drug Despite Fierce Debate Over Whether It Works “, “The New York Times”, Published June 7, 2021,Updated June 22, 2021

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