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この手で人を笑顔にする
「ありがとう」この言葉をご利用者に言われると祖母を思い出します。
私は、元々福祉の仕事を目指していたわけではありません。祖母が調理師だったこともあり、祖母に憧れて幼いころから調理関係の仕事に就くのが夢でした。中学高校では、福祉とは関係のない調理と栄養学について学び、学校から帰ってくると祖母と夜ご飯を作る、それが私の楽しみでした。
「あんたは料理してる時が一番楽しそうやから、その手でいっぱいの人を笑顔にできる」
そう言われた事が嬉しかったのを今でも覚えています。
そんな私に進路直前に転機が訪れました。それは病で祖母が亡くなった事です。私は、祖母が危篤状態だと学校で知らせを受けた時、泣きながら教室を飛び出し、祖母に会いに行きました。しかし「ありがとう」と直接言う間もなく祖母は逝ってしまいました。
それから、どこか心に穴がぽっかりと空いてしまい、気づけば毎日、朝起きて学校に行って、家に帰って寝ることを繰り返す日々でした。時は流れて徐々に元の生活に戻りつつある中、ふと祖母に言われた「その手で人を笑顔にできる」という言葉を思い出しました。
私は、もう一度将来を見直し自分は何になりたいのか、何がしたいのか考えました。あの時、祖母に何もできなかった後悔、そしてこの手で誰かを笑顔にしたい、その一心で福祉の道に進むことを決めました。
介護は思っている以上に大変な仕事です。でも、「ありがとう」という言葉を頂く度にやりがいや感動、仕事の楽しみをたくさん感じています。形は違うけれど祖母と約束した「この手で人を笑顔にする」という事を実現できるよう、ご利用者の方と同じ時間を共に過ごしています。
最後に天国にいる祖母に伝えたい事があります。
「おばあちゃん、わたしの夢叶ったよ、ありがとう」
グループホーム 清華苑
介護員 中川莉緒