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はじめてのエンゼルケア
認知症のあるご利用者A様。毎朝、起床後に車椅子を操作してサービスステーションに来られ、棚に保管している自分の化粧ポーチを取り、お化粧をされる事が日課でした。
重度の認知症を患っておられましたが、昔からの日課であったお化粧をする手順に迷いはなく、真っ赤な口紅と頬のチークをかかさず、いつも身だしなみを綺麗に整えておられました。しかし、A様は少しずつ認知症が進行し、体力も低下していき、いつしか日課であったお化粧も出来なくなっていました。
A様の状態が良くない日々が続いたある日、夜勤の巡視に行くと、A様は既に息を引き取られていました。清華苑養力センターでは「看取り」の対応が少ない為、私自身もエンゼルケアの経験はありませんでした。不慣れな私は看護師と2人でエンゼルケアを行い、A様のお身体を綺麗にさせていただきました。
普段は化粧をしたことがない男の私ですが、不慣れながらも一生懸命にお化粧を施し、お見送りさせて頂きました。その時、どのようにお化粧したかは緊張のあまり覚えていませんが、ただ1つ覚えているのはA様がずっと使っていた赤色の口紅に似た口紅を薄く塗ったことです。
A様をお見送りして数日経ったある日、上司から
「A様のご家族がお化粧姿を見て、昔の姿を思い出すと言って喜ばれていた」
と伺いました。ご家族の希望があればお葬儀屋さんでも湯灌をするそうですが、A様のご家族は私達が施したお化粧のままで最後をお見送りになったそうです。
これからもご利用者やご家族にとって安心出来る介護を提供していきたいと思います。
老人保健施設 清華苑養力センター
介護員 長田和真