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かけた情けは水に流し 受けた御恩は石に刻む

 令和3年7月20日、祖母が亡くなりました。私にとって小学校二年生のとき以来、近親者の死でした。祖母は通所リハビリ清華苑すいすいを利用していました。
「あんたがおるとこ(清華苑すいすい)に来るのが一番楽しい」
とよく言ってくれました。

 介護保険サービスを利用するようになり、約四年。祖母の近くに住んでいましたが、あと何回会えるかわからない、何回一緒に食事ができるかわからない、と一日一日を大切に、少しでも御恩返しができるよう心掛けたつもりでした。それなのに。祖母が亡くなり、棺に入った祖母と対面したとき、一番に抱いた感情は後悔でした。

「大好きだったおうどん、もっと一緒に食べたかったな。」
「故郷の高松に連れて行ってあげればよかったな。」
 清華苑すいすいの利用を始める前、いつ会っても祖母はピンク色で薄汚れた、雑巾みたいな割烹着を着ていました。夕方、訪ねると電気も付けずに真っ暗なリビングでテレビを観ていました。
 振り返ると、認知症の始まりだったのだと思います。「どこか遠くに行ってしまう」、そんな不安から清華苑すいすいの利用を勧めました。清華苑すいすいに行くようになり、久しぶりに洋服を着る祖母に会いました。趣味だった社交ダンスでワルツを踊ることができました。

「かけた情けは水に流し 受けた御恩は石に刻む」
 これは、祖母に教えてもらった大切な言葉です。高齢者施設を利用するご利用者、その一人ひとりからの御恩を心の石に刻んだ方々、ご家族はご利用者の日々の生活の幸せを願い、私たちはその担い手です。

 福祉サービスはご利用者本人だけでなく、ご利用者家族の支えになります。祖母に幸せな居場所を与えてくれたことに感謝しています。入職したときから今までずっと、福祉の仕事は私にとっての天職だと胸を張って言うことができます。

「大切な家族が清華苑を利用してよかった」
 そう思っていただけるよう私自身の天職を通じてご支援ができればと考えています。

老人保健施設 清華苑養力センター
介護支援専門員 大中由宣 

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