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TOKYO

 9年前、夜勤で巡回中にご利用者のI様の居室のテレビで「2020年のオリンピック開催地が東京に決定しました!」というニュースを見て、I様と一緒に興奮して喜んだことを今でも思い出します。

 当時90歳を超えていたI様は
「まあでも、オリンピックの時にはもう私はいないけどな」
と笑って話されていました。
「一緒に観戦しましょうね」
と言葉を掛けましたが、オリンピックイヤーにご存命であれば103歳という年齢。一緒にその時を迎えたいという思いはありましたが、年齢を考えると難しいかなと当時は感じていました。

 そして、迎えた2020年の夏、I様は以前のように自分で車椅子を操作したり、趣味の裁縫をすることは出来なくなりましたが、103歳という年齢を迎えることが出来ました。I様にオリンピックの話をすると
「そうやったかな」
とマイペースにお答えされ、覚えている様子はありませんでした。

 残念ながら新型コロナウイルスの影響でオリンピックの延期が決まり、その年の秋にI様は天国に旅立たれました。一緒にオリンピックをTV観戦することは叶いませんでしたが、I様と共に過ごしたひとときは、とても幸せな思い出になりました。

 翌年、東京オリンピックが無事開催されました。たくさんの感動や刺激のあったオリンピックでしたが、時が過ぎても私の中では「東京オリンピックといえば、I様」の印象が色濃く残りそうです。きっとI様も天国で「東京オリンピック」を楽しまれたことと思います。

特別養護老人ホーム 清華苑
介護員 藤原亮太


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