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あんたは全然優しくなかった

 私が清華苑養力センターに在籍していた頃の話です。病院を退院して、清華苑養力センターに入所された女性のA様は、腕に強い痛みがあり、転倒への恐怖心や不安感が強い方でした。
「頑張って子供たちを育てたのに、子供たちから家へ帰ってくるなと言われてるようなものや」
とネガティブな発言もみられました。

 私は、A様が安心してリハビリに励めるように毎日の挨拶やポジティブな声掛けを行いました。少しずつ信頼関係が築けると、
「ちょっと自分で頑張ってみるわ」
と話されることも増え、介助が必要であった起居動作もやがてはひとりで出来るようになりました。自信をつけたA様のリハビリは順調に進み、徐々に表情も明るくなりました。

 いよいよA様の在宅復帰が決まり、退所当日は、他の職員と一緒にエントランスでお見送りをしました。A様は、他の職員には、
「優しくしてくれてありがとう」
と話されていましたが、私には、
「あんたは全然優しくなかった」
と言われました。私は悲しい気持ちになると同時に胸が痛くなりましたが、その後にA様は続けて、
「けどな、あんたが一番私のことを考えて面倒みてくれてたのはわかるよ。あんたがいつも応援してくれたからこんなに元気になって家に帰れる。あんたのおかげやで。ありがとう」
と言ってくださいました。

 私は嬉しい気持ちで胸が熱くなりました。そこには今までに見たこともないようなA様の素敵な笑顔がありました。A様の支援を通して、在宅復帰支援の醍醐味を感じる貴重な経験をさせていただきました。

通所リハビリテーション 清華苑すいすい
介護員 竹内崇


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