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JKのほんとのきもち

今回は、本校の「表現プログラム」のエッセイクラスの作品2点をご紹介します。

お題は「私の成女高校での1日」で、目標課題は「シーンを切り取る」でした。時系列ではなく、できるだけ自分の印象に残っていることから、読み手も一緒に体験しているように書いてみよう!という取り組みでした。

今、高校生というたった3年間の短い季節を、全力で駆け抜けている生徒たちの本音です。どうぞご一読ください。(講師:西山千登勢)


ギリギリJK

「起きたら、なんかいつの間に学校着いてたわ」なんてくだらない妄想。きっと誰もが一度くらいはした事があるのではないだろうか?

『ギリギリでいつも生きていたいから〜〜!』精神の私。
そう、“ギリギリJK”な私の朝は、いかにベッドと長い時間一緒にいられるかを最優先で考えた行動をとる。ということは、常に家を出る頃には電車が「あと2.3分で発車します」状態なのだよ。つまり、成女に通い始めて2年と少し。家から最寄り駅までの道のりを走らなかった日は無いといっても過言ではない。

なんとも言えないツンと鼻をつくような匂いが漂う電車。私はこの匂いを
「日々頑張っている人の匂い」と、勝手にそう呼んでいる。
何となく生きてる人間の匂いって感じ。分からないけどね。

換気のために開けている窓のせいでかき消されるお気に入りの音楽。
イライラしながら爆音に設定する。「海沿いの学校だったら登校時間、海を見ながら心安らぐのに」とか考えてみるけど、現実はどうせ地下鉄だし。
変わることのない景色をただひたすら眺めて、いつも以上に大きなガタンゴトンをBGMにしなきゃなんてゴメンだ。だから音漏れしてても許して、という気持ちなんだよ、一応ね 。

ただでさえ軽音部の私はギターを持って登校している。
同じ電車に乗る人たちからは、嫌な目で見られ、本当に私って可哀想だわ〜と、悲劇のヒロインぶってみる。で、その傍らでは、中学の時までは私と同じ様な学生だった子達が、見事“キラキラJK”へ進化した、その彼女達のInstagramをスクロールしては消しての繰り返し。

どう?なかなか悪くないモーニングルーティンだろ?
流れてくる爆音の音楽で、映画かなんかの主人公になったつもりで、地下鉄に揺られること約30分。

ついに我らの戦場「曙橋」に到着だ。学校に着いてしまえばそこからは、個性豊かな仲間たちと授業を受けてお昼を食べて、部活の時間が来るのをひたすら待つ私。
ただただひたすら待つ。耐える。

やっとの思いで放課後になれば部活動が始まる。
ここは私にとっての居場所であり、表現の自由を許された場所だと思っている。

ありがたいことに部長に就任させて貰い、今は軽音楽部に所属する高校生たちが、それぞれオリジナル曲で競い合う大会に向けて曲を作り、バンド用にアレンジしたり、後輩の面倒を見たりしている。

音楽という特技がこんなにも生かせて、自分の力となって、発揮出来る。
もう本当に最高の気分だ、楽しい。楽しすぎる。
もしライブなんか開催しちゃえば、私の気持ちが自分で作ったメロディに乗せてお客さんに伝わっている気がする。この瞬間、私は生きてるなと思うのだ。むしろ生きてる心地しかしないくらいだ。音楽こそが私の存在を証明してくれると、ここ、成女に入ってから気がついた。

もし、私がこの世から居なくなったとしても、私が生み出した音楽は誰かが忘れなければ消えることは無い。こんな素晴らしいことがあるんだと思ったら、もう私は音楽の虜なんだよな〜〜。困った。

まあ簡潔に説明するならば、「ギリギリJKのNO MUSIC NO LIFE」ってとこか?
優雅なモーニングルーティンを過ごして、走ることなく学校に向かう時がいつの日か来るのだろうか。

卒業まで、あと残り約270日。

(MS・高3)


ちゃんと生きてる

月曜日は憂鬱。
背中に重力がのしかかる。
ギターも同じ気持ちらしい。

私は軽音部に入っている。
毎日活動があるから、毎日ギターを背負って登校する。
学校のある日は、常に一緒だ。

電車の中ではギターが私を守ってくれる。
だけど時に人を傷つけてしまう。
私はギターが暴れないように必死に固まる。

遅刻しそうな時、ギターは帰りたがる。
私は頑張って走っているのに、エンジンにはなってくれない。

教室では邪魔にならないようにギターをロッカーの隙間に降ろす。同じような朝のルーティーンを行ってきたメンバーの楽器と一緒に並べる。

やっと本命の時間。ここまでは一日の序章の序章。終礼を終えるとすぐにロッカーの隙間へギターを迎えに行く。掃除場所へ行き、私は人が変わったようにテキパキと動き、掃除を終わらせる。活動時間を少しでも増やしたいからだ。

軽音部の部室は別の校舎の4階にある。
かなり遠い。階段を登る時は荒地の魔女のようになる。ギターが下に向かおうとするから、私の肩に紐が食い込む。
やっと着いた時には息が上がっている。
ギターは早く出してくれと言っている。

チャックを開けると、緑色。
今日も一日が始まる。
私はギターケースから相棒をとりだして
身に纏う。変身完了!
アンプに繋げてチューニングをする。
試しに鳴らすGのコードが私の目を覚ました。

抑えた指を切るような弦や、歪んだ音を出す相棒は、
ケースに包まれて私が運んであげていたギターとは違う。
部活の時間になるまで、私とギターはただの人と物である。
だからどうして毎日あんな重いものを運んでいるのかを、いつも忘れてしまって
嫌になればなるほど重くなる。

ピックを握って思い出す。
緑色になった相棒は、別人だ。
相棒は私と似てる。

月曜日は憂鬱。
だけどその重さや痛みで
ちゃんと生きてる、と気づく日。

(AS・高3)


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