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政治用語bot更新原文(2024.02.13)

5ヶ月ぶりの更新。130語追加である。
困ったことに1785語(更新前)もあると、30分1ツイートだと、一周するのに1ヶ月以上かかる。しかもこの語数あると数語更新したくらいでは今ひとつ「更新した感」がない(130語足しても+7%に過ぎない)もんで、やたらため込むようになってしまっている・・・ような気がしたが前々からこんな感じだったな。

更新していない間にパレスチナでは戦争が起きたり(個人的立場として、俺はパレスチナは「国家」派である)、自民党が裏金問題で大もめしてたり、能登半島では地震があったりでいろいろと激動の5ヶ月だったわけだが、
今回の更新ではそれらも関わっている。

今回の更新の主目的は三つ。2つは時事問題。
①イスラーム主義・パレスチナ問題関係。
これは戦争が起こったから・・・というわけではなく、前回の更新の延長線上でやっている。個人的に「政教分離の相対化」というテーマを心の片隅に抱えており、まずはイスラームと政治でそれなりに調べようとなったものである。
で、ある程度真面目に文献を読んでいたのだが、パレスチナ問題って宗教問題じゃないんだねこれ。少なくとも元々はナショナリズムだわこれ。ユダヤ・ナショナリズム vs アラブ・ナショナリズムで、後からイスラーム主義が入ってきた三つどもえ。
あと「パレスチナ問題はイギリスの三枚舌外交が悪い」ってのもダメだねアレ。ちょっと慎重に考えりゃわかることだったが、そもそもイギリスがなんでユダヤ人にイスラエル建国を約束したのかって、ヨーロッパで国民国家がポンポン成立した結果ユダヤ人の居場所がなくなったからじゃねえか。ヨーロッパ中での、ナショナリズムの裏表としての(広い意味での)ユダヤ人差別が根本じゃん。イギリスが三枚舌外交しなくてもいずれこうなるがな。

②政治とカネ
これは完全に時事問題対応。まあ基本用語が大半だが。
今問題になってるもの以外にも、以前話題になった「文通費」も書いている。
「政治資金規正法」なんかは、そもそも自分がまだ書いてなかったことに驚いた次第。いずれ「献金」やら「団体献金」でも立項する。

③懸案語の消化
有名だが今ひとつまとめ切れてなかった言葉やら、個人的に興味があったが理解が進んでいなかった言葉の消化。
「修復的司法」「人民立憲主義」「刑罰論」「ナチス」がそれ。刑罰論はその派生で大量に追加した。人民立憲主義は個人的にはものすごくおもしろい議論なのだが、試しにTwitterで検索かけても全然ヒットしないねぇ・・・。
「ナチス」はなんつーか、アレは上手く140字で端的に全要素が出るよう書くのは無理だな、いろいろと要素が多すぎる。

他はリスト化していたけど書いてなかったものをそれなりに消化。
加えて最近Twitterで岸田首相が施政方針演説で憲法改正に言及したのを叩いて吹き上がってるのを見て「アホかこいつら」と思ったので「公務員の憲法尊重義務」で一般論と日本国憲法条文で立項。
あとなんか「統合政府」という言葉をTwitterで経済評論家してる人らが最近よく使っており、書きやすそうなので書いておいた。

一部、ここ数ヶ月「権威主義」について勉強しており、その関連用語も入っている。どうも(旧)社会主義国の政治制度について調べていると権威主義についても勉強しておく必要が生じるのだ。

また、こういうことは珍しいのだが「抑止刑論」だけ、自分で書いていて今ひとつ自信がない。「相対的応報刑論」に並ぶ有力説として紹介されている論文はあるのだが、刑法の教科書を漁ってもあまり言及がなく、内容的にもこれ相対的応報刑論のバリエーションじゃね?と思える。
そもそも「予防論」(抑止刑論)という書き方をしている教科書もあり、ますますよくわからない。文献の出版年を見ても、古い文献にはあって最近の文献にはないというわけではないらしく、そもそも立項するべきかどうかすら考え直していた。結局とりあえず立項したのだが。もしかしたら今後削除するかもしれない。



イスラーム主義、パレスチナ問題

「ガザ地区」※「天井のない監獄」を分割。

パレスチナ南西の地中海沿岸の都市ガザとその周辺からなる、約360平方km(長さ50km・幅5-8km)のパレスチナ人居住区域。人口は約222万人。「ハマス」の統治領域であり、「ヨルダン川西岸地区」と共に「パレスチナ国」を構成する。オスロ合意によりパレスチナ自治政府の統治領域となった後、2007年のハマスによる武力支配以降はハマスの実効支配下に入り半ば独立。2017年のハマスと自治政府との和解後からパレスチナ国内のハマス統治領域となる。ハマス他のイスラム主義武装組織の活動拠点でもあり、そのことから2007年以降のイスラエルによる境界の封鎖やエジプトによる通行規制により他国・他地域との行き来が困難であり「天井のない監獄」と呼ばれる。綿花栽培を主産業とする。

「ヨルダン川西岸地区」

パレスチナ東側のヨルダン川の西岸、ヨルダンと接するパレスチナ人居住区域。人口は約280万人。「ガザ地区」と共に「パレスチナ国」を構成する。しかし大半の領域はイスラエルの実効支配下にあり、またユダヤ人による違法な入植活動が継続しており問題となっている。

「オスロ合意」

1993、1995年のそれぞれでイスラエルと「パレスチナ解放機構(PLO)」の間で「パレスチナ問題」の平和的解決を目指すべく合意された二つの協定(「オスロ第一合意」「オスロ第二合意」の総称。「パレスチナ問題」を平和的に解決することを目的とし、イスラエルの国家としての承認と、PLOによる自治の承認とその拡大を内容とする。しかし、イスラエル側、パレスチナ側双方の中で反対が根強く、1996年にはイスラエルが強硬化、パレスチナ側は「ハマス」がテロ活動を行うなどで関係が悪化し、2000年に期限切れを迎えるまでに新たな合意に至ることができなかった。

「オスロ第一合意」

いわゆる「オスロ合意」の一つ。1993年にイスラエルと「パレスチナ解放機構(PLO)」の間で合意された「暫定自治政府原則の宣言」を指す言葉。PLOはイスラエルを国家として、イスラエルはPLOを自治政府として互いに承認した上で、PLOに5年間の暫定自治を認め、以後についてはさらなる交渉で合意することを定めたもの。「パレスチナ問題」の平和的解決への大きな前進として著名であり、その後「オスロ第二合意」の締結にも成功したが、当時から両者内でも根強い反対があった。

「オスロ第二合意」

いわゆる「オスロ合意」の一つ。1995年にイスラエルと「パレスチナ解放機構(PLO)」の間で合意された「パレスチナ自治拡大協定」を指す言葉。「オスロ第一合意」で合意されたPLOの自治範囲を拡大し、また自治政府に議会と大統領を設置して国家に準ずる組織を整えた一方、イスラエル軍統治、治安・安全保障担当地域がパレスチナ内に多く残された。とはいえ「パレスチナ問題」解決の大きな一歩ではあり、期待が持たれていたが、1996年になると合意反対派の不満が顕在化し、以後の交渉が頓挫したまま現在に至る。

「アラブ連盟」

1945年に創設されたアラブ諸国の地域協力機構。現在22カ国が加盟。本部はエジプトのカイロにある。中東周辺の国際問題においてアラブ諸国が一致して行動するための枠組み。パレスチナ問題の初期段階や中東戦争ではある程度連携していたが、第4次中東戦争後の対イスラエル政策やイラン・イスラム革命への対応、湾岸戦争では足並みが乱れており、必ずしも結束力が強いとは見なされていない。なお、あくまでアラブ民族主義に基づく組織であるため、イスラーム主義との関係には内部で温度差が大きく、足並みが乱れる要因の一つとなっている。

「アラブ・ナショナリズム」

アラブ人の統一と連帯、自立を求める思想・運動の総称。あくまでもアラブ民族を前提としたナショナリズムであるため、アラブ人に限らず広くムスリムの自覚と連帯を目指すイスラーム(主義)とは別物であり、しばしば激しく対立する。オスマン帝国崩壊後に多数成立したアラブ系国家の連帯を求めることから始まり、「アラブ連盟」の創設やパレスチナ問題、中東戦争、イスラーム主義との対立などで、中東の国際政治状況に強い影響を与えている。

「イスラム協力機構」

OCI。主にイスラーム教徒を多数抱える国家による国際協力機構。1971年創設。本部はサウジアラビアのジッダ。加盟国57国。オブザーバー5カ国8組織。イスラーム教諸国の連帯・連携やイスラーム教徒の保護・独立闘争支援などを目的として活動している。国際連合に対する代表権を持ち、事実上イスラーム教徒の国際的な代表者として機能しているが、「アラブ民族主義」などナショナリズムとの兼ね合いの難しさから一致団結して行動できない側面もある。

「イラン・イスラム革命」

イラン革命、イスラム革命とも。1979年にイランで成立した革命。親米的なパフラヴィー朝による開発独裁的な君主制に対する国民の不満を背景に、ホメイニーを指導者とするシーア派イスラーム主義勢力等がパフラヴィー朝を打倒して「イスラーム共和制」を樹立した。この革命の成立は国外にも大きな衝撃を与え、各国のイスラーム主義勢力の活動・勃興に刺激を与えた。

「イスラーム共和制」

イスラームの教義やイスラーム法に基づく共和制のこと、特にイランの政治体制を指して用いる。イランのイスラーム共和制は、三権分立や選挙を整備した上で、その上に国家をイスラーム法に則って運営するための指導者・監督機関を置いて強力な権限を与えることに特徴がある。指導者は高位のウラマー(イスラーム法学者)が就き、その任免はウラマーから国民により選挙された専門家会議が決定し、またウラマー6名と通常の法学者13名からなる監督者評議会が三権を監督する。がつまりイスラーム法が一種の憲法として扱われ、その解釈・適用権限者が国家機構の最上位にある体制である。

「ヒズボラ」

ヒズブッラー。レバノンを拠点に活動するシーア派イスラム武装組織・政党。「アッラーの党」を意味する。レバノン内戦中の1982年頃、イスラエルによるレバノン侵攻への抵抗を掲げて結成された。現在に至るまでイラン・シリアの支援を受けながらイスラエルおよび欧米に対して攻撃を繰り返している。その一方で、レバノン国内では合法的政党として議会に議席を持ち、学校や医療施設の運営や慈善事業に携わる側面も持つ。

「ファタハ」

パレスチナの政党の一つ。「パレスチナ解放機構」(≒パレスチナ自治政府)の主流派であり、「ヨルダン川西岸地区」の与党。パレスチナ独立を目的とする武装組織として1957年に結成され、イスラエルに対して頻繁に武力攻撃を行い、「第三次中東戦争」の引き金ともなったがその武力闘争路線が支持を失ったことを受けて現在は穏健化している。イスラーム主義をとらない世俗的なパレスチナ人の民族主義組織としての側面が強く、ハマスとの温度差はこのことにも起因する。

「パレスチナ国」

パレスチナに存在する共和制国家。パレスチナ自治政府が統治する「ヨルダン川西岸地区」(ただし大半はイスラエルの実効支配下にある)と、ハマスが統治する「ガザ地区」からなる。1988年に独立宣言が行われ、1993年の「オスロ合意」にてパレスチナ自治政府が発足。2007年にガザ地区が分裂しつつも、2012年に国際連合オブザーバーとして承認。2014年にはガザ地区と再統合された。国際連合には加盟していないが、大半の国家から国家承認を受けている。
パレスチナを改筆。

「イスラーム復興」

中東、北アフリカ、中央アジア、東南アジア他世界各地で1970年代頃から発生している、自らの信仰を再自覚し、意識的にムスリムであることを選択した敬虔なイスラーム教徒が目に見えて増加する現象のこと。個人の信仰の問題から、彼/彼女らの信仰生活の追求の帰結としての社会のイスラーム化や、それを推進する運動、またその運動の目標として政治的な変革を目指す「イスラーム主義」までを包括する幅広い概念。発生要因としては、当該地域の世俗主義政権や西洋的な近代化への抵抗だけでなく、識字率の向上によって知的水準が高まったことでイスラームの教義をかつてと異なった形で受け入れる素地が整ったこともある。

「イスラーム主義」

政治的イスラームとも。イスラームの教義やイスラーム法に基づく国家の樹立や統治を目指す思想・運動の総称。オスマン帝国崩壊後の植民地国家化・世俗化・西洋型近代化の推進への反動として登場した。既存の国家内での政治改革を目指すものもあれば、既存の国家の枠組みを否定して新国家の樹立を目指すものまで内実は様々。自らがイスラム教徒であることを再自覚し、イスラム教徒としての善き生活を営もうとする「イスラーム復興」運動の一種で、その手段として政治改革を選択し、政治思想・政治運動化したもの。俗にイスラーム原理主義とも呼ばれるが、あまり適切ではないとされる。

「ムスリム同胞団」

1928年にエジプトで発足した「イスラーム主義」社会運動体。イスラームの教義・法に基づく統治を実現するためには、先に個人のムスリムとしての生き方や社会のイスラーム化の追求が必要として、モスク建設、慈善事業、企業経営、学校建設といった多岐にわたる社会貢献活動を行った。一時非合法化されながらも大衆の支持獲得に成功し、エジプトでは一時政権獲得にまで至るも、政権運営の失敗が軍事クーデタを招き失脚。ただし、現在でも影響力・組織力は非常に強く、中東全域に拡大して影響力を保持しており、たとえば「ハマス」も元々はムスリム同胞団の派生組織。

「ジハード主義」

イスラーム主義のうち、その実現方法として暴力の行使や軍事的手段、端的にはテロ活動や戦争を選択した立場、および軍事的手段自体が目的化した立場を指す言葉。いわゆるイスラーム過激派のこと。1970年代頃に登場し、当初は自国の反イスラム的もしくは世俗主義的な政権に対する攻撃に留まっていたが、ジハード主義者が各国から閉め出されたことでむしろ国際化、攻撃対象も無差別化していった。「ハマス」や「ヒズボラ」「アルカイダ」「イスラム国(ISIL)」などが有名。

「インティファーダ」※第一次、第二次に分割

アラビア語で民衆蜂起を指す言葉。原義は「揺らす」。日本では特にイスラエルに対するパレスチナ人による民衆蜂起を指して用いる。武力紛争やテロ活動とは異なる、民衆自身による抵抗活動。いわば目的意識によって統制された暴動。現在まで二度発生し、1987年の第一次インティファーダはイスラエル、パレスチナそして国際世論に対してパレスチナ人の自治の必要性を痛感させる出来事となり、後の「オスロ合意」につながった。一方2000年の第二次インティファーダは、インティファーダとは呼ばれるものの、そのまま武力紛争にエスカレートした。なお、第一次インティファーダと同時期にハマスが活動を開始しており、インティファーダにおいても活動していた。


貿易・国際政治

「インド太平洋経済枠組み」

IPEFと略。2022年に米国の主導で発足したインド太平洋地域での経済圏形成とそのための協議を行う枠組み。貿易、サプライチェーン、クリーン経済、公平な経済の4つを柱とし、関税・非関税障壁に関する協議は行わないという特徴を持つ。オーストラリア、ブルネイ、フィジー、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、米国、ベトナムの計14カ国が参加しており、中国の経済的影響力を排した経済圏構想という趣が強い。

「関税」

地域をまたいで物品を輸送する際に課される税のこと。典型的には貿易において輸入品に課される税のこと。税収目的の場合もあれば、他国からの輸入品の国内価格に関税を上乗せして価格競争力を落とし、価格競争力の劣る国産品と拮抗させることを目的とする場合もある。いずれにしても関税は「貿易障壁」の典型例、「保護貿易」の手段と見なされ、その存在は自由貿易を推進する立場から非難される。

「非関税障壁」

各国政府の政策によって生じる貿易上の制約である「貿易障壁」のうち、「関税」ではないものを広く指す言葉。輸出入制限、輸入割当制、国内産業への助成金といった、直接的に貿易量や商品価格に影響を与えるものが典型。ただし他にも国内の社会・経済の仕組みや、環境保護政策、社会保障政策、保健衛生政策、文化・慣習といったものによる制約も非関税障壁に類するものとして扱われることがある。

「保護貿易」

政府が自国産業・自国経済の保護や拡大を目的として積極的に介入することを前提とした貿易のこと。関税や輸出入制限のような貿易抑制策によるものもあれば、逆に輸出奨励金のような貿易拡大策の場合もある。自国の利益を貿易全体の効率性よりも優先し、それによって長期的には自国利益をも毀損してしまう貿易の形態としてしばしば非難される。対義語は自由貿易。

「貿易障壁」

各国政府の政策によって生じる、貿易上の様々な制約のこと。一般に、自由貿易であれば生じない制約のみを指す。典型的には「関税」とそれ以外の「非関税障壁」に区分される。一般的に、貿易障壁は自由貿易で達成されるはずの経済効率性を毀損する存在として認識されており、現在まで貿易障壁を撤廃するべく様々な国際経済枠組みが構想・実現されてきた。

「貿易」

他国家との間で行われる様々な商業活動の総称。典型的には物品の売買だが、なんらかの形で国際的な売買が行われているなら有形無形を問わず貿易となる。他国に対して売る場合を輸出、他国から買う場合を輸入という。また売買の対象や形態、背景となる制度や政策によって様々な分類が存在する。これまでの歴史の中で、貿易は国家間の相互依存を強化してグローバル化を推進する原動力となり、また現在ではそのグローバル化によって貿易なしに人々が生活を営むことは極めて困難となっており、その重要度は高い。

「海賊党」

著作権の制限と著作物のダウンロード合法化を掲げる政党が用いる名称。2006年のスウェーデンでの結成を嚆矢としてヨーロッパを中心に各国に広がり、ドイツではEU議会議席を獲得するほどに規模を拡大。「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」反対運動の主要アクターとなった。なお、その主張の軸にはンターネット空間の自由化とそれによる新たな公共圏・民主主義の深化という大きなテーマがあり、ダウンロード合法化のみを追求する政党ではない。

「偽造品の取引の防止に関する協定」

ACTA。「模倣品・海賊版拡散防止条約」など別称多数。知的財産権保護のための新たな国際的かつ包括的枠組みとして日本が2004年頃から構想・提唱した条約。各国との調整により特にアメリカ合衆国の案を多く受け入れた上で2011年に最初の署名が行われ、2012年1月までに31ヵ国の署名を得た。しかし、欧州における知的財産権保護を名目とした言論統制の危惧などによる大規模な反対運動の発生の末に欧州議会が批准を否決するなどもあって批准国は日本のみにとどまり、未だ発効していない。

「通貨スワップ協定」

通貨交換協定など別称あり。二国家以上の「中央銀行」による「自国が通貨危機に陥った際に、なんらかの条件で相手国から必要な外貨を予め定めたレートで融通してもらう」ことを定めた協定のこと。通貨危機の対処のための為替介入などに必要な外貨を確保するための協定であり、ほとんどの場合ここでの外貨はアメリカドルとなる。なお、あくまで中央銀行間の協定であり、条約ではない。

「外貨準備高」

政府や中央銀行が保有し、その判断でいつでも使うことができる外貨・外貨建て資産のこと。為替介入のための資金や、通貨危機などで外貨建て債務の返済が困難になった際のために備蓄される。アメリカドルであることが多いが、他にもユーロや人民元など様々あり、また日本以外であれば当然日本円も外貨準備に用いられる。

「国連憲章」

国際連合憲章。1945年に調印・発効した、「国際連合」の設立を根拠づける条約・基本文書。国際連合に加盟する国家の権利義務や、国際連合の主要機関、従うべき諸手続について定めている。世界のほとんどの国家が調印・批准しているため、国連憲章に記された諸原則は国際法・国際関係の諸原則とほとんど同一視される。

「国連分担金/任意拠出金」

国際連合の加盟国が国際連合に対して拠出する金銭。「分担金」は加盟国が義務として拠出する金銭、「任意拠出金」は加盟国の意思で拠出する金銭であり、共に国際連合の財源となる。また分担金は、国際連合の通常業務のための「通常予算分担金」と、国連平和維持活動のための「PKO分担金」「旧ユーゴスラビア・ルワンダ国際刑事裁判所残余メカニズム分担金」に分けられる。

「通常予算分担金(国際連合)」

国際連合の財源のために国際連合加盟国が義務として拠出する「分担金」の一つで、国際連合の通常業務のために拠出されるもの。2023年度は合計約34億ドルほど。その各国ごとの負担率は、各国の国民所得の多寡で算出したものに、各国債務や国民一人あたりの所得を踏まえた交渉・調整を行って決定する。なお、2年分滞納した場合は国連総会での投票権を失う。

「PKO分担金」

国連平和維持活動(PKO)の財源として国際連合加盟国が義務として拠出する「分担金」のこと。2022年度は合計約64.5億ドル。金額は「通常予算分担金」の負担率をもとに、途上国の負担率を減らし、その分国際連合安全保障理事会常任理事国(米英仏露中)の負担率を上げて決定される。

「リープフロッグ」

新興国において最先端技術が一挙に広まり、浸透することを指す言葉。リープフロッグ型発展、リープフロッグ現象といった形で用いる。新興国は元々様々なインフラが整備されておらず、設備投資も少ない状態から発展しつつある国家である。そのためその発展の際には、既存インフラや設備との調整や兼ね合いを考慮することなく、発展時に実用化されている様々な最先端技術・設備・商品を受け入れる余地が大きくなりやすい。ただしこれは法整備・議論の未熟さゆえと捉えることができ、先進国では是認されないであろう危険な技術・設備・商品が規制されることなく広まることも意味している。

「グローバルサウス」

新興国・発展途上国を広く指す言葉。訳すと「南の世界」。新興国・発展途上国が南半球に多いことによる名称で、いわゆる「南北問題」の南側。ただし、南半球に位置しない国でも新興国・発展途上国であればグローバルサウスに入ることが多い。元々南北問題への関心が集まった1960年代から存在した言葉ではあるが、日本でカタカナ表記で頻繁に用いられるようになったのは2010年代末頃からであり、単に新興国・発展途上国を指すというよりも、国際政治における影響力や、国際政治のアクターとしての独自性を示すニュアンスであったり、それらがもはや開発途上国ではないこと(既に発展していることと、遅々として開発が進まないことの両方を含む)を指すニュアンスであったりする。

「南北問題」

先進国と発展途上国の経済格差とその拡大、そしてそのことに起因する様々な問題の総称。要因は様々だが、途上国が元々現先進国の植民地であったことに起因する、貿易を通じた搾取構造が大きなもの。1960年代に注目されて以降、これまで国家レベルでは「政府開発援助(ODA)」など国際的援助の仕組みの整備や、「国際連合貿易開発会議 (UNCTAD)」のような貿易適正化の動き、「世界銀行」のような国際的な経済開発支援組織の結成、他にも様々なNGOによる活動や、企業・消費者レベルでのフェアトレード運動など、是正のための様々な取り組みが行われている。先進国が北半球に多く、発展途上国が南半球に多いことを由来とする名称。

「第三世界」

東西冷戦期において、第一世界(資本主義諸国・西側諸国)、第二世界(社会主義諸国・東側諸国)に対し、そのどちらにも与しない非同盟諸国を指して用いられた言葉。事実上開発途上国が多く含まれており、またそのことによって東西冷戦の文脈を離れ、単に開発途上国一般を指す言葉としても用いられた。現在では東西冷戦の終焉によって用語の妥当性を失っており、あまり用いられない。

「西側諸国/東側諸国」

単に西側/東側とも。第二次世界大戦末期の1945年に始まり、1989年まで継続した「冷戦」(米ソ冷戦)において、米国に与した資本主義国家を西側諸国。ソ連に与した社会主義国家を東側諸国という。それぞれがヨーロッパから見て西側・東側に多かったことを由来とする。冷戦が終焉した後の現在においても、旧西側・旧東側諸国の行動様式や国民心理などを指したり、社会主義を標榜する中国とそれに与する国家や、ソ連の後継国家であるロシアとそれに与する国家を指して東側と言うことがある。

「資源の呪い」

天然資源の豊富な国家・地域における、天然資源採掘・輸出以外の産業が成長せず、その結果全体としては経済が発展しない現象のこと。アンゴラ、ナイジェリア、コンゴ、カザフスタンなどが例。原因は様々な要素の複合とみられており、単なる天然資源採掘の利益による他産業育成の動機の弱さ。権威主義政権による自らの正当性アピールのための過剰なバラマキ政策。労働力や設備投資が天然資源採掘以外に回る余裕のなさ。天然資源利権を巡る汚職や紛争・内戦の頻発。天然資源採掘で得た利益を外国企業が取得するため国内に残らないなどがある。

「破綻国家」

失敗国家、崩壊国家など。政府が機能しておらず、自国領域内の秩序を維持できていない国家。形式的には主権を持つが、実効支配を達成していない国家。政治的・社会的・経済的苦境や国民の分断が政府の対応能力を超えてしまった場合の帰結の一つ。政府が機能しないがために人々は対立の調停から日常生活の糧に至るまでの全てを自力救済に頼らざるを得ず、治安が極度に悪化し、様々な軍事組織が跋扈したり、内戦が頻発することになる。「脆弱国家」との違いは曖昧であるが、政府機能の多くが機能不全に陥っているが、完全に機能していない段階を「脆弱国家」とすることがある。1992-93年にHelman and Ratnerがソマリアなどの状況を表現するために用いられたのが初出。

「脆弱国家」

政府が機能不全に陥っており、自国領域内の秩序を維持しきれていない国家。言い換えれば「国家としての体をなしていない国家」だが、何をもって「国家の体をなしていない」とするのかは明確ではない。また似た用語に「破綻国家」もあり、一応は国家としての機能を維持しているものを脆弱国家とし、ほぼ完全に機能を喪失しているものを破綻国家とするかに見えるが、何をもって完全な喪失とするかの合意もまた、得られてはいない。

「民主化の三つの波」

これまでの歴史の中で3度発生した、世界各地で同時多発的に民主主義国が生まれる現象のこと。アメリカ合衆国の成立・フランス革命に始まる1828-1926年が「第一の波」。第二次世界大戦半ばに始まる1943-1962年が「第二の波」、そして冷戦中に南欧で始まる1974-1990年が「第三の波」と呼ばれる。この民主化の波は単純な民主主義国の増加ではなく、各波の間には反動による権威主義体制への揺り戻し期(1922-1942年、1958-1975年)も発生しており、2024年現在も第三の波の揺り戻し期と見られる。

「NEXT11」

現在成長めざましいとされる新興国群「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続き発展するであろうとして、ゴールドマン・サックス社が2005年に提唱した新興国群。ベトナム、韓国、インドネシア、フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、イラン、エジプト、トルコ、ナイジェリア、メキシコの11カ国。

「VISTA」

現在成長めざましいとされる新興国群「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続き発展するであろうとして、2006年に経済評論家門倉貴史が提唱した新興国群。ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンを指す。

「MENA」

ミーナ。中東と北アフリカを指す言葉。Middle East & North Africaの略。石油資源を豊富に持つアラビア語圏であり、政治的には不安定要素はあるものの、石油資源収入を原資とした経済発展が見込める地域として注目される。普通に中東と北アフリカと言えばいいだろうという気はする。

「CIVETS」

イギリスの銀行HSBCホールディングスが「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続き発展するであろうとして2010年に提唱した新興国群。コロンビア、インドネシア、ベトナム、エジプト、トルコ、南アフリカを指す。「NEXT11」や「VISTA」と同じく、2000年代後半のポストBRICsを提唱する動きの一つとして提示されたものだが、その中では最も遅く登場した。


政治とカネ、選挙

「政治改革四法」

1994年に成立した「公職選挙法の一部を改正する法律」「衆議院議員選挙区画定審議会設置法」「政治資金規正法の一部を改正する法律」「政党助成法」の総称。「リクルート事件」によって表面化した政治とカネの問題への対応として1980年代後半頃から構想されたものであり、一時頓挫しかけたが、1993年の政権交代を機に成立することとなった。

「政治資金規正法」

日本における政治家・政治団体の活動資金(政治資金)の規制・透明性確保を目的とする法律。政治資金の収入源を限定し「政治資金収支報告書」の提出を義務とするなどによって、政治資金の流れの適正化を図るもの。1948年に制定されて以降、75年、92年、94年といわゆる政治とカネの問題が噴出する度に大幅改正されている。

「政治資金収支報告書」

日本の政治団体が作成する、政治団体の収入・支出・保有資産などについて記載した報告書のこと。「政治資金規正法」によってその作成と選挙管理委員会および総務大臣への提出が義務とされており、提出後はその要旨が公表される。

「資金管理団体」

政治資金規正法に規定される、政治家が政治資金を受け取り管理するために設置・指定する政治団体のこと。資金管理団体の代表は当該政治家本人が務め、政治家一人につき一つの資金管理団体を設置・指定できる。原則として政治家はこの資金管理団体を通して個人献金や寄付、政治資金パーティ収入を受け取り、その収支や資産は「政治資金収支報告書」に記載して提出する。

「政治資金団体」

政治資金規正法に規定される、政党に対して資金を援助することを目的として政党が設置・指定した団体のこと。一つの政党につき一つだけ指定できる。政党と同様に団体献金を受けることができ、また寄付額の上限も政党と同一となるなど、他の政治団体よりも有利な、政党にほぼ準じた条件で政治資金を確保できる。2024年1月現在、自民党、国民民主党、旧NHK党がそれぞれ政治資金団体を指定している。

「国民政治協会」

自由民主党の「政治資金団体」。つまり自由民主党に対する献金の受け入れ窓口。いわゆる政治とカネの問題に対応して1961年に設立された国民協会を起源とする。名称が示すように本来は個人献金を広く受け入れる目的で設立されたものだが、現在はもっぱら法人による団体献金の受け入れ窓口として機能しており、個人献金額は自民党本部の方が圧倒的に多く、法人その他団体からの寄付は国民政治協会がさらに圧倒的に多い。

「(個人)後援会」※botでは「後援会」

政治家が自らが立候補する選挙区で組織する支援団体。政治家は後援会を自らの政治活動・選挙活動の基盤とし、後援会加入者は後援会を通じて政治家との人脈を獲得して政治による自己利益の実現を目指す。本来ならば政党が担うはずの集票機能と利益集約機能をある程度代替する日本独特の存在。事実上政党組織の一部であるものもあれば、あくまでも政治家個人の支援団体であることもあり、特に後者は自民党系政治家が強力に組織している傾向にある。なお、どうやら後援会の維持には多額の費用がかかるようで、政治家にとっては重い負担となっているとされる。

「氷代・餅代」

日本において、政党(特に自民党)の本部や派閥が所属議員に配る活動資金(政策活動費)の俗称。夏に配るものを氷代、冬に配るものを餅代という。特に政治資金に乏しい中堅若手議員の資金支援として行われる。「政治資金規正法」においては寄付として扱われるが、その支払いを政治資金報告書に記載しない例が見られ、問題となっている。

「政策活動費」

政党から政治家に対して支出される政治資金のこと。「政治資金規正法」によって企業・団体からの政治家個人への献金は禁止されているため、その代替として支出される。この際、政党は支出先の議員名や金額を、「政治資金規正法」における寄付として「政治資金収支報告書」に記載する義務を負うが、政治家個人にはその使途を報告する義務がないため、ブラックボックス化していると言われる。なお、「政務活動費」とは異なる。

「政務活動費」

旧称政務調査費。日本の地方自治体がその議会議員に交付できる、資料購入や研修・視察、事務所経費といった議員活動の費用に充てるためのお金のこと。「地方自治法」100条14・16項に定められており、具体的な金額や支給対象、収支の報告の有無・内容は各自治体の条例で定める。自治体毎に制度の差異が大きく、政務活動費の使途の透明化の程度もまちまちである。なお、あくまでも「交付できる」に過ぎないため、そもそも政務活動費を交付しない自治体もある。

「裏金」

その存在を外部に公表しておらず、その収入源や使途が明らかにされていないお金のこと。特に政治家や公務員、経営者について用いられる言葉。その性質上、ほとんどの場合賄賂や経理上の不正行為などの違法・脱法行為によって形成され、その存在が明るみになれば大きなスキャンダルとして報道される。

「文通費」

文書通信交通滞在費の略。衆議院・参議院の全議員に対し、公の書類の発送や公の性質を有する通信のための資金として支給されていた月額100万円の手当のこと。月に1日でも議員であれば満額支給されること、使途公開の義務がなく、目的外使用が横行していることなどの問題が指摘され、2022年4月には日割り支給化し目的を広げた「調査研究広報滞在費」に制度変更された。

「調査研究広報滞在費」

衆議院・参議院の全議員に対し、調査研究や広報、国民との交流、滞在などの議員活動を行うための資金として支給される、月額100万円の手当のこと。2022年4月に旧来の「文通費」を制度変更したもの。当時問題視されていた月割り支給を改め日割り支給としたが、目的外使用についてはむしろ用途を広げて合法化し、使途の公開や未使用分の返納は制度化されてないままにとどまっている。

「リクルート事件」

1988年6月18日に発覚した贈収賄事件。就職情報企業大手のリクルート社が自由民主党を中心に様々な与野党議員、経済界の有力者、マスコミ幹部などに関連会社の未公開株を譲渡したことが、賄賂として摘発され多くの逮捕者を出したもの。いわゆる政治とカネの問題が大きく注目されるきっかけとなり、後の「政治改革四法」構想・成立の要因となった。現在もなお「ロッキード事件」と並ぶ戦後最大の汚職事件と称される。

「ロッキード事件」

1976年2月に発覚した贈収賄事件。アメリカの航空機製造大手ロッキード社が旅客機売り込みのために、自由民主党・官僚・財界(およびその他世界各国の有力者)に多額の贈賄を行ったもの。アメリカ上院の公聴会で発覚し、事件対応・捜査進行の是非を巡って自民党の党内抗争まで発生したものの、結局元首相の田中角栄を含む大量の逮捕者を出して終結した。今なお「リクルート事件」と並ぶ戦後最大の汚職事件と称される。

「疑獄事件」

単に疑獄とも。政治問題となった(特に政治家の関わる)大規模な汚職・贈収賄事件のこと。有名なものとしては「シーメンス事件」「造船疑獄」「「ロッキード事件」「リクルート事件」といったものがある。用法としては、例えば「リクルート疑獄」のように「事件」の代わりの言葉として使う。

「賄賂」

公権力の行使の結果から何らかの私的利益を得ようとする者が、政治家や官僚その他公権力を行使する権限を持つ公職者に対し不正に支払う金銭・物品のこと。この支払い・受け取り(贈賄・収賄)は、本来公のために行使すべき公権力を私的利益のために行使させようとするものであるため、汚職として処罰の対象となる。公権力行使の方針を決定するレベル(政治家による政策・法案)に対して行うこともあれば、公権力が実際に行使される現場のレベル(下級公務員)に対して行われる場合もある。なお、公務員の給与が低すぎるがために、公務員たちが賄賂によって生活を成り立たせることが常態化している国家もある。

「汚職」

政治家・官僚、その他公権力を行使する立場にある者つまり公職者が、金品を得ることを目的に恣意的に公権力を行使すること。もしくはその目的で実際に金品を得ること。汚職が蔓延している状況を「政治が腐敗している」という。公権力の行使によって利益を得る者、不利益を被る者が生じるのは当然のことであり、その帰結として公職者への金品提供によって公権力の行使に影響を与えようとする動機も当然生じるため、汚職を根本的に防ぐのは不可能である。そのため現代においてはある程度の金品授受を透明化された献金や寄付として合法化し、不透明なもの、過度なものを禁ずるのが通例。

「官房機密費」

内閣官房報償費の通称。日本において「国の施策を円滑に進めるために機動的に使う経費」として予算計上され、内閣官房長官が管理する経費のこと。年間10億円超が支出される。一部を内閣情報調査室の経費とし、残りの大半は官房長官の一存で使途を決定する。情報収集・調査のための経費とも言われるが、その使途は機密であるとして公開されないため実際の使途は不明。その性質から「権力の潤滑剤」とも呼ばれる。

「閣外協力」

議院内閣制において、ある政党が自党から国務大臣を輩出せずに他の何らかの形で連立政権に参加している状態を指す言葉。政策協定の締結や会派を共にすることによって行われる。連立相手との政策の差異が比較的大きいために共に内閣を構成すると対立が表面化しやすい場合や、共に内閣を構成することで生じる責任を回避し、連立を離脱しやすくしたい場合に採用される。

「院内会派」

単に会派とも。議会において議員が結成する団体。「政党」とは似ているが別の存在。国によってその関係は異なるものの、少なくとも日本の会派はあくまでも議会内での活動単位であって議会外では活動せず、また所属政党の枠を超えて会派を結成することも普通に行われる。また日本では議会内での質問時間の割り当てなど議会内の手続きは原則として会派を単位としている。

「政局」

政治における政党・政治家・派閥といったものの権力や勢力、ポスト配分、行動に関する側面を指す言葉。つまりは「政治家達の権力争い」のこと。当然そこには争いだけでなく交渉や妥協・合意も生じるが、通常は「政策に関する交渉や議論、合意」といったものは含んでおらず、「政治家達の私的利益を巡る争い」というニュアンスが強い。

「内閣支持率」

議院内閣制における、内閣の支持率のこと。すなわち政権の支持率でもある。基本的には議院内閣制であれば内閣を構成するのは与党であるため、与党への支持率と内閣支持率を分ける意味はないともいえるが、与党内の政策の相違や有権者と個々の政治家との繋がりの強弱によってそれぞれの支持率に開きが生じることも多く、あまりにも乖離した場合は与党内での政局問題となる。

「支持率万能論」

政府や政党、政治家が、世論調査によって示される支持率に振り回されて政局問題となったり、支持率を上昇させるために大衆迎合的な政策を場当たり的に採用する様を批判する言葉。支持率万能論が蔓延する状況下では長期的な視点による大きな政策を実施し得ないことによる。

「組織票」

選挙において投ぜられる票のうち、特定の政党や候補者が支持をとりつけた組織・団体によって組織的にとりまとめられて投ぜられる票を指す言葉。いわゆる「固定票」の一種。典型的には、従前から特定の政党・候補者を支援する利益団体や企業、地元の自治組織といったものによって行われる。組織票の確保は重要な選挙戦術であるが、組織票のとりまとめの際に強権的手段に出る場合もあり、しばしば問題となる。

「固定票/浮動票」

選挙において投ぜられる票のうち、基本的には特定の政党や候補者に投ぜられると考えられる票のことを「固定票」という。対して、その時々の政治・社会・経済状況によって投ぜられる対象が変化すると考えられる票のことを「浮動票」という。要するに、特定政党・候補者の安定的な支持者の票が「固定票」であり、無党派の票が「浮動票」である。

「岩盤支持層」

ある政党や候補者を安定的に支持する人々のこと。微妙な区別ではあるが、その政党や候補者との間に何らかの強いコネクションを持っているが故に支持している人々というよりは、理由は不明瞭であるものの事実として安定的に支持している人々を指して用いることが多い。

「供託金」

法令によって行政機関に対し預けられた金銭のこと。ただし多くの場合は「選挙に立候補する際に一時的に行政機関に預け、選挙で一定以上の得票を得られなければ没収される金銭」を指す。いわゆる泡沫候補や売名目的の立候補を防止するための仕組みであるが、その金額が高い場合には被選挙権の制限として批判される。なお、日本における供託金は国際的に見ても高額な部類。

「政見放送」

日本で選挙の際にラジオやテレビで放送される、立候補者・政党・政治団体が自らの主張や見解を述べて有権者にアピールする番組のこと。ほぼすべての候補者がその資力にかかわらず有権者に訴えかける貴重な機会の一つであり、公職選挙法によって衆院選・参院選・都道府県知事選の候補者はNHK・民法に対し無料で政見放送の実施を求めることができることが定められ、、多くはNHKによって放送されている。放送の際には放送局による編集は許されず、その代わりに内容に関する責任から免責される。放送日時やプログラムは中央選挙管理会・都道府県選挙管理委員会と放送局との協議により決定され、収録方式は候補者の製作した映像の放送かスタジオ収録によるが、比例代表候補と都道府県知事候補に関してはスタジオ収録のみとなっている。なお、政党要件を満たさない政治団体や無所属の小選挙区候補者には政見放送が認められていない。

「スピンドクター」

世論操作を得意とする者、世論操作を専門とする者を指す言葉。実際には世論操作というほどのものではなく、政治家・政党の広報や選挙コンサルタントといった、政治家・政党のメディア戦略を担当する人々を指す言葉として使われる。


社会主義関連

「資本主義」

キャピタリズム。私有された「資本」の自己増殖の過程として生産活動が行われる経済体制のこと。「資本」の私有を前提に、「人々が自らの資本を用いて商品を生産・売買することで利潤を得て、資本を増やす」サイクルを、生産活動の中心とする経済体制のこと。この際、資本を持つ者(資本家)の生産活動は、資本を持たない者(労働者)の労働力を買い取り、自らの資本として働かせるという形態をとる。社会主義や共産主義の対義語であるが、それらは思想やイデオロギー、社会・政治・経済の体制全てを含み込んだ概念である一方、資本主義はもっぱら経済体制のみか、社会・経済体制を指して用いる。

「資本」

過去の生産活動で生み出され、新たに別の生産活動をするために投入される生産物のこと。土地・労働力と並ぶ「生産要素(生産三要素)」の一つ。さらに「マルクス主義」では、資本は自らが新たな価値を生み出し続けて自己増殖しつづける存在として理解しており、この資本の自己増殖を根本原理として成り立っている経済体制が「資本主義」である。

「生産様式」

人々が生産するモノやサービスが、どのような形態で生産されるかを指す言葉。特に「マルクス主義」において重要な概念。マルクス主義において生産様式とは生産力(生産に用いられる様々な力。労働力や設備)と生産関係(設備を誰が持つかや、生産に関わる人々の関係)の総体をとらえた歴史的・社会的存在であり、原始共産制・古代奴隷制・中世封建制・近代資本制・社会主義制の順で発展して社会の姿を規定するとされる。

「革命的合法性」

1920年代のソビエト連邦における「合法性」の理解。通常の合法性は法律の厳格な遵守を意味するところ、革命的合法性では法律が現実に即さず合目的性(ここでは、革命という目的に沿っていること)を欠くと判断された場合には、その法律を適用しないことも許されるとする。当初の革命的合法性は、あくまでも民主的に制定された法律の遵守を前提に、却って法律の遵守が問題を引き起こすような場合に現場判断でそれを回避することを認めるという程度のものであったが、後のソ連の政治・社会情勢の変動や力関係を経て、ソ連共産党による違法行為や強権行使を正当化する「社会主義的合法性」原理に変質した。

「社会主義的合法性」

1930年代のソビエト連邦における「合法性」の理解。通常の合法性は法律の厳格な遵守を意味するが、社会主義的合法性では法律の制定権者すなわち「プロレタリアート独裁」を指導する立場にある機関に限り、法律が革命の目的に沿っていないと場合には法律を無視することこそがむしろ法の合理性に資する(=合法性がある)とした。ソ連の法整備の遅れを乗り越えて国内を統制するための考え方だが、当時のプロレタリアート独裁はもはや民主的な独裁ではなかったため、権力の乱用をただただ無限に正当化する事態に陥った。

「前衛政党論」

主にマルクス・レーニン主義の主張の一つ。社会変革、端的には革命を目指す際、知識・能力の不足した大衆による自発的な達成は期待できないため、知識・能力を十分に持つエリートが前衛に立って大衆を指導・先導しなければならず、党はそのためのエリート組織でなければならないという考え方のこと。「エリート主義」の一種。共産主義勢力のみならず、中国国民党などにも組織原理として影響を与えた。

「レーニン主義」

基本的には「マルクス・レーニン主義」すなわちレーニンによって定式化されたとされるソ連の社会主義思想を指す言葉。しかし、少数の例ではあるものの、「マルクス・レーニン主義から共産主義の要素を除いて政治戦略・組織理論を抽出したもの」を指して「レーニン主義」と呼ぶ例がある。この意味でのレーニン主義は非・反共産主義勢力にも影響を与えており、例えば初期の中国国民党はレーニン主義の影響を強く受けている。

フェミニズムなど

「ガラスの天井」

グラスシーリング。企業や官庁といった組織その他で働く女性やマイノリティが、十分な能力や実績があるにもかかわらず一定以上の昇進ができない状況を表す言葉。1980年代後半のアメリカにおいて登場した言葉。昇進できない理由が特に明確に示されることのない「見えない天井」であることからこのように呼ばれる(なお、明確にしていた場合は明らかな差別として問題になる)。

「ガラスの崖」

グラスクリフ。女性が企業などで高い役職に就いた後に訪れる職務上の困難のこと。ただしここでの困難とは単に当人が女性であることによる困難を指しているわけではなく、「そのような役職に女性が充てられる場合、多くは経営難や大きなスキャンダルといった苦境への対応としてのイメージアップ戦略に過ぎない」ことによる困難であり、「ガラスの崖」とは男女問わず解決が難しい困難が事実上女性に押しつけられている状態を指す。

「ピンクウォッシング」

国家や企業などによる「自らが性的マイノリティに寛容であることをアピールしてイメージアップを図りつつ、それによって別のマイノリティへの抑圧から目を逸らさせる」戦略や、「自らが性的マイノリティに寛容であることをアピールしているが、実際は口だけであり、行動が伴っていない」様子を批判的に指し示す言葉。イスラエルが性的マイノリティに寛容な姿勢をとる裏でパレスチナ人への抑圧を止めていないことを指して用いられたのが初出。

刑罰論

「刑罰論」

国家が犯罪者に課す刑罰は端的に言って国家が犯罪者に科す害悪だが、それはなぜ正当化されるのか。また正当化される刑罰はどのようなものかに関する理論の総称。さらにここから、刑罰には何か目的があると考えてその見地から正当化を図るものを「刑罰目的論」という。単なる犯罪の当然の報いとする「応報刑論」や、犯罪の抑止・予防が目的にあるとする「一般予防論」や「特別予防論」、社会を犯罪から守る目的とする「社会防衛説」といった学説がある。

「目的刑論」

刑罰の正当化根拠に関する学説の一つ。刑罰には犯罪に対する当然の報いを超えた目的があり、その目的を達する限りで刑罰は正当化されるという考え方。ほとんどの場合その目的は犯罪の予防であるため、予防論、予防刑論とも言い、様々な派生がある。刑罰に当然の報いを超えた目的を付加することでより強力な正当化を図ったものだが、他方、犯罪の軽重と刑罰の軽重を対応させる根拠がなくなるため、「軽い犯罪に重い刑罰」や「重い犯罪に軽い刑罰」という事態を許す問題がある。

「社会防衛説」

刑罰の正当化根拠に関する学説の一つ。刑罰を社会を害悪から守るために犯罪者を無害化するための措置として理解し、その限りで刑罰が正当化されるという考え方。この考え方は、未だ罪を犯していない人物であっても、その人物がいわゆる犯罪者予備軍であるとすれば将来の犯罪の予防を名目にして刑罰を科すことが可能になるという危険性を持つため、現代ではほとんど支持されない。「目的刑論」の一種にして、その極端な形態。

「絶対的応報刑論」

単に応報刑論とも。刑罰の正当化根拠について、刑罰は犯罪行為に対する当然の報いであってそれ以外の正当化根拠は全く要さないとする学説のこと。言い換えれば、刑罰を科すことはそれ自体が目的であり正義であるという考え方。カントの「人を手段としては扱ってはならない」という主張や、ヘーゲルの「犯罪は法の否定、刑罰は法の否定の否定」という主張を起源とする。この学説は「罪刑の均衡」を絶対視しており、また自由意思による行為でなければそもそも犯罪としないという特徴を持つが、一方でこれを採用すると、犯罪による害悪に刑罰による害悪が付加されるに過ぎない事態を引き起こすため、現代では支持されない。

「相対的応報刑論」

刑罰の正当化根拠に関する学説の一つ。刑罰を単なる犯罪に対する当然の報いと捉える「応報刑論」を前提に、その範囲内で刑罰の存在による犯罪の予防(「一般予防論」)と再犯の抑止(「特別予防論」)を追求することで、刑罰が正当化されるとする考え方。もしくは犯罪の予防・抑止を目的に、その手段が応報としての刑罰であれば、刑罰が正当化されるという考え方。日本における通説。応報刑論による犯罪と刑罰の対応関係を維持しつつ、予防論によってより強い正当化を図ったものだが、応報刑論と予防論の間の関係やそれらの使い分けの正当化が難しい。

「消極的一般予防論」

威嚇刑論、威嚇的一般予防論とも。刑罰を、国家による「人々の恐怖心に訴えかける威嚇」や、「人々の損得勘定に訴えかける不利益の強制」として捉え、それらによる犯罪の抑止・予防を刑罰の目的とする学説。この学説では刑罰はその存在自体が本質であり、刑罰を実際に執行することは刑罰という威嚇や強制の存在をアピールする手段に過ぎないため、刑罰を執行される当人にとってその刑罰に意味がないこと、犯罪の軽重と刑罰の軽重を対応させる根拠がないこと、また人間を善悪判断のできない存在として捉えていることといった、総じて言えば「人間を客体視しており、自律的な個人として扱っていない」という批判がある。

「積極的一般予防論」

刑罰の目的を何かしらの予防・抑止にあるとする学説で、刑罰を、人々を威嚇したり心理的な強制に服させるのではなく、人々の規範意識や法秩序に対する信頼に訴えかけるものであるととらえるものの総称。刑罰の存在が人々の規範意識を覚醒させて犯罪を予防するとする学説や、人々の法秩序への信頼を高めることで社会の混乱を予防するとする学説、そして犯罪によって揺らぎかけた法秩序が崩壊することを予防するための反作用とする学説がここに含まれる。前者二つは「消極的一般予防論」の「人間を自律的な個人として扱っていない」問題をある程度解決している一方で、刑罰はあくまでも「犯罪行為が悪である」ことをアピールする手段に過ぎないため、犯罪の軽重と刑罰の軽重を対応させる根拠が弱いという問題は残る。一方、最後の学説はもはや犯罪の予防を目的としているわけではないため、「予防論」と言いがたいところがある。なお、刑罰の存在による人々の規範意識の覚醒については、既存の規範意識を覚醒させることに加えて、新たな社会規範を形成することも含める場合があるが、これは元々の積極的一般予防論の趣旨というわけではなく(日本での独自発展)。元々はドイツにおける学説。

「特別予防論」

教育刑論とも。刑罰の正当化根拠に関する学説の一つで、刑罰は「一度犯罪をした犯罪者が、もう一度犯罪をするのを抑止・予防するための手段」であるから正当化できるとする考え方。特別予防論は刑罰を犯罪者の更正・社会復帰もしくは社会からの隔離の手段として捉えており、ここから生じた仕組みが「執行猶予」や「仮釈放」である。なお、特別予防論では刑罰の軽重を犯罪の軽重ではなく犯罪者の犯罪性の軽重に対応させるため、軽い罪で重い刑罰、重い罪で軽い刑罰ということが十分にあり得る上、そもそも刑罰が権利侵害の一種であることを捨象したパターナリズムと化す危険性を孕み、さらに犯罪者を「公共の利益のために矯正されるべき存在」として客体視していることは一般予防論と変わらない。

「抑止刑論」

刑罰の正当化根拠に関する学説の一つ。刑罰の目的を犯罪の抑止とし、「国家による刑罰が正当化されるのは、その刑罰が犯罪の抑止に効果がある限りである」とする考え方。刑罰が犯罪の当然の報いとして科せられる害悪・必要悪であることを承認し、その上で、刑罰が人々の規範意識に訴えかけて犯罪を抑止する効果の有無によって害悪(刑罰の重さ)の適正化を図り、その際には応報刑論による罪刑の均衡を採用する。「予防論」の「罪と罰を均衡させる根拠を提示できない」ことや「人間を自立した個人として捉えていない」問題に応えうる説であり、有力説とされる。ただし、応報刑論による罪刑の均衡をなぜ適用できるのかが不明という問題点も指摘されている。

「罪刑の均衡」

犯罪者に刑罰を課す際には。重い罪には重い刑、軽い罪には軽い刑といった形で、犯罪の重さに応じた適切な刑罰を課さなければならないという考え方のこと。刑罰とは端的には犯罪者に対し害悪を加えることであるため、野放図に重い刑を課すことは単なる社会の害悪の増加となってしまい、また人権保障の観点からしても望ましくなく、逆に過度に軽い刑としたのでは制裁としての意味がないため望ましくない。特に「応報刑論」が強く持つ原理であり、また「同害報復」はその徹底した形である。

司法関係・憲法

「人質司法」

日本の刑事司法制度において被疑者を長期間にわたって拘留することで自白を引き出そうとする手法が常態化していることを批判する言葉。逮捕に伴う拘留期限は、被疑者の社会生活への支障を過大としないために原則10日と定められ、さらに10日延長できるが、その期間を過ぎる場合に別の罪(微罪)によって再逮捕することで延々と拘留し続けることも可能となっている。被疑者が長期間拘留されている状態が「人質に取られている状態」を連想させることから名付けられた。

「修復的司法」

修復的正義とも。犯罪によってその被害者やコミュニティが被った損害を回復させることを、刑事司法の役割として重視する考え方のこと。典型的なものとして犯罪加害者と被害者の間の対話を通じた関係修復とその帰結としての和解や示談がイメージされやすいが、修復的司法はより広い概念であり、被害者・加害者以外が当事者として関わることや、被害者の訴訟手続きへの参加、刑罰の代替としての損害賠償や社会奉仕といったものも含まれうる。従来の司法が刑罰を抽象的な法秩序・法益を侵害した犯罪者に対する制裁として捉えており、個別具体的な被害者やコミュニティの利益を十分に考慮していなかったことに対する批判から生まれたもの。

「政策形成訴訟」

自らの法的な利益のためではなく、国家や世論に対して問題提起し、自らの主張をアピールするために行われた訴訟のこと。公害訴訟や選挙制度関する訴訟、差別に関する訴訟のいくつかがこれにあたる。通常の訴訟はあくまで自己利益のために行うものであるが、政策形成訴訟はそうではないため、求める賠償金が異様に低額であったり、勝訴の見込みがなくともあえて行われたりすることもあるが、通常の自己利益を求める訴訟が政策形成訴訟を兼ねる場合ももちろん多い。

「憲法現実」

規範としての「憲法」から区別された、憲法が実際に現実において機能しているあり方を指す言葉。そもそも現実が既に望ましい状態なのであればわざわざ憲法によって理念や規範を提示する必要はなく、必然的に現実は憲法の規範から乖離している。また憲法はそれが現実に機能する際には、抽象的な憲法の条文が一字一句そのまま機能することはありえず、各機関や人々による現実をふまえた解釈を経て具体化されることで初めて機能するため、この解釈・具体化の際に憲法の規範から逸脱することもあり得る。そういった憲法の規範から乖離しうる、憲法に関わる現実を言い表したのが、憲法現実である。なお、違憲審査は、この憲法規範と憲法現実の乖離を解消するための仕組みである。元々はドイツ国法学における概念。

「個人情報」

ある個人に関する情報で、その情報を用いればそれが誰についての情報なのかを特定できるもののこと。名前や生年月日、住所や電話番号といったものがあたる。なお、単独では特定できなくとも、複数組み合わせて特定できるならば全て個人情報とみなされる。ただし、死人に関する情報は多くの場合含まない。日本では「個人情報保護法」によってその取り扱いについて定められている。なお、「プライバシー」とは重なるところもあるがあくまで別の概念である。

「プライバシー」

プライバシーの権利とも。自己に関する情報をコントロールする権利のこと。元々は「放っておいてもらう権利」、すなわち他者が自らの私生活について詮索したり、介入したりすることを拒否する権利として、有名人の私生活がパパラッチなどによる興味本位の報道の対象となることを防ぐために登場したものだったが、現在では情報化社会の進展によって個人の私生活に関する情報が様々な経済・社会活動で利用されるようになると、それら情報を本人の意志で管理するための権利として再構成された。

「公務員の憲法尊重擁護義務」

公務員に課せられる、その国の憲法の規定と精神を忠実に守る義務のこと。日本国憲法では第99条に規定。憲法の規定・精神に関する宣誓義務を定めたり、国家転覆を目論む団体への加入を公務員の欠格事由とする法令の根拠。通常、公務員が憲法改正を主張することはこの義務への違反とはならないが、憲法に定められる改正手続きに違反する意図がある場合や、憲法の規定・精神への侮蔑が籠もっている場合、その主張によって公務員としての職務の公正性に疑いが生じる場合には、違反の可能性が生じる。

「日本国憲法第99条」

日本国憲法の「公務員の憲法尊重擁護義務」を定めた条文。天皇または摂政、国務大臣、国会議員、裁判官、その他公務員に対し、憲法の各規定とその精神を忠実に守る義務を課すもの。この条文自体は何か法的効果をもたらすものではないが、公務員が就任する際の宣誓義務や、公務員就任の欠格事由などとして法制化されることで法的効果が生じる。なお、日本国憲法に憲法改正手続きの規定があるため、憲法改正の主張をすることのみではこの義務への違反にはならないが、その主張をすることによって公務員としての職務の公正性に疑いが生じる場合や、憲法の規定・精神に対する侮蔑が含まれている場合などには問題となりうる。また一般の国民については、当然憲法を尊重するものとして前提されているとする説や、公務員が憲法を守っているかどうかを監督する立場にあるといった見解がある。

「人民立憲主義」

憲法を解釈する権限はあくまでも人民に帰属しているのであって裁判所が独占的に保有すべきではなく、また実際に憲法規範の形成とその執行は人民による承認と実践に懸かっているとする憲法学理論の総称。2000年代のアメリカ憲法学において司法積極主義や司法権の優越、そして違憲審査権を批判・否定する革新派の学説として登場し、その後民主政治における人民の実践を通じた憲法規範の形成と執行、すなわち立憲主義の民主的要素を重視する立場として現在まで一定の影響力を保持している。違憲審査権の否定までを視野に入れた初期のものは第一波、その後の司法権の優越や違憲審査権をある程度是認した上でその役割を相対化するものを第二波として分ける場合があり、前者にはタシュネット、レヴィンソン、クレイマー、ウォルドロン。後者にはドネリー、グリフィン、シーゲルがおり、その間にはポゥストが入る。またこの二つの違いは主張の内容だけではなく、研究の方向性や方法論(いわば理論から実証へ)の変化にも基づいている。


その他

「アンシャン・レジーム」

旧体制、旧秩序などと訳。1789年に起こった「フランス革命」以前のフランス社会、端的には16-18世紀の絶対王政・封建制による秩序や価値観その他を包括的に指す言葉。元々は革命によって打倒されるべき秩序というニュアンスを持つ言葉であり、革命以後のフランス国民が自らの旧体制との明確な断絶意識を示す際に用いたものだったが、現在では16世紀から革命前夜までの初期近代を指す中立的な時代区分用語となっている。

「国境なき医師団」

MSFと略。1971年にフランスで設立された世界最大の医療NGO。紛争・災害・貧困地域において、政治・経済・宗教から独立した形で医療を提供すべく活動しており、1999年にはノーベル賞を受賞している。6万3000人を超える人員を抱えているが、その全てが医師・看護師というわけではなく、半数近くは医療設備設営や必要物資などのための人員である。資金のほとんどは寄付によって賄う。また医療活動だけでなく、現地の人権侵害や暴力の状況について社会に対し証言することも重要な使命とする。

「国境なき記者団」

RSFと略。1985年にフランスで設立されたジャーナリストのNGO。人々の「知る権利」とそのための「言論の自由」を守ることを目的に、報道・啓発活動や各国政府による報道規制や情報統制、ネット規制の監視・抗議活動の他、逮捕されたジャーナリストの救出活動や亡命支援、その他裁判などでの法的支援、保険その他の経済的支援などを行っている。活動資金の8割近くは寄付で賄われる。毎年「世界報道自由度ランキング」を発表していることでも有名。

「低強度紛争」

LIC。武力紛争の中でも大規模ではないものを広く指す言葉。何をもって「低強度」とするかが不明確な曖昧な概念であり、戦術に着目してゲリラ戦やテロ活動、特殊部隊の活動によるものを指すこともあれば、頻度に着目して軍事衝突が散発的にとどまるものを指す場合や、紛争の主体に着目して国家ではない軍事組織によるものを指す場合、地域に着目して自国外への軍事介入を指す場合もある。第二次世界大戦を想起させる国家同士の全面戦争「ではない」武力紛争を広く指しているともいえる。

「受動的サイバー防御/能動的サイバー防御」※それぞれ分割

共にサイバー攻撃に関する防御手法の類型。武力攻撃の一環としてサイバー攻撃を受けた際に、自衛権の発動として相手サーバーに侵入するなどしてサイバー攻撃を阻止する手法を「受動的サイバー防衛」と言う。対して「能動的サイバー防御」は、常時インターネットを監視してサイバー攻撃の可能性にかかわる情報を収集し、武力行使に至らずとも、サイバー攻撃の恐れがある際に予防措置として、相手サーバーに侵入するなどしてサイバー攻撃を阻止する手法を言う。なお、後者は自衛権の発動ではない。

「ゆりかごから墓場まで」

社会福祉制度の充実、とりわけ19世紀後半に先進各国で確立した「福祉国家」を形容する言葉。生まれたときから死ぬまで、すなわち人の人生のすべてを国家がサポートするという理念を表現したもの。元々はイギリス労働党がその社会保障拡充方針を言い表すために用いたスローガンである。


「国際私法」

抵触法とも。私人間の国際的な法律問題・法的紛争を対象とする法分野・国内法のこと。原則として国際法はあくまで国家間の法であるため、私人間の法律問題を解決するさいに依拠すべき国際法は存在せず、それらはあくまでも各国の国内法・国内裁判によって解決される。しかしこの私人間の法的紛争が貿易や国際結婚のように国際的なものであった場合、どの国の法律・裁判によって解決すべきかが問題となる。この問題を解決するための法分野・国内法が、国際私法である。

「トリガー条項」

法律や条約、契約などにおける、事前に設定した条件を満たした場合に自動的に有効化され発動される条項のこと。日本では主にガソリン税に関して2010年度に導入された「ガソリン平均価格が3ヶ月連続で1リットルあたり160円を超えることを条件に、ガソリン税を25.1円減額する」条項を指す。ただしこのトリガー条項は2011年の東日本大震災の復興財源を確保するために凍結されており、2023年12月現在も凍結が継続中。

「法案発議権」

立法府すなわち議会など「法律を制定する権限を持つ機関」に対して自らの望む法律案を提示し、法律制定のための手続きを開始させる権限のこと。当然のことながら、そもそも法案が立法手続きに乗らなければ法律は制定されず、その法律に基づく政策も行い得ないため、重要な権限である。多くの場合、議院内閣制では議会議員と内閣が保持し、大統領制では議会議員のみが保持する。

「環境アセスメント」

環境アセスと略。環境影響評価とも。発電所や高速道路、ダムなど建設や森林伐採・埋め立てといった大規模開発事業を行う際に、事前にその事業による環境への影響を予測・評価する手続きのこと。事業者自らによる調査だけでなく、専門家や行政、そして地域住民の意見も交えることで、総合的な観点から環境負荷の小さい開発事業を実現しようとするもの。1969年にアメリカ国家環境政策法として成立し、その後日本では1997年に環境影響評価法として法制化された他、各地方自治体が独自の制度を持つ場合もある。

「ハロー効果」※ホーン効果を分割

光背効果、後光効果、ハローエラーとも。人物その他なんらかの対象を評価する際、その対象の目立つ特徴に引きずられて誤った評価を下してしまう現象のこと。認知バイアスの一種。政治においては、一度良いイメージがついた政治家が後に悪い行動や施策をとっても好意的に見られる現象として現れたりもする。なお、対象の悪い特徴に引きずられて対象の全てを悪いものとして評価する現象は逆ハロー効果や、ホーン効果と呼ばれるが、原理はハロー効果と同じ。

「エージェンシー問題」

国家の統治機構や企業組織など何らかの組織における、エージェント(代理人・被依頼人・被授権者)が必ずしもプリンシパル(本人・依頼人・授権者)の利益のためには行動しないことによる問題。これによって生じる不利益を「エージェンシー・コスト」と呼ぶ。エージェントはプリンシパルの利益を代わりに追求することに同意するからこそエージェントたり得るが、実際にその通りに行動するよう保証することはいかなる方法をもってしても不可能であるため、この問題が生じる。

「統合政府」

政府と中央銀行を一体として把握し、その会計を合算させたもの。国家の財政状況を評価する際にしばしば用いられる視点。この視点を用いる主張を「統合政府論」と言う。中央銀行は政府からの独立性が規範的にもしくは建前として求められ、実際に制度の上でも一定の独立性が担保されている。統合政府論はこの「中央銀行の独立」という建前を前提とした上で、財政評価においてはそれらをあえて無視して捉える方が実態に即しているとする主張、もしくはその建前自体の放棄を求める主張である。

「ブラケットクリープ」

税率が所得額に完全に比例して適用されるのではなく一定の段階(ブラケット)毎に適用されるタイプの所得税制において、インフレーションによる物価と名目所得の増大に伴って所得税負担が過度に増大する現象。累進的な所得税制で所得が増大すれば所得税も増大するのは当然である。しかしここでインフレによる名目所得の増大で一つ上のブラケットに入ってしまった場合、物価上昇で実質賃金は上がっていないにもかかわらず、より高い所得税率が適用され、所得税負担だけが急激に増大することになってしまう。

「固定費用/限界費用」

モノやサービスの生産にかかる費用(コスト)のうち、開発費や工場建設費、設備投資費のように生産量の多寡にかかわらず発生する費用を「固定費用」。その工場などで一度生産が開始してから、生産量を増加させることで発生する材料費や輸送費、人件費といった追加費用を「限界費用」という。なお、ある程度相対的な区別であり、とてつもなく長期的に考えれば固定費用は存在しなくなるとも言えるが、そこまで考慮することの意味はほとんどない。

「ナチズム」

ナチスすなわち国民社会主義ドイツ労働者党と、その統治していた時期のドイツのイデオロギー。またその政治体制や社会状況、諸政策を含む場合もある。「ファシズム」の派生の一つ。全体主義、反個人主義、反共産・社会主義、環境主義、優生思想、男尊女卑や弱肉強食的な世界観といった様々な要素を、「民族共同体の維持と防衛」という民族主義によってより合わせたもの。ただし体系化された思想というわけではなく、ナチス内の人々であってもその理解には相当の差異があった。

「ナチス」

かつてドイツに存在した政党である、国民社会主義ドイツ労働者党の略、蔑称。民族主義・反ユダヤ主義・反共産主義を軸とし、ワイマール共和国末期の政治的混乱とそれに伴う既成政党への失望感の中で勢力を拡大し、他の政党を禁止・解散させて一党独裁の「全体主義」体制を構築。公共事業の拡大と経済統制、軍拡、対外拡張政策による経済回復を目指し、第二次世界大戦の原因にもなった。なお「社会主義」とつき、その思想には社会主義の影響もあるものの、社会主義の持つ国際主義の要素を持たず、ナチス自体も反共主義の立場をとったことから、社会主義の一種とは見なされていない。

「ネオナチ」

ネオ・ナチズムの略。第二次世界大戦後・ナチス政権崩壊後のヨーロッパにおける、ナチズムを継承している、もしくはナチズムを想起させる排外主義的・優生思想的主張・活動を行う極右政治団体・運動を広く指す言葉。1960年代頃からヨーロッパ各地に登場して政治・社会問題化し、アメリカ大陸などにも拡大し、しばしばネオナチによるテロ活動やヘイトクライムも発生している。ネオナチと称される団体・運動は数多くあるがためにその内実も多様であり、自ら積極的にナチスの継承者を自認するものもあれば、ネオナチと呼称されることを嫌うものもある。現代ではネット上に活動を拡大しており、新たな形で社会問題化している。

「はどめ規定」

1998年度改訂の学習指導要領(2002年実施)の小学校5年生理科における「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」、中学校保健体育における「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という規定のこと。小中学校における性教育を阻害する規定としてしばしば批判される。
ただし、この規定が行われた経緯は不明なところも多いものの、本来の目的はいわゆる「ゆとり教育」による授業時間数削減に対応して教育内容を絞り込むことにあったとされる。

「学習指導要領」

日本の初等教育・中等教育(小・中・高校など)における教育カリキュラムの基準。文部科学省によって定められ、約10年に一度改定される。生徒に教えるべき教科と時間数、内容や方法その他留意事項についての基準を定めたものであり、法的拘束力を持つ。あくまでも最低基準を定めたものであり、それ以上の事柄は現場教員の裁量にゆだねられているとされているが、現実的な裁量の余地は小さいと指摘される。

「教科用図書検定」

教科書検定。日本において4年ごとに行われる、初等・中等教育用の教科書が日本の初等・中等学校で用いうる内容となっているかを、教科用図書選定基準に基づき文部科学省が判定する検定。この検定に合格した教科書は検定済教科書と呼ばれ、その中から公立学校の場合は各教育委員会の、国立・私立学校の場合は校長の権限で、教科書として採択される。

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