短歌人2018年4月号 同人2欄(2)

南天の目を入れやるに雪うさぎ汝がふるさとの空をあふげよ
「十日目の雪」/池田弓子

初春の富士の頂きつやめきてめうにうれしいね ともかく生きろ
「とにかく生きろ」/田上起一郎

栓をするのを忘れてしまい排水口に金魚をすべて流した記憶
「厳冬の日日」/桑原憂太郎

ふたをあけたグランドピアノから音は降る 風雪の中にゐるやうに酔ふ
「ポーランドにて 2」/如月佳

京都府から葉書来ており漢字ばかり十八個並び息つぎできず
「居住者様」/津和歌子

死をもって償うべしの伝統が死刑廃止に歯止めをかける
「待場の景色」/野上卓

ひとすぢのあしあとのみぞひかりゆくそのはじめくらかりし地上を
「そこにゐる」/辻和之

英雄トスカニーニの追悼に「エロイカ」を振るワルターなりき
「ワルター」/針谷哲純

ふたりよりひとりの好きなわれの持つ少し厚手の帆布のかばん
「やさしく透ける」/有朋さやか

ときに雪ときに青さの谷まりて零度を越ゆる大いなる空
「真冬」/小西芙美枝

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