短歌人2018年4月号 同人1欄(2)
浅草にかつてありたる大塔の基礎がみつかる 第一報はさへづり
「二月の六日間」/花笠海月
こめかみに眼鏡のつるを沈ませて核のボタンをまさぐりやまず
「酒、雪」/栗明純生
はねられしイタチの前にかがみゐる鼻にピアスのをとこ三人
「黙祷」/原野久仁子
耳に蓋はないはずだけどとある午後みんなの声が遠ざかりゆく
「耳に蓋」/砺波湊
望月がのぼりて月蝕たのしみと待つ間に雪のおそいて終る
「雪の緞道」/寺島弘子
アロンアルファに踵(かかと)のひびわれ固め立つ冬の稽古を力士かたれり
「スサノオもまた」/池田裕美子
「月をこそながめなれしか」滅びたる平家の女官の恋おもひ出づ
「初雪」/加藤満智子
壇蜜がしずかに選りし言(こと)のよさテレビの人の間に一人
「お父さん」/小野澤茂雄
「解散!」と笛の音たかく八朔の砂瓤(さじょう)のつぶの終の濁点
「柿右衛門」/藤井良幸
「あの人と比べてもしやうがない」谷川さん語る羽生さんのこと
「春を呼ぶこゑ」/渡部崇子