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【小説】黒く塗れ(あとがき)

 最後までお付き合いいただきましてどうもありがとうございます。


 「黒く塗れ」はいかがでしたでしょうか?  人生にはいたるところに思わぬ敵がいます。目に見える敵はそれでもまだ良い方でしょう。昔むかし、欧米の方がこう言いました。

 「日本のヤクザは怖くないよ。だって一目でヤクザってわかるからね。僕たちの国のマフィアは見てわからないからもっと怖いんだ。」

 なるほど、日本ではヤクザは必ずそれ風の衣装を着ていてそれ風に振舞っていますから遠くからでも目立ちます。近付かなければ良いわけです。古い映画で巨大な鮫が人を襲う「ジョーズ」(1975)というのがありました。映画の予算が少なかった為に見た目にも恐ろしい大きな鮫の模型が作れず、仕方なく鮫の登場シーンは少なくなりました。ですから、人が喰われていても姿が見えないのです。それが逆に観客の恐怖感を煽り大ヒットになったそうです。

 さて、この「黒く塗れ」にも見えない敵が出てきました。お話の2/3程度まではその敵は味方でした。そしてエンディングにさしかかるところでそれは反転しました。

 こうした事は、皆さんも気付いているか、それとも気付かないかわかりませんが私たちの日常にも多くあります。私たちは身近な人や既にそこにある制度や習慣を味方だと考えて暮らしています。とても安全で守られている感じがしています。

 ですが、少し引いて見てみますと、その人や物事は味方なのかどうかが怪しくなります。

 両親が自分の為に塾へ行かせてくれて、学校へ行くお金を出してくれます。「あなたならきっとできる。頑張って。」と応援してくれます。社会では義務教育の後に高等教育や専門教育の制度が用意されていて、頑張ったらそのレベルに応じて就職先があり、務めた年数によって上がる給料が支給されます。あなたを少しでも有利にする為の資格制度もあります。妻は「あなた、今日も仕事頑張って来てね。」と毎朝送り出してくれます。政府はあなたに起こるもしもの事態に備えて保険や年金制度を用意してくれています。自動車に乗りたければ教習と免許制度があります。家が欲しければお金を貸してもらえます。その他あなたの味方になるものは実際にたくさんあります。

 素晴らしい国、素晴らしい社会があり、素晴らしい人々がそこにいます。でも、たった一つだけ、無いものがあるのに気付きませんか? 

 あなたの本当の希望をかなえる為のものは無いのです。

 それに気付いた時に、あなたは理解します。これまであなたの味方だと思っていた人も制度も物事も全て「あちら側」にあったのだという事を。


 「黒く塗れ」はこの電子書籍に収録されていたものです。note版では最後の部分のみ少し変更しています。この本にはこれ以外にもいくつかの作品が収録されていますのでぜひ読んでみてください。

その他の収録作品
 「ラビへ、I Hope You Dance」
 「リトル・トークス」
 「フレンズ」
 「警部の7日間 ワンス・イン・ア・ライフタイム」
※どれも単品でも出版していますがまとめて1冊の方がお得です。
 これらの作品の紹介はマガジンにあります。チェックしてみてください。

おまけ


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