りんごのように赤く艶やか【面白いショートショート見つけた】
とても興味深いショートショートを見つけたので紹介させていただきます。
最初にお知らせしておきますが、私はこの小説の意味を完全には理解できていません。ただ、この物語の構造がとても興味深いと感じます。そしてもう一つ考えるのは、この面白い構造が意図的に書かれたものなのか、偶然にそうなったものなのかがわからないという事です。
1)主人公とあやかの(半分の)別れ
×:主人公とあやかは、あやかの両親によって別れさせられる。
2)あやかの両親が亡くなります
〇:別れさせた両親が亡くなった。
3)あやかは主人公のところに戻ります
〇:あやかが戻る事
×:悲しみとともに戻った事
4)嘘をつく
上記の「悲しみ」だけを減じる効果となる。
→真っ赤で艶やか、美味しそう、綺麗
良い点だけが残るだろう。
→どこか暗みのある赤い・・・
あやかの両親によって別れさせられた事は主人公にとって悪い事です。ただ、近くには住んでいますからあやかを見る事はできて、あやかへの思いは消えません。
あやかの両親の死はあやかにとっては悪い事ですが、主人公にとっては良い事です。ここでは別れの状態とは逆のちぐはぐがあります。
主人公はそのちぐはぐを解消しようとして嘘をつきます。嘘の内容や論理性はここでは問題にはなりません。文章の中でもそれは主題とは外れますから放っておいて良いものと考えられます。
主人公はあやかに「死」を連想させたくない、それが嘘の狙いと言います。
その狙いは本当でしょうか?
嘘は主人公にとって艶やかで綺麗なものです。多少後ろめたいところはあります。主人公はこれによってあやかの理解者に勝手になってしまいます。
主人公の狙いをよそに、主人公はこの嘘によって欲望を満たす事ができます。りんごは「美味しそう」です。この無理矢理さが主人公の、エンディングまで語られなかったしたたかさのように感じられます。
深読みし過ぎかもしれませんが、とても面白い小説だと感じました。ありがとうございます。