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人生で1番、素敵なものを捨てる決断 Vol.14
仕事が絶好調の真っ只中、
突然、兄が電話をかけてきた。
「話があるんだけど 今週空いてる?」
人生ではじめての兄からの用事だった。
嫌な予感がした。
父の具合いがわるいのか
それとも母か。
数日後、2人で会った。
兄が開口一番
「お店をやりたいんだ」と
そこに大きな白紙の図面を広げた。
「お前にやってほしいんだけど」と兄がサラッと言ってきた。
数ヶ月前、諏訪商店と訣別したことや スーパーの社長への義理、スーパーの仕事が楽しいことなど ありとあらゆることが頭の中をうごめいた。
諏訪商店は何度も小売業にチャレンジしては失敗におわり、閉店を何度も経験してきた。餅は餅屋。卸売業で地に足をつけろと神様が言ってるかのようだった。小売業はいわば 諏訪商店にとっては鬼門。
兄は「最初は俺がやろうとおもったんだけど お母さんが小売りをやるなら聖二しかいない。聖二を連れて帰ってこいって言うんだよ」と言ってきた。
えーーーーーーーーーーーーー!!!
数ヶ月前 、スーパーの社長に三つ指立てて
「聖二をお願いします」って言ってたでしょ!!
お母さん!薄情 過ぎない?
お父さんはどうなの?!!!!
ってなるよね?
兄は
「最初は俺がやろうとおもったんだけど お父さんはお母さんがそういうのならお前が聖二を説得してこいって言ったんだよ」と言った。
えーーーーーーーーーーーーーー!!!
数ヶ月前、スーパーの社長に
「息子をよろしくお願いします」って
一点の曇りのないキリっとした顔で言ってたよね!!!!!!!!!
どういうこと?!!!!!
お兄ちゃんはどうなの?!!!!
ってなるよね?
兄は「最初は俺がやろうとおもったんだけど 考えてみたら俺はスーパーの社長とは約束していない」と今までみたことがないぐらい強い眼差しで自分の目をみて言われた。
いやいやいやいやいや
そういうことじゃないでしょ!!!!
人としてどうなの?!それ!!!!!
我が家は根っからの商売人。表の顔と裏の顔。
次男坊の自分は帝王学ゼロ。
商売人の怖さを知った。
と適当に書いたけど
あれだけウソをつくことを許さなかった母が人との約束を反故にする。
あれだけ誠実で真面目な父が目をみて言った約束を反故にする。
バカな弟には1ミリの期待もしてこなかった6歳離れた兄がはじめて頭をさげる。
バカな自分でもそれがどういうことだかはわかった。
翌日、スーパーの売場に立ち
自分が自由にお店をゼロからつくれるのっていつなんだろうか?20年後?30年後?と考えていた。
バイヤーを束ねたり、店長にアドバイスしたりする「スーパーバイザー」になることが自分の目標だった。
「お店をゼロからつくる」世界なんて
想像もしていなかった。
大好きなスーパーの売場、仲間、何万枚の思い出、未来、社長からの期待、一緒に叶えるはずだった夢それらを捨てることができればもっとキラキラする世界が待っている。あるはずのなかった自分の出番は 家族に頼られ、信頼され、大げさではなく はじめて自分が生まれた意味を感じた。そして人生で はじめて自分がつくる未来を想像してわくわくした。
何かを捨てれば何かを得る。そんなの口では簡単に言える。でも捨てなきゃいけないものが人生で1番素敵な時間を与えてくれているものだったら・・・。
24歳には残酷すぎる決断だった。
そして人生で1番 薄情で、何歳になっても一生背負っていかなければいけない 深い傷になる決断をする覚悟を決めた。
そして社長に退職の話をすることを決めた。
手の震えがとまらなかった。
諏訪聖二 房の駅を立ち上げるまで
あと6ヶ月。
文章にしてみるとあっけない決断だけど
人生を左右する決断だと わかってたし
後にも先にもこんなに考えた決断はないと
言い切れる。
自分で言うと自信過剰に思われるかもしれないけど
自信過剰だから言ってしまおう。
諏訪商店にとっても吉と出るのか凶と出るのか
諏訪商店史上最大のターニングポイントだったとおもう笑