鏡の中 《詩》
「鏡の中」
ある種の鳥が
綺麗なビー玉を収集する
来る日も来る日も集め続けている
其れは世界を構成している精神性な
ファクターであるかの様に
ある結論をもたらす
大切な因子であるかの様に
僕の前では頭の狂った人間達が
其れにうなずいている
夜は足速に過ぎ去り
僅かな月明かりに照らされて
鏡がゆっくりと静かに光を持つ
其処に僕が映し出される
しばらくして奇妙な事に気がつく
鏡に映る像は僕では無い
正確に言えば
僕の外見を持つ僕以外の誰かなんだ
やがて鏡の中の奴の手が動き始める
ゆっくりと奴の両手の指が
首筋を締め付けてゆく
気がつくと
僕も奴と同じ事をしている
まるで僕の方が
鏡に映し出された像の様に
奴は現実の僕を
支配しようとしている
夜空の月は雲に隠れ
僅かな明かりが消えて行く
そして奴も消え行く
そうだ
最初から其処に
鏡なんて無かったんだ
僕の足元には
無数のビー玉が散らばっていた