ミッシェル 《詩》
「ミッシェル」
世界が燃え尽きるのを見ていた
もしかしたら
水没していく様子だろうか
僕等には
どっちでも良かった
ただ全てが
終わりに近づいている事を
ふたりは はっきりと感じていた
市営住宅の
屋上の手すりから身を乗し出して
大通りを流れる車や人を眺めていた
慌てふためく群衆が
映画の様に見えた
僕は彼女に逃げないの?
そう聞いた
彼女は うん逃げないよ
別に死んだって構わないから
そう答えた
僕は わかったよ
君に付き合うよ
そう小さな声で囁いた
… 赤みのかかった
月が昇るとき
それが最後だと
僕は聞かされる …
僕は歌った
ミッシェル好きだよ
そして君の事も
そう言ってキスをした
月が昇る夜までは
まだ時間があるわ
そう言って瞳を閉じた
僕は彼女を抱きしめて歌った
… 世界の終わりは
其処で待っていると
思い出したよに
君は笑い出す …
パンを焼いて紅茶を入れるね
彼女は微笑み
ふたりは
洋服だらけの彼女の部屋に戻った
強く解けない様に強く
愛し合いながら
やって来る時を待ち焦がれていた