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飛び散ったイチゴジャム 《詩》

「飛び散ったイチゴジャム」

放課後、陽だまりの丘
駆け出した視線は廊下を越えてオレンジの中へと飛び込んだ 

君に逢いたい、今すぐに甘酸っぱい苺をかじるような
そんな想いが瞳を焦らせる

君の笑顔が弾けて咲いた
隣には僕じゃない誰かの想い

完熟するには足りなかった勇気
飛び散ったのは、きっと僕のなかの甘くて切ない恋心

Mg.Asano

「飛び散ったイチゴジャム」

ぼくがまだ
しあわせのかたちをしていた頃
春の鳥は光でできていて
ぼくは子どもの小さな手を握りしめ
ぼくは子どもに春の花の名まえを教えようとする

そもそもハルジオンとヒメジョオンの区別もつかないしそれらが春の花であるかどうかも知らないでもあれならわかる菜の花だ
黄色く光っているだろう
世界があんなふうなら良かった

世界は記憶を煮詰めたジャムでジャムになるのにペクチンが足りないのはぼくも苺も同じことで果たして苺なら
ジャムになることができたおめでとうそれでこそ苺だ
ぼくは霧散した春を繰り返す中で光でできた鳥を眺めることしかできなかった
光る足跡を追いかけるだけで良かった
良かったはずなんだ

ぼくがまだ
しわあわせのかたちをしていた頃
子どもの小さな手を握りしめ
朝食はトーストで
ジャムなら
そこいらにあるもので良かった
良かったはずなんだ

ちえりこ。

「飛び散ったイチゴジャム」

3日前
彼と些細な事で
喧嘩した
いつも恩顧な私達だったのにこんなに口も聞かず
ただ時間だけが過ぎていく 

モヤモヤ
イライラ

毎朝の朝食も味気なくて不穏な空気が流れてる気分転換に
久々先日戴いた苺をジャムにしてみた

きっかけが欲しかった
部屋中広がる甘い香り
仕事から帰ってきた彼
おかえりなさい
って振り返ったら
ジャムが壁に飛び散って
それを見て彼も
笑いながら
ただいま
って言ってくれた

シド

「飛び散ったイチゴジャム」

人には色々な側面がある様に
物事にも色々な側面がある
バイセクシャルの写真家
古いロックンロールのレコード
何の制限も受けずに撮りたい写真を撮る
そして時間は私の側にある…そう彼女は言った

ミックジャガーみたいだな 
俺はそう言って笑った

パンケーキにかけたコカコーラ
スコッチウィスキーを飲みながら
スプーンでジャムをすくい舐めていた

小さな洋風のコテージ 煉瓦造りの壁
飛び散ったイチゴジャム
何かあれば電話してね そう彼女は言った
結局 俺は一度も電話をしなかった
Time is on My Side …
確かにそうだな 
一度だけそう囁いた

Seiji Arita

collaboration : Mg.Asano  
        ちえりこ。 シド

⭐︎thank you my friends⭐︎

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