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彼女はレゲエしか聴かない 《詩》

「彼女はレゲエしか聴かない」

一晩中降り続いた雨が

何も無かった様に止んだ朝

近づいて行く様で遠ざかる夢

色褪せた目の前の景色でさえ

愛して行くと誓うから 

僕は声に出してそう言った

誰に わからない 

遠い記憶の中の
自分に言ったのかもしれない

何処からか聴いた事のある

レゲエミュージックが聴こえて来た


グラマラスな彼女は

「秘密の花園」と言う詩を書いて
僕に朗読してくれた

濃い目のロマンチックが夕陽の様に

僕の意識の中に映し出された

僕は「死に行く道」と言う詩を
朗読しようとしてやめた


いつだって殺れるさ 

銃は此処にある…

ウィスキーを飲みながら

カタログ通販の自動小銃を眺めている

此の街では銃の規制は無い

子供も大人も老人も 

男性も女性も自由に銃を所有出来る

だからこそ全ての人々は
平等で居られるのだ


悲惨な事件は深い貧困が

いわば構造的に生み出す

暴力行為の連鎖を
断ち切る術は何処にある


そんな内容の詩だったからだ

彼女はそんな僕の詩を知らない

そして 

優しい愛の詩を書いて
朗読してくれとせがむ

僕は わかったよ約束するよ 

そう答えた

きっと僕は其の約束を
破る事になるだろなるだろう

痛みとは喜びとは優しさとは

どうやって君を抱けばいい

そんな事をぼんやりと考えていた

そして僕は彼女の部屋の中で
一日中 音楽を聴いた

彼女はレゲエしか聴かない

ラスタカラーの
彼女のブレスレットに口づけをした

時間は休む事無く流れている

レゲエは終わる事無く流れている


世界中で僕以外には 多分 
誰も読む事の無い詩を書いている

時間は記憶だけを残して

休むこと無く流れ去って行く

何処からか聴いた事のある
レゲエミュージックが聴こえている

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