anarchism - Joy Division - 《小説》
「anarchism」 - Joy Division -
僕はウォークマンの電源を切って
イヤホンを外した
Joy Division を聴いていた
イアン カーティスの
残忍性の中にある
暗く重い美しさ
そんな感覚だけが
僕の中に残されていた
目的の場所に到着した
ゆっくりとバスを降りる
コットンの白いシャツと瞳にかかる
長めの前髪を
その場所に吹く風が揺らした
僕はリュックを肩にかけ
歩き始めた
しばらくすると見えて来た
僕の想像していた場所とは
明らかに違う
閉鎖的で無機質な灰色の壁と疎外感
その入り口には黒い鉄製の門扉
横の門柱には
「関係者以外の立ち入りは禁止」
そう書かれていた
勇気を出して此処まで来たのに…
少し赤みを帯びた陽の光が反射して
其処に書かれた
文字を僕の目の網膜に刻み込む
ゆっくりと螺旋を描き
沈み込む様に堕ちて行く
そんな感覚に包まれていた
僕はKOOLに火を付けて
大きく吸い込み
煙を吐き出して
直ぐに煙草を投げ捨てた
玲子さん
探し求めた世界は見つかったの?
そう僕は囁いた
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?