CHANEL 《詩》
「CHANEL」
僕は海の底から
空を泳ぐ魚の数を数えていた
意味なんて無い
憧れとかそんなものでも無い
ただ無数の魚が描く動線を見ていた
彼女の静かな息づかいだけに
耳を済ませて
此処から出て行く理由なんて
幾らでもあったはず
少しずつ
溶け出した街の中で九月の海が
雨に混じり落ちてくる
希望と願い安らぎを
絶望と諦め寂しさを
飲み込んで行く様を見ていた
色々な不運に見舞われても
最終的には上手く行く
そんな物語の小説を読んでいた
私は好きな事しかしないの
CHANELに取り憑かれた女が
そんな事を言っていた
今夜も独りで眠るのかい
動線は海の群青と夜空の漆黒に消え
照らす光は無く
手探りのまま今でも
あの日を見つめている
僕が其処に居た